のしてんてんハッピーアート

複雑な心模様も
静かに安らいで眺めてみれば
シンプルなエネルギーの流れだと分かる

ジイジと北斗(新スケール号の冒険)38

2022-11-03 | ジイジと北斗(新スケール号の冒険)

(24)

 

黒いスケール号がフェルミンの額に止ると本当のハエのように見えました。

ところがスケール号の窓から眺めるフェルミンの姿は大きな丘に見えるのです。

のぞみ赤ちゃんの額に止ったときは何もない湿地のような平原に見えましたのに、フェルミンの額は乾燥地帯でした。

地面はひび割れ、枯れた泉が点在するばかりでした。スケール号はその枯れた泉の水脈をたどりながら縮小を続けていきました。

「どうだ、チュウスケはついてきているか。」

スケール号のモニターには自分の位置を示す緑の点が画面の中心で点滅いていました。

そこから離れて点滅するもう一つの点が赤く光っていました。それがチュウスケの位置を示しているのです。

スケール号がチュウスケの鼻を蹴とばして飛び立ったとき、チュウスケの鼻頭に目に見えない小さな発信機を注入していたのです。

「はい、発信機をうまく捕えているでヤす。」

「しっかり付いてきているダすよ。」

「しかしどうするつもりなのだ、それであのネズミの魔法を打ち破れるのか?」

「まずは相手を知るだけですね。」

博士は腕組みをしてスケール号の窓から移り変わっていく風景を見ていました。

スケール号がどんどん小さくなっていくと、逆にまわりの風景はどんどん大きくなるのです。

フェルミンの枯れた汗腺も巨大な空洞となり、そこを通り抜ける頃には、スケール号はたった一つの細胞の大きさになっていました。

自分と同じ大きさに見えるようになった細胞は透明のゼリーに包まれているように見えます。それがいくつも並んで田園の風景に見えるのです。

「博士、この細胞地帯はちょっと変ダすね。」

「どうしたぐうすか。」

「よく見ると、なんだか黒っぽくないダすか。」

「黒く変色している途中のものもあるでヤすよ。ほらあそこ。」

もこりんの指さした周辺の細胞は確かにじわじわと黒く変色が進んでいるのです。

「博士、これは姫様が飲まされた薬のせいではないでしょうか。」

ぴょんたも話に加わってきました。

よく見ると、細胞の中を泳いでいるミトコンドリアがしきりに黒い墨を吐いているではありませんか。

「艦長、あの細胞の中に入ってみよう。」

博士が艦長に言うと、艦長は揺りかごの中で手足をバタバタさせました。

「うっキャーうっきゃー」

「ゴロニャーン」

スケール号が進路を変えて変色し始めている細胞の中に潜り込んでいきました。

ミトコンドリアが象のような巨大動物に見えます。その背中にある口からモクモクと黒墨を吐いているのです。

スケール号はその墨に一口かぶりつきました。

「フンギャオーン」

あまりの不味さにスケール号は悲鳴を上げたのです。

けれどもそのおかげで黒墨の正体を調べることが出来るのです。

スケール号が食べたものは自動的にサンプル採取されて操縦室にデーターが送られてきます。

「どうだ、何か分かったか。」

「特に毒性のものは在りませんねぇ。」

「では何なのだ。分かるかぴょんた。」

「おそらくこれは、ミトコンドリアのストレス物質だと思います。」

「細胞の中に住んでいる動物でも、ストレスがあるのダすか。」

「ストレスの無いのって、ぐうすかだけでヤすよ。」

「言ったダすな、わ、わたスだって、眠れない時はストレスダすよ。」

「はいはい二人ともストップ・・。博士、これはきっと間接的な薬のせいだと思います。

今姫様の心に妄想が生まれていて、薬はその妄想を生むきっかけを作る道具

だったのかもしれません。」

「やはりそうか。ぴょんたありがとう。薬で死ぬことはないということだね。」

「はい。姫様の妄想がミトコンドリアにストレスを与えているのでしょう。」

「つまり、・・フェルミン姫の妄想を取り除いてやればいいということかな。」

「そうです王様、王様の力ならそれが出来るのではないでしょうか。」

「そなたたちのおかげで、少し見えてきた気がする。やってみよう、試してみる価値がある。」

バリオンの王様がおもむろに床に坐り、手を組んで瞑想をはじめました。

心を鎮め、空に心を預けると、心のエネルギーが浄化され

自然のままの純粋な波となって王様の手からとびだしてきました。

見える訳ではありませんが、その柔らかな安心感が

みなの心にも広がってくるのでそれが分かるのです。

王様はその波動を象ほどもあるミトコンドリアに向けて発射しました。

すると吐き出されていた黒墨がいつの間にか薄れ、

きれいな青空のような色に変って行くではありませんか。

やがて紫色に変色していた身体そのものが次第に若木色に変って行ったのです。

「やったでヤす王様、このミトなんとかいう動物が元気になったでヤすよ。」

「ぴょんたの診断が正しかったということだ。王様、ありがとうございます。」

博士は瞑想を解いて坐っている王様に手を差し伸べたのです。

元気になったミトコンドリアの腹をかいくぐっていくつもの壁を越えると、

スケール号は血管に入りました。

赤いクラゲが押し合いながら流れているその中に紛れて進んでいくと、

光の点滅する森の中に投げ出されました。

「艦長、あの森を抜けてさらにもっともっと小さくなって行こう。その先に銀河があるんだ。」

「ハブハブ」

北斗艦長は機嫌よく手を振り上げています。

スケール号は今、のぞみ赤ちゃんの原子の世界から、

さらにさらに小さな世界に向かって進んでいるのです。

のぞみ赤ちゃんの身体の中にある原子の世界。

その原子の世界を象徴するストレンジ星。

そのストレンジ星の住人がフェルミン姫なのです。

人間のスケールで見たら、ストレンジ星は素粒子です。

その素粒子の上にフェルミン姫は住んでいることになります。

そしてそのフェルミン姫の中にもまたさらに小さな原子の世界があるというのです。

 

スケール号はそのフェルミンの原子の世界に行こうとしているのです。

原子に棲む姫フェルミンの中にもさらに小さな銀河があって、

その銀河はフェルミンンの心を作っているのです。

この世界は艦長は元より、博士自身が初めて見る超ミクロの世界なのです。

どんな小さなものでも見逃さないでおきたい。

そんな思いで博士はスケール号から見えて来る世界を胸に刻もうとしているのでした。

「一体、これはどういうわけだ。」

バリオンの王様が茫然として立っています。その目前に無数の銀河が姿を現したのです。

「フェルミン姫の体内銀河です。王様。」

「姫はこの星で出来ているというのか。」

「王様、生きるものは皆そうなのです。」

「信じられぬ光景だ。」

「王様、先にのぞみ赤ちゃんに会って頂きましたね。王様はのぞみ赤ちゃんが生まれる{最初の一滴}を支配しておられるのです。そして今見ている銀河は、フェルミンが生まれた{最初の一滴}が集まっている風景なのですよ。この一滴が無数に集まってフェルミンを作っているのです。」

「まるで入り小箱のような世界なのだな。」

「まさにその通りですね。そして王様、この中のどこかにフェルミンの心を作っている銀河があるのです。チュウスケの魔法を解くにはそこに行かなくてはならないのです。」

「分かるのかそこが。」

「スケール号が覚えてくれています。それより王様、これより先、王様の力を借りなければなりません。」

「私の力だと。」

「王様の呪術です。先ほどのこともそうですし、私たちは真っ先にその力の洗礼を受けました。」

「あれか。」

「あの時私達はスケール号の中で、これ以上ない幸せを感じました。まるでとろけるような喜びであふれたのです。

王様は私達を攻撃する前に、いえ、幸せを武器にスケール号を攻撃されたのです。」

「武器とは聞き捨てならないが、無益な戦いはしない主義だ。」

「言葉足らずで申し訳ありません。ただチュウスケにはそれが武器になると申し上げたかったのです。

王様の呪術は、良い心のエネルギーを何万キロ先まで伝える力を持っておられるのです。」

「それが武器になるだと?」

「スケール号には、良い心をエネルギーに変えて発射するビーム砲があるのです。

ところがそのエネルギーは限られていて、我が隊員たちの良い心を集めるしかなかったのです。

思いつくのはせいぜい家のお手伝いぐらいのものだったのです。分かって頂けますか。

王様の呪術をスケール号のビーム砲につないで頂ければ王様の良い心のエネルギー波がさらに増幅されてより強力な武器になるということなのです。」

「私の呪術を武器などと考えたことはなかったが。しかしスケール号のビーム砲のことは分かった。タウ将軍と同じ働きをするのだろう。」

バリオンの王様は、ふとタウ将軍のことを思い出しました。

呪術を行うときはいつもタウ将軍と共にあったのです。

今頃反乱軍と向かい合って、戦いたくてうずうずしているに違いない。そう思うと、握っている杖に力が入りました。

タウ将軍の持っている軍杖とつながっているのです。{無益な戦いをするでない。}その意志は瞬時にタウ将軍に伝わるのでした。

「王様の力は、チュウスケの魔法に対する強力な反対魔法となるのです。」

「よく分からぬが、そなたたちに従おう。私の瞑想があのネズミにも役に立てばいいのだがな。」

「ありがとうございます。王様は自覚されていませんが、のぞみ赤ちゃんが、あのような状態でも命をつないでいられるのは、

王様のその力が及んでいるからだと私は思っているのです。太陽族を統べる王様の力をお借りできればこの上の幸せは在りません。」

「たいそうな言い回しだ。」

バリオンの王様はまんだらでもない顔をして笑いました。

全天に銀河の光が散らばって見えます。これがフェルミン姫の身体の中だと思うと不思議な気分になるのでした。

「われら太陽族はさらに深くこの世に存在しているということなのか・・・。」


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8 コメント

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シタテルヒコ様 (のしてんてん)
2022-11-07 09:17:17
寛大なんて大袈裟です^よ^
ただ自然態、
そうです、この自然態の最も基本であり単純な単位が永遠に続くであろう円運動。それが波なのだと気付いたのです。
円が波になり、永遠の回転運動がすなわち波動ですね。
どんな波動も合成されて別の波を作る。合成された波はどんな波にも分けることが出来る。(確か中学か高校で習った気がします)
そしてこれ以上考えることは出来ませんが、宇宙の一切合切の波を合成尽くしたら、それはきっと空間になるのです。
私の勝手な想像ですが、この空間こそ私の「からだ」つまり空体と呼ぶ理由です。
シタテルヒコさんのジンジン、ヒタヒタは全く同じですよね。
空間と物質⇒空体と身体⇒現臨と思考。桂蓮さんの言葉では辛いことが体に入ることと苦悩。
みな同じなんだと思います^ね^
返信する
Unknown (シタテルヒコ)
2022-11-06 21:10:41
のしてんてんさんの寛大なお心感謝です。
切っ掛けを作ってくれた桂蓮さんにもこの場を借りて...
諸々の思い煩いは、風のように命の波動が運んでくれることでしょう。
私は、ブログを始める前か初期の頃は確かに、それを波動と捉えていたのです。”ジンジン”とか”ヒタヒタ”という音感は、正にそれを伝えていたのです。
それは分離したものをつなげる、同調エネルギーだと思いますが、ここで実地に体感出来て有難いことです。
返信する
シタテルヒコ様 (のしてんてん)
2022-11-06 18:02:40
厚かましいなんて、とんでもないことです。
私は貴方様の記事を本物だと確信しています。だからその真実に触れたいだけなのです。
真実は離れるとか離れないなんて概念すらありませんよ^ね^。

私も離れたという意識はありませんからね。それより現臨と空体は障壁なく一つなんだという意識が深まる風景だけが嬉しいだけなのです。

波動と言う言葉で一つ壁が崩れました。それを伝えて下さったことにどれだけ喜びを感じているか、きっと想像して頂けると思います。

一つずつ壁が壊れて行くことを共有できる喜びとして、またご迷惑なコメントをお許し下さ^い^
返信する
Unknown (シタテルヒコ)
2022-11-05 21:27:19
のしてんてんさん、何か私の方から離れてしまうようなことを書いたのに、厚かましくてすみません。
“波動を感じる“、という貴方のコメントにやっぱり共感してしまいました。
現臨感とか“見られている感じ“というのは、そのように言い換えてもいいと思います。
それをただ受け入れる(感じている)ことで、自ずから思考は後退して(消えてゆく?)ゆきます。色んなわだかまりも、ウソのように...
又、気が向いたらこちらにコメントください。
返信する
桂蓮様 (のしてんてん)
2022-11-05 20:32:46
役に立つかどうか分かりませんが、私の話しです。
最近、精神的な変化(感情)をエネルギーの流れとして受け止められるようになりました。

様々な苦がありますが、苦がやってきたら意味を見考えないで見つめるのです。

意味を考えたら、正か誤の思いがいつまでも続くのです。自分が通らなければ感情が窒息して苦悩がいつまでも続くのですね。

だから今ある感情の波を、意味ではなくエネルギーの波動と考えて見つめるのです。

なぜこの波が生まれたのかではなく、この波の揺れをプールに浮かんだ自分だと思うのです。

すると意味がなくとも、波動は存在しているのが分かりますよね。

つまり意味は虚象ですが、波は実像なんですね。

これは、虚像を捨てて真実だけに身を任せる訓練です。

思えばこの方法は桂蓮さんの仰る「現実的な痛みに余計に考えないほうがいいです。意識とか、余計です。」
にぴったり当てはまるのではないでしょうか。
この方法は正しいと思いますね。

私の体験で言うと、苦悩は波だけを純粋にとらえると、とらえた瞬間にその波は全ての波と繋がるのです。宇宙の本性と一緒になる感じで心が落ち着いてきます。高揚感が生まれて喜びさえ覚えます。

そんな経験を繰り返していると、性と言うものは少しづつ消えて行くように思います。

現実的な痛みをふくらませて考えないで、波動の起伏だけを感じていると、ふと心に明るい部分が見えて来るんです。その波に乗っかる感じで私は何度も救われました。

役に立てばいいのですが。
返信する
Unknown (桂蓮)
2022-11-04 11:48:02
人と本音で伝え合うことは
毒が得より多い感じがします。
私も最近、夫と本音でぶつかって
夫の無邪気な反応で、散々壊れました。
その間、ブログも何も人と関わりたくなくなって
心を閉ざしていたのです。

コメントを書いてくださった方とのしてんてんさんも
お互い、偽りの無い意見がぶつかったでしょうね。

私は事柄が起きてしまうと頭では理解できるのですが、
気分に嘘をつけないことから
相当長く苦しみます。
今も余波が残って、夫と話を交換するのもしんどいです。

起きてしまったことは元に戻せない。
度がすぎるのも、サガだし
自分に正直なのもサガだし、

辛い時はその辛いことを飲み込むしかないのです。


飲んじゃえば、苦痛が体に入って
なんとかなります。


現実的な痛みに余計に考えないほうがいいです。
意識とか、余計です。
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シタテルヒコ様 (のしてんてん)
2022-11-03 15:41:05
申し訳なかったです。
まさにその温情が希望に見えてしまったのですね。どこかでつながると思ってしまいました。
「現実に意識を向けられない」という言葉と、記事から受ける感じを総合して、真実から現実に向かう意志を感じたことも私の見た希望だったのです。
迷惑を思いながらコメントを書かせてもらいましたが、度が過ぎたようですね。

はっきり言っていただくことで、私もすっきりいたしました。

最後に私の感謝だけは伝えさせて下さい。
対話(になったかどうか分かりません^が^)のおかげを持ちまして、随分意識が高まったという実感があります。
こちらこそ、ありがとうございました。
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Unknown (シタテルヒコ)
2022-11-03 11:14:06
のしてんてんさん、たまにはこちらからコメントします。
私は、一度でも自分が共感し、又寄せられた方には温情的に接してしまうのですが、さすがに何度も同じことを言わされることにツカレてしまいました。
又どうしてこの人は、自分の見解に固執するのか?、と感じてしまうのです。それを仮想的なものに過ぎないと理解している様子にも関わらず。
思考次元”のみ”から私に理解を求められようとするのは無理なのです。
”現実に意識が向けられない”、ということを申し上げましたが、それは最後通告みたいなつもりだったのです。
思考による表現は、その源となるものと切り離されなければ可能、という言葉があるいは、相互理解につながると思ったのですが...
見解の相違というのは致し方ないですね。
私も皮肉じゃ無しに勉強させて頂きました。有難うございました。
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