のしてんてんハッピーアート

複雑な心模様も
静かに安らいで眺めてみれば
シンプルなエネルギーの流れだと分かる

母のリハビリ絵画録14

2018-08-19 | 心のデッサン無料公開授業

(14)2009.12.6(再会)

 

 

年老いたら自由時間がたっぷりある。
 母は一日ベッドで過ごす。どこにも行けない。
 何もすることのない生活。
 それをチャンスと考えたら、人はそこから若返る。

ほんの少しでもやることを見つけたら、それだけで幸せになれるんだよ。
 幸せな母がここにいる。

貧乏と肩を並べた生活で子育てを二回もやった。気がついたら自分のことは何もない。そんな母が見つけた幸せ、それが自分との再会だった。

自由だった子どものころの自分が、今も生きていることにきっと気付いたのだろう。線の中に自分がいる。

今日、とても力強い絵が描けた。

 

 

---------------------------------------------------

自由時間がある。

忙しい人の自由時間はしあわせそのものだが、

一日24時間の自由時間を死ぬまで与えられたものは、多くの場合苦悩と対面する。

母がそうだった。

 

ただベットの上で過ごす無為の時間、それが死ぬまで続く。

ささやかな変化は食事ぐらいではなかっただろうか。

 

退屈しのぎにテレビやラジオ、雑誌などをと思っても、興味も持たない。

要するに、毎日がベットの上で過ごす生きた屍のようだった。

生気がなく、眼差しはおぼろで、表情は救いようのない陰で覆われていた。

 

そんな母の姿をみたとき、私は背筋に衝撃を感じた。闇にとらわれた母の姿に恐怖し、憐れみと悲しさに見舞われた。

 

「好きにしたらいい」

子育てから解放され、家庭から解放され、己のすべての義務からも解放され、いまさら好きにしたらいいと言われても、それは裏返せば、だれからも必要とされない、見向きもされない人生を送りなさいと言われているようなものだ。

必要がなくなったから、好きにしたらいい。そんな使い捨て人生が母親の宿命だとすれば、こんな馬鹿なことは無い!!とこぶしを突き上げたくなる。

 

けれど現実は、今ここで自分の生きる理由が見つからないのだ。

失われた自分を再び見つける以外に、母の闇は消えない。

 

学徒動員(太平洋戦争の戦局終盤、政府は学生も動員して、母は淡路島の紡績工場で働かされた)から子育てを終えるまで、目先の必要に動かされてきた。

おそらく子供の心は学徒動員からずっと、そこに置き忘れたままだったのだろう。

 

こうして、無心にデッサンをしている姿を見ていて、

母が子供に見えるときがあるのは、こう考えてみるとつながる。

 

しぐさや表情に、こどもの匂いを感じる瞬間があるのは

母がその頃に置き忘れて来た子供の心と再会したからに違いない。

私にはそう思えるのだ。

 

実際この絵は堂々たるデッサンだ。

自分との再会は

喜びに違いない。

 

生きる意味、それは人から指図されて動くところにはない。

人の言いなりになって動いても、深い喜びがやってこないのはそのためだ。

 

母は今、

自分の中から生まれるものを楽しむ術を見つけた。

その姿はまさに、

子供が一人遊びをしている姿に重なる。

 

母を貶めているのではない。

無垢なる自発性は永遠に私たちの宝ものであり、

それを楽しむ心は

誰においても、最高の幸せといいたいのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

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4 コメント

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Unknown (sure_kusa)
2018-08-19 08:24:35
うわー ♪
紙風船だぁ!
パシッ パシッ パン ボン ♪

音まで聞こえて来ます。
子供達のハシャぐ声がします。
のしてんてんさまとお母さまの明るい声も聞こえて来ます。

21世紀美術の視点・・
大成功まちがいなし!
気を付けて行ってらっしゃいませませ ♪ のしてんてんさま。
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sure_kusa様 (のしてんてん)
2018-08-21 11:52:24
今日、とんぼ返りで帰宅しました。

パーティも盛り上がり、つい二次会まで顔を出しました。

時間に余裕を持ったつもりが、
バスの時間に2分遅れで乗れず、
ピンチはチャンス
東京駅で一日ホームレスを楽しみました。(おいおい)

大阪駅ではすでに昔、体験済みですが、東京と大阪の違いを感じました。

大坂では、ホームレスの方とすぐに友達になれ、面倒も見てくれたのですが、東京では基本無視、我が道を行く感じで相手にしてくれませんでした。
それの方が気楽でしたけ^ど^

ところで、母の絵に紙フーセンをイメージされました^か^

そうなんです、あのハトロン紙のパリパリ感もあって、私にもそんな思い出がありました。

富山の薬売りというのご存知ですか?
今はないでしょうけど、富山の薬売りが大きな行李を背負って地方に行商に来るんです。

各家庭に赤い薬箱を置いていて、一年に一回薬を入れ替えに来る。その時使った薬代を回収するというやり方です。
北海道にもありましたか?

その時いつも行李の中から紙風船を取り出して子供にくれるので、薬屋さんが来るのが楽しみでした。

その紙風船の色と形が、墨色の田舎の風景に何とも色鮮やかな、幸せのイメージを与えてくれたのです。

母に膨らませてもらいましたが、その時の記憶があったんだと思うのです^よ^

ありがとうございます。


返信する
絵画…感情をキャンバスに描ける世界 (人生の素人:折師)
2018-08-22 04:22:16
 ”一目見て、喜びとか…プラスの感情を前面に出したとわかる絵”…こういう絵ってとてもいいですよね…。見ていて自然と明るくなれる、上手さとか一切を瑣末にするチカラを感じます。
 (私見ですが…筆圧濃く書いた部分が特に多く、パワーを感じました!)

 …のしてんてん様の母様が一番最初に書いた絵とこの絵…そしてそこまでの変遷たる実話を見ると
 「人生とは」とふと考える事もありますね…はい…ただこうした絵を書くことに巡り合えたのは間違いなく良かったと想います。

 話変わってコメント欄でいろいろ驚きました…!
 ”富山の薬売り”の話は当然初めて知りました…全く知らなかったので良い知識に。
 そして
 ”東京駅で一日ホームレスを楽しみました。”
 …あの後そんなことが(汗) 完全な私見ですが東京周辺はホームレス自体が少ない気もします…追い出しが厳しい?
 あとネカフェ寝泊りの文化でしょうか(笑)
 
 この記事、母様の明るき絵画に感謝を!
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折師様 (のしてんてん)
2018-08-22 09:00:14
先日は会場に来ていただき、お菓子までいただきましてありがとうございました。
みなも喜んでおりました^ね^

折師さんの気遣いがとても嬉しかったです。
また機会がありましたら、今度は気遣いなく気軽にお越しください^ね^

パーティーから二次会まで参加して飲んだのが自業自得というものですね。

確かに、東京駅では、AM1時を過ぎるとシャッターが下ろされ、構内はおろか、地下街も入れない状態で、パトロールもやっているようでした。
駅構内に待合室のような施設もなかったような・・

確かに、ネットカフェは普及しているのでしょうね。数年前体験してみましたが、少々不健康的な感がありましたが、若者にはいいでしょうね。

そうそう、東京駅で気付いたのは、ホームレスというより、女学生風の若者が単身で夜をあかしているおどおどした姿が何人かあって、気になりましたね。

夜の風景、知らないことがたくさんあるのだと実感しました。

ありがとうございました。

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