十三、子守歌
スケール号の中は喜びに満ちあふれていた。大変な戦いだった。もしやと思った隊員達は皆、生きて戻って来たのだ。
無事を祝って乾杯もした。博士が特別にカカオジュースを作ってくれたのだ。うまい。
それにしても、ここはまるで病院のようだった。
もこりんはお腹に包帯を巻いている。カンスケのクチバシで突き刺されたのだ。
ぴょんたは右手に包帯を巻いている。光線銃でやられたのだ。
艦長はほっぺたにばんそこうをはっている。爆風で飛ばされた時、スケール号の背中でほっぺたを擦ったのだ。
ぐうすかは頭に包帯を巻いている。居眠りの最中に頭を打ったのだ。こちらの方はもう少しで包帯も取れるのだが。
博士は人差し指に小さな包帯を巻いている。カカオ豆を潰すとき間違って指をたたいたのだ。それでもおいしいカカオジュースが出来たのだった。
そして外では、スケール号の背中に、大きなばってんのばんそうこうが張られていた。
乾杯が終わると、スケール号は暗黒星雲に戻って行った。チュウスケはどうなったのか、星の赤ちゃん達は大丈夫だったか、それを見極めるためだ。
暗黒星雲はすこし小さくなったように見える。チュウスケねずみのブラックホールが大爆発を起こして、まわりのガスを吹き飛ばしてしまったためだろう。
赤ちゃん星が心配だ。スケール号は急いだ。
チュウスケのブラックホールがあった場所にはぽっかりやみの空間が出来ていた。その周りにいた赤ちゃん星のすがたは見えなかった。やはり飛ばされたのだ。
しかしチュウスケネズミのブラックホールは跡形もなくなっていた。その代りに分厚いオレンジ色のガス雲が幾重にも重なって漂っている。チュウスケが飲み込んでいたエネルギーに違いなかった。
「あははははっははははははっあははははっ」
「はははっはははっあははっあはははっあはははっ」
「ははっははっあはっあははっあははっあははっ」
ゆったりとした、安らかな歌声が聞こえて来た。いくつかの赤ちゃんは助けられなかったけれど、暗黒星雲の中に今響き渡る星たちの声には不安や悲しみの色はなかった。これでよかったのだ。
艦長は辺りを見回した。エネルギーの流れが正常に戻っている。どの赤ちゃん星の周りにも、赤いエネルギーの渦が取り巻き、優しく身を包んでいるのだ。お母さんのおっぱいにむしゃぶりついている赤ん坊のように、星達は安心しきって、幸せな夢を見ているようだ。
「さあ、戻ろうか。」博士が言った。
「ははははははははは」
星達がお別れを言っているようだった。
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪
ねんねんころころ
ねんころりん
ねんねんころんで
ねころんで
ねんねこねこねこ
ねんねしな
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪
全員で子守歌を歌った。みんなの心の中に何とも言えない幸福感があふれて来た。
「あははははあははははあははは」
「さようなら、星の赤ちゃん達。」
「さようなら、元気でね。」
スケール号はゆっくりと移動して暗黒星雲の外に出た。そして一気に銀河を抜けると、再び巨大化して、銀河の大きさになった。目の前にピンクの銀河メルシアがいた。
つづく
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宇宙の小径 2019.8.7
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心の旅
暑いときは
暑いままで
受け入れたら
暑さは半分になる
毎日の暑い日
温かいお茶が
案外スッキリと
気持を
整えてくれる
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