笑っていいのか?憤るべきか?「帰ってきたヒトラー」は、リトマス試験紙のような大ヒットしたドイツ映画。
トランプ前アメリカ大統領を皮肉っているのかと思ったが、大統領真っ最中の頃の2015年公開でした・・・。
自殺直前に現代にタイムスリップしたヒトラーが、最初はいかれたコスプレーヤーとして時代錯誤の過激な言動で面白がられ、コメディアンとしてマスメディアの寵児になる。
街頭でヒトラーに「今、何に困っている?」とインタビューされる人々は、最初はジョークとして受け取り、やがて移民は出ていくべきと本音を語り出すが、ヒトラーは最初に「その通りだ!」と共感し、「例えばジャーマンシェパード!ダックスフントと混血したらどうなる?」と、巧妙に不満を煽っていく話術に長けている。
街頭インタビューも含めて、極右政党本部に突撃取材して、「国家のために命を捨てる覚悟があるのか?!なにをやっているこの腰抜け!」と𠮟り飛ばす場面、極右グループと酒場で「強いドイツを再び!」と気勢を揚げる場面などは、筋書きなしのドキュメンタリー映像も使って、虚実ないまぜの斬新な映画手法が心憎い。
本物のヒトラーだと気付いたヒトラー発見者が、「お前は国民を騙している!」と抗議すると、「1933年に国民が私を選んだのだ。プロパガンダなどではない。強いドイツを望む意思を私に託したのだ。私は君の中に存在するのだ。」と平然と答えるヒトラー。
確かにおっしゃる通り。
戦後70年、過激な言動の政治指導者がひと吹きすると、大衆の不満が、排他的なナショナリズムの大きな炎となり得る世相に回帰しつつある世界の危うさ。
過激な言動で国民の不満を煽る政治指導者が現れると、1933年前後のドイツの世相と対比するべきだ。
ヒトラーが本物と気付いた男は精神病院に軟禁されてしまうが、TVマスコミは視聴率が稼げるスターとしてヒトラーを担ぎ続ける。
この映画に込められた最大の風刺、そして警鐘だ。
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