縄文人(見習い)の糸魚川発!

ヒスイの故郷、糸魚川のヒスイ職人が、縄文・整体・自然農法をライフワークに情報発信!

ただの雑草も石ころもクソも・・・ヒトとヒスイの物語

2023年05月02日 07時17分24秒 | ぬなかわヒスイ工房
藤の季節になると不思議系女子のリエ嬢が、拙宅に花をつみにくる。
焼き菓子や料理にしたりハチミツに漬けるのだそうだが、お裾分けしてもらえるので大歓迎。食える野草や花も教えてもらえるしw
木陰にハッカも茂ってきたので私も採集。これは麦茶かわりの夏のお茶にして、清涼感があって美味いから来客に喜ばれている。
知らなきゃただの雑草、知っていれば季節の贈り物。
 
ヒスイもそうで、知らなきゃ重たいだけの石ころとして戦前は屋根の重石や漬物石にしか利用されていなかった。モノの価値は相対的。評価する人があってこそだ。
 
希少鉱物だから、パワーストーンだから尊いとする人もいるが、私は「ヒトとヒスイの物語」こそが尊いとする。
 
「自然界の報道写真家」宮崎学さんと会ったお陰で、長者ヶ原遺跡を歩いていて、動物の糞や樹木の剥けた樹皮を観察するようになり、ただのクソが情報源だから分解するようになった!w
 
生き物たちの痕跡、すなわち「イキモノと縄文遺跡の物語」である。
こういった視点をもつと、世界は豊かになるナ。竹のザルに摘んだ花をきちんと並べないと気が済まない「リエ嬢と花の物語」w
 
 
 
 

商品が並んでいないヒスイ工房のギャラリー・・・ぬなかわヒスイ工房

2023年04月24日 07時19分40秒 | ぬなかわヒスイ工房
工房ギャラリー兼応接間がカタチになりつつある。
趣味のコレクションが所せましと並び、ヒスイ工房のギャラリーというよりはアジア雑貨屋のようだが、日の目をみなかったモノを並べられてウレシイ。
バンコク警察の手錠、遺物、プロレスラーの前田日明からもらったアルマーニの香水、古武術研究家の甲野善紀先生から贈られた手裏剣、漂流物、アジアの民具の数々。
大人の秘密基地、大人の隠れ家、迷宮と人は言うが、秘密でも隠してもおらんが迷宮であることは間違いなく、今後はますます混沌としてくるハズで、すなわち成長するギャラリーなのである(笑)
土器類は壊れやすいので、土間工事が終わってから飾る予定。
どこがヒスイ商品のギャラリーやねん。肝心の売り物は厳重にかくしてある(笑)来客に愉しんでもらえればいい・・・っていうか自分が居心地がいい空間を目指した結果なのです。
 
 

少年の好奇心と大人の知恵・・・「自然界の報道写真家」の宮崎学さん来訪

2023年04月18日 07時03分57秒 | ぬなかわヒスイ工房
「自然界の報道写真家」の宮崎学さんがきた~!世界的に有名な野生動物のプロカメラマンだ。
二年ほど前のNHKドキュメンタリー番組「アニマルアイズ 写真家・宮崎学」を視聴してファンになり、Facebookでつながらせてもらっていたが、新潟県境に近い定点観測地からひょっこり遊びにきてくれたのだ。
 
宮崎さんは野生動物の生態を知り尽くし、身近なものをつかって自作した撮影機材で撮影する方なので、環境問題、社会問題、動物の生態、DIYなど話題が豊富で、どれだけ時間があっても足りないくらい話しが面白い。
アームカバーがなんでも自分でやってしまう「自然界の報道写真家」の必須アイテム!ポケットに塩ビ管を鏡胴に利用した広角レンズにカスタマイズしたコンパクトカメラを入れておられたが、少年の好奇心をもったまま大人の知恵と技術を身につけたお人柄が伺える。気さくで飾らない人柄。
 
願わくば長者ヶ原遺跡で縄文キャンプをご一緒したいものだ。ガイドするわたしが気付かなくても、木陰から猪や熊、ニホンカモシカが観ているんじゃないか?縄文の杜にどれだけの動物が棲んでいるんだろう?
 
マタギ顔負けの知識をもつ宮崎さんと一緒なら、長者ヶ原遺跡の新しい魅力を発見できるに違いない。
 
 
 

もっと野太く大胆に!・・・縄文石笛

2023年04月07日 07時48分58秒 | ぬなかわヒスイ工房
ヒスイ原石の石目や「部分的に堅さに極端な差異のあるヒスイ」を欠点とせず、唯一無の個性として活かすには?
 
その対策として線刻をしてきたが、ヒスイは堅牢だから苦労は並大抵ではないし、欠点を補うレベルにとどまっていたと思う。
 
ヒスイより硬い(ハードネス)モース硬度7のメノウの方がもはるかに線刻しやすく、ヒスイは硬いだけでなく堅い(タフネス)石材でもあるから、線刻は厄介なのだ。
この春、ついに硬くて堅いヒスイでも野太く深い線刻ができる技法をみつけた。ショッカーの怪人のようだ(笑)
縄文デザインの石笛ですな。奇をてらった意匠だではなく、プロ演奏家が楽器として認めるオクターブ超えの石笛!吹けばピーと音が鳴るだけで、楽曲演奏もできない粗製石笛とは違うのだよ!
 
そしてデッドストックになっていた「部分的に堅さに極端な差異のあるヒスイ」の活用法に光明がみえて、石笛つくりがたのしくて仕方ない。
 
「部分的に堅さに極端な差異のあるヒスイ」は、おもったカタチに成形しにくく、また研磨しても平滑になってくれないので、作品化しにくい訳ですナ。
ところが、恣意的にヒスイがなりたいカタチに成形・研磨してから、野太く深い線刻を施せば、最後までどうなるか私もわからず、予定調和の領域から外れた縄文チックな石笛になってくれるではないか。これぞヒスイとワタシの共同作業。
 
もっと野太く大胆に!肝に銘じて縄文人が喜んでくれる作品を目指す。
 
 
 

開運出世に勾玉を!・・・出雲大社の宝物、真名井の勾玉

2023年03月18日 08時01分36秒 | ぬなかわヒスイ工房
出雲大社の宝物、真名井の勾玉の詳細を調べていた矢先、原石支給でつくって欲しいという注文があった。こんなことがよくある。
赤い線が石目で、左袈裟の線が割れる可能性のある石目。勾玉つくりは原石のプレートつくりが最初で、わたしの場合は石目読みに自信がつくまで6~7年はかかった難しい仕事。
絶対割れる深い石目の通りにカットしたら、実寸法がギリギリつくれないサイズしかなく、注文主に断ったうえで79%に縮小したサイズにした。
端材で管玉と丸玉もつくって欲しいと頼まれていたので、なんとか偶数をつくりだせた。首飾りにするには奇数だと駄目なのよ。
わたしが共石のセットをつくらないのはメリハリがないからだけど、注文主がどう感じるだろう?
ヒスイ職人が管玉をつくると、作り易さからなのか太巻きみたいな野暮ったい極太管玉が多い。あくまでも主役は勾玉なので、管玉と丸玉は勾玉完成後に具合をみてサイズを決めた。
 
勾玉が完成したと連絡した日に注文主が昇進したらしいく、嬉しいことが重なったようだ。
 
出世したい人、開運したい人、良縁祈願、学業成就、家内安全、商売繫盛したい人、勾玉の注文をくださ~い!( ´艸`)
 
 
 

ヒスイは丁寧に磨いてこそ珠・・・残念な勾玉のリメイク

2023年03月15日 06時39分56秒 | ぬなかわヒスイ工房
高校の同級生から、キーホルダーの勾玉が汚れたのでクリーニングして欲しいと頼まれた。ひと目でミャンマー産とわかるヒスイで、緑の方は樹脂含侵の発色であるらしい。
汚れは切削傷が原因だよと、鉛筆でなぞって傷を浮きださせてみせて、これだとクリーニングしてもすぐに汚れるから、いっそのことリメイクしない?と提案。
薄いグレーの勾玉は古墳時代前期の勾玉風にスマートに。緑の勾玉は分割して二個のペンダントトップに。
使い古しの雑巾みたいだった勾玉は、淡いスミレ色の別嬪さんに生まれ変わった。丁寧に研磨すると鉛筆の芯が滑って汚れが着かなくなるし、乱反射しないから本来の色が内側から浮かびあがってくる。素材の良さを引き出すのは職人の矜持。
緑の方は箸置きみたいに中央が凹んでいたし、中途半端な位置に紐穴があけられていたから二個に分割した理由。奥さんから「うわぁ、かわいい!」と喜ばれたそう。エカッタ。
 
傷だらけの粗製乱造品であっても、ヒスイは神秘の霊石という類いの宣伝文句を並べ、桐箱に納めさえすれば、ありがたがって買ってくれる人もいるから商売が成り立つのが、現代の「ヒトとヒスイの物語」。
 
産地はどこであれ、これではヒスイがかわいそうだ。
 
万葉歌人が不老長寿への切ない想いを詠んだ「ヒトとヒスイの物語」は、そこにはないですねぇ。
 
 
 

出雲大社の宝物「真名井の勾玉」の謎を追う・・・勾玉探偵の気づき

2023年02月20日 07時26分40秒 | ぬなかわヒスイ工房

「勾玉探偵の気づき」

左端の宇木汲田の丁子頭勾玉(20%スケールダウン)と、中央の真名井の勾玉(原寸大)を同時につくって大変な収穫があった。
右端はわたしの定番デザイン勾玉(縦27㎜)で、サイズ比較に並べると小さくみえるが、現代の勾玉にしたら大型の部類だ。
出雲大社の宝物と知られる流麗な真名井勾玉は、北部九州の定形勾玉の系譜と思いきや、頭部と尾部の大きさに大きな差がなく、同心円状の腹部のえぐりをもつ西部北陸の半玦勾玉をスマートにして面取りした系譜、と実感した。
対して、宇木汲田の勾玉は釣針状の腹部のえぐりを持つので断面の曲面率が変化し続けるし、胴部が間延びしてもいるので造形も研磨も大変で、回転工具のリューターでは凸凹して滑らかに仕上げられず、最後は大昔と同じく棒砥石で手研磨。
 
その点、真名井勾玉の系統は造形も研磨も難しいものではないが、その特徴の無さが僅かな差で美醜の分かれ目になる点では難しい立体造形だ。実物の紐孔は5㎜もあるので魚や蛇などの生き物の眼を思わせるが、訳あって4㎜にしてあるので、ちょっと印象は違う。
 
考古学の先生方にもファンが多い宇木汲田の勾玉は、つくるのに手間暇がかかり過ぎる。
だから勾玉が量産される古墳時代以降は、シンプルな半玦勾玉の系譜に吸収されていったのではないだろうか?
 
ちなみに私の定番モデルは北部九州の定形勾玉を手本にした、頭部が腹部に若干入り込んだ形状なので、やはり手間暇がかかる。
ほほ笑んでいるようで、つくるのが楽しいんですよねぇ。
 
 

春だから特別な贈り物・・・古代風の勾玉首飾り

2023年02月18日 07時49分57秒 | ぬなかわヒスイ工房
水晶の管玉は考古資料にはなく、幕末以降くらいからつくられていたようなので、古物と偽って転売される恐れはなかろうと開発した古代風の勾玉首飾り。
ヒスイ勾玉を中央に据え両脇を赤メノウ勾玉に従えた。
ヒスイ勾玉の形は弥生時代の定形勾玉にしたいが、現代につくられたものということを明らかにするためにオリジナルデザインにしてある。
 
遺物の画像検索をしていたら、真名井遺跡の勾玉とわたしの勾玉を388,820円という半端な値段で売っているサイトを発見した(笑)噂の偽サイトであるらしいが、会社概要もなく日本語も怪しく、画像無断使用の抗議をする気にもならず笑ってしまった。
 
けしからんのはオタマジャクシみたいな安っぽい勾玉が、70万円で売っているではないか!どんな価値観の人がつくったサイトだろう( ´艸`)
 
水晶の管玉と赤メノウの組合せは女性的な印象になりますねぇ。
なぜか今年の年度末は、地元の人からお祝いの贈り物の依頼が多い。昨年亡くなった親父が応援してくれてるのかな。
 
まだ注文品は残ってる。次いこう~!
 
 
 

 


真名井の勾玉の謎!・・・勾玉探偵

2023年02月17日 07時55分23秒 | ぬなかわヒスイ工房
勾玉探偵の趣味と実益をかねた遊び。
右端が北九州の宇木汲田遺跡出土の丁子頭勾玉、右から3番目が出雲大社の宝物でもある真名井遺跡出土の勾玉の実測図からおこした原寸型。
 
2番目と4番目は、そのプロポーション比較のために縦27㎜に縮小した型だが、際立ってデザインの違いがわかった。
 
わたしの関心は、ヒスイの加工をしていなかった島根の遺跡から出土した真名井の勾玉が、いつ、どこでつくられた?というもの。
 
実測すると真名井の勾玉の紐孔は、直径5㎜もある片側穿孔なので、石針で穿孔したにはでか過ぎるので、管錐で穿孔した縄文勾玉の系譜のように思える。してみると製作時期は弥生中期の前葉か?ちなみに宇木汲田を含め、北部九州の勾玉は両側穿孔された小さな紐孔のようだから、穿孔技術は北陸系のようだ。
 
勾玉のプロポーションは、胴部の断面が宇木汲田が円形に対して真名井が楕円形。
 
スマートな北部九州の定形勾玉と、角を丸めないCの字をした西部北陸方面の半玦形勾玉の折衷なのではないか?
 
見逃せないのは、真名井の勾玉はガラスのような透明感のある非常に美しいロウカンヒスイということで、これはロウカンヒスイの勾玉の本家といえる唐津平野から出土する勾玉の系譜ということだ。
 
そこで点と点を繋いで・・・弥生中期の定形勾玉が完成する以前の北部九州に、西部北陸から半玦形勾玉が渡ってきて、北部九州でも半玦形勾玉系をロウカンヒスイでつくるようになった。
 
その北部九州メイドの半玦形勾玉をスマートにしてみたのが真名井の勾玉で、こりゃいける!と喜んだ職人が頭部を球状に、胴部断面を円形にした、さらにスマートな定形勾玉へと発展させていった。ということは真名井の勾玉は、定形勾玉のプロトタイプではないか?・・・という物語りが浮かびあがってきた。
 
もちろん「既存のアカデミズにとらわれない学問領域」のニューアカデミズおじさんではないから、断定はしない(笑)
 
石川県・福井県といった西部北陸、丹後半島、北部九州の勾玉の出土状況、玉つくり遺跡を調べて検証を地道にしていく訳ですな。
 
 
 
 

石なのに柔らかく温かみを感じるモノをめざす・・・笑う岩偶モチーフ石笛

2023年02月16日 09時36分08秒 | ぬなかわヒスイ工房
すっかり忘れていたのだが、二年前に投稿した「笑う岩偶」をモデルにした石笛の写真がでてきて、われながら斬新な作品だ!と笑った( ´艸`)
あの当時は地味で不人気な色のヒスイの活用がマイブームで、艶消し研磨してから線刻する土偶モチーフを連作していた。
額の孔はペンダント仕様の孔だけど紐をはずすと吹くことができ、量産品の石笛よりいい音がする。
奇をてらったデザインと笑うなかれ。ちゃんとオクターブ半の音域があるので、名人クラスなら楽曲演奏もできる。
石なのに柔らかく、温かみを感じる質感を目指しております。これぞ芭蕉先生の仰る「造化」ではないか?
 
「艶消し研磨」と「切削傷や研磨傷がのこっている艶が出てない研磨」をいっしょにしてもらっては困る。似て非なる異次元の技術差なのだぞ(笑)