絵画の目指すところはなんでしょうか
様々な答えはあるでしょうが、
私は心のふるさとだと考えてます。
この絵は香り立つような梅の花を描いて欲しいという依頼で描いたものです。
その言葉の方向に心のふるさとがあると思うのです。
描くことでそのふるさとを訪ねる。
それは自分の心の風景を描くこととは少し違った見方ですが、
描き進むうちに心は誰もみなふるさとは同じところではないかと思えるのです。
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人は孤独です。
生まれて死ぬまで、孤独でないときはありません。
それが真実です。
しかし心の表層では、社会の中でたくさんの人々との交流があって、上手にその波に乗る限り孤独を知らずに生きていけるのです。
それを真実と思い込んでしまった人たちがその社会にうまく適合できなくなると悲劇が起こります。
孤独を悲しみ嫌うのは自己を否定することです。
自己嫌悪は命への反逆です。
それを受け入れ真実の中に身 . . . 本文を読む
芸術というと、襟を正すような雰囲気がある。
どこか崇高で近寄りがたく、平凡な自分とは一線を画するところにあるように思うこともある。
願わくば、そのような感覚をこの世からなくしたいと私は思います。
人はみな芸術家なのです。芸術は大衆の中にあります。
それを決めるのは自分自身だということさえ理解すれば
人はその場で自由を手にいれることが出来るのです。
人はみな、そこに立っているだけでこの . . . 本文を読む
単純な絵画ほどマンネリに陥りやすい。
鉛筆で絵を描き始めてから一番気にかけていたのはこのことでした。
画面にただ箱だけを描いて作品とする手法で、さらに箱を画面の中央に配置する私の絵で、変化をつけるとすれば箱の大小ぐらいです。
このような絵から このような絵まで、
限られたバリエーションでどう展開するのかが課題だと考えていました。
下の絵はそんな中で生まれてきたものです。しかしこれは私の . . . 本文を読む
心を描くという私の思いは直接、不登校だった子供時代の心象風景とつながっています。
物質の世界は時の流れに逆らうことが出来ませんが、
心の世界は時間を自由に出来る五次元空間であるというのが私の信念です。
現在と過去は同時に存在するのです。
私にとって幸せだったのは、3年に及ぶ不登校時代の心が大きく傷つけられることがなかったことだと、今にして思います。
ゆっくりと心が社会に適応していくのを見守って . . . 本文を読む
私がキャンバスに直接鉛筆画を描き始めた頃の作品です。
F100号の作品です。
鉛筆だけで絵が描けるという自信が生まれた忘れがたい作品ですが、今見ればうまく描けただけの、浅い作品だというしかありません。
作り手から言っても受け手から見ても、タッパウエアーという言葉で充分なのですから、それ以上の深まりは期待できないのです。
それに対して次の作品はどうでしょう。同じ時期のやはりF100号のキャ . . . 本文を読む
私は絵画に完成を求めてはならないと思っています。
心を描こうとすれば、実際完成はありえないのです。
あらかじめ思い描いた構想(たとえばレンブラントのような光を描きたい)にとらわれて制作を進めると、作品の仕上がりはとても浅いものになります。
とりわけ構想どおり描けた作品はほとんどの場合失敗作となります。
これは私の経験から言えることなのです。
人が意識の中に思い描いた世界は、心の闇の中の氷山 . . . 本文を読む
私の作品は鉛筆の線だけで成り立っています。
何度も書きましたが、線は物質です。
キャンバスに何本線を引いてもそれは物質のままなのです。
これはF100号のキャンバスですが、完成までにおよそ14000本の線を引きます。
キャンバスが鉛筆の線で埋め尽くされても、それは物質のままなのです。
ところがある時点で突然状況が変わります。
たとえばまばたきをしたり、ちょっと視線をはずして再び画面を見た . . . 本文を読む
作家と鑑賞者の間に物質としての線がある
作家と線の関係は先日述べたとおりですが、
鑑賞者にしても線はただの物質として与えられるのです。
よく絵(作者)から意味を受け取るものと考えがちですが、違います。
鑑賞者はただ、与えられた線を見て自ら意味を作り出しているのです。
そこに鑑賞者の心(のしてんてん)が動いているのを忘れてはなりません。
これは私の初期の作品で箱をモチーフに描いたものですが . . . 本文を読む
一本の線、それが私の絵画において使用する物質です。
それはすでに書きましたが、心を描く際に邪魔になる物質を取り去ったあとに残った唯一の物質というわけです。
この線でさえ、引いたとたんに固定した主張を始めます。
一瞬の心を固定したものと考えても、その理屈には無理があります。
心は決して一本の線はないのですから。
人は決して直接心を見せ合い、互いのものやり取りできないという厳然とした事実を受 . . . 本文を読む