Polepole Life new

びわ湖の湖南に在住。
亡きA.コッカーNOIRと山歩きを愛すシニアライフを綴ります。

マダム・イン・ニューヨーク

2014-08-23 17:53:00 | 映画・観劇



  



前記事『めぐり逢わせのお弁当』と一緒に
『マダム・イン・ニューヨーク』
を観ました。


久しぶりの京都シネマ
『めぐり逢わせのお弁当』で大変な混雑。
すごく暑かったけど、居残ってコレも観てよかったー。



映画全体の雰囲気は
『めぐり逢わせのお弁当』の方が好みなのですが、
『めぐり逢わせ・・・』があいまいなままに残した部分を
こちらは、あえてばっさり明確に表現して
それはそれで、魅力的で現実的な、
一本筋の通ったシャシという主人公の魅力になっています。


□  □  □

 

シャシは古風で英語が苦手だったという設定ですが
特別古風でなくても、シャシ世代のインド女性は
まだまだ、封建的な世の中で育っていて
夫子供は英語もしゃべれるけど
富裕層でありながら英語をしゃべれない主婦も多く、
夫は対外的には妻を庇うように見えるけれど
意識しているか否かにかかわらず、
自分に都合よく従属物的に扱っているケースも
多いのではないかと思います。


映画の中でシャシは得意なお菓子作りで顧客を持ち、
社会と直接的つながりを持つことに喜びを
感じていますが、夫サティシュがそんな妻を
理解しないことがシャシを大いに傷つけます。
それは、妻を庇護下に置きたい昔ながらの
インド人男性としては、フツーなことかも知れません。
また、学校教育で英語を身近に育った娘サプナ
反抗期という事も重なって、シャシを恥かしく
思ったり、侮辱したりします。


英語に自信がないのに、
ひとりで家族より先に姪の結婚式の
手伝いでNYに向かったシャシは、
国際線の飛行機にのってもFAの英語にあたふたし、
カフェでは、店員にまくし立てられて大パニック。
姉の家ですら、英語の会話が始まると
入れない疎外感でベッドに逃げ込みます。


ああいう時のみじめさ。口惜しさ。


私だけでなく、
多くの英語の苦手の日本人にとっての
「ある・ある」
が続きます。
オロオロし、打ちひしがれるシャシ。


シャシは、そこから脱するために
夫や子供を言葉で非難したり、自己主張するのではなく
苦手を克服することで、自分自身に自信を得て
家族の敬意をも獲得していきます。


コレを観て心穏やかではない男性諸氏も多いはず。
(インドでもこの映画が受け入れられたというのは
すごく、喜ばしいことだと思う。)


そして女性も、安易に共感ばかりしていられません。
自分は、家族に対して無理解な夫サティシュや
傲慢な娘サプナになっていないだろうか?
シャシを理解して協力する姪のラーダのように
誰かのチャレンジを心から応援できるだろうか?
(オットさんはサティシュ、私はサプナだな。)


この映画を観て
お母さんに、すぐに謝らなければならないと
思ったお嬢さんもいるだろうし、
自分に自信を持てているだろうか?
そうであるための努力をしているだろうか?と
自問した人もいるかもしれません。



最後の結婚式のシーンでのシャシのスピーチ
今まで聞いたどんな訓話よりも心に響きました。
(スピーチが全文載っていると知っていれば
バンフをゼッタイ買ったのに。。。)
周りを見ると年配の男性を含めて、いろいろな人が
いろいろな立場で感銘を受けているように
見えました。



□  □  □



この映画がはじめての長編作品という監督ガウリ・シンデーは
なんと30代のチャーミングな女性で
彼女の母親がシャシのモデルになっているそうです。


また、シャシを演じた美しいシュリデヴィは、50歳。
国民的人気女優だった彼女は結婚して引退。
シャシのように(?)専業主婦を経験して
この映画が15年ぶりの復帰作だそうです。 
(暗に年齢は反対ぐらいだと思っていた。)


この新進女性監督と大女優のタッグは
それぞれの夫の交友関係というバックアップも
あって生れたようですが、
ふたりのステキな女性が創りだした
シャシというキャラクターが完璧でありながら
とても血の通った温かみがあるのは、
健全で、自己主張よりも家族や周囲の人に
たいして思いやりに満ちた、彼女達の個性が
シャシに溶け込んでいるからのように感じます。
そして、それはこの映画の爽やかで
明るいイメージに繋がります。


老若男女、この映画を観てわが身を振り返り
反省しない人はいないでしょう。
それでいて、しあわせを求めて暗中模索しながら
生きている私たちの誰もが、シャシに
元気づけられるでしょう。


期待した何倍もステキな映画でした。





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