温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

二本木温泉 二本木の湯

2014年03月06日 | 長野県
 
前回取り上げた「あららぎ温泉 湯元館」の浴室でたまたま出会った地元の方が、「この辺りでは屈指の良い風呂ですから是非」と推薦していた木曽福島の「二本木の湯」へ行ってまいりました。まずは木曽福島から開田高原方面へ向かう国道361号を西進し、途中の渡合集落にて左折して旧飛騨街道へと入ると、地蔵峠へ向かってひたすら伸びる細い登り坂となりますが、分岐点から2kmほど進んだ先の右手に当浴場が位置しており、道中のところどころには看板や幟もありますので、道の細ささえ気にしなければ比較的たどり着きやすい立地かと思います。駐車場には多くの車が止まっており、人気の高さがうかがえます。



周囲の環境を損なわない、木造の渋い佇まいです。建物の後背の彼方には、木曾谷と伊那谷を隔てる峻厳な山脈が、谷の間から姿を覗かせながら、青白く聳えていました。信州らしい景色ですね。


 
本棟より一段下には温泉スタンドがあり、またその傍らにはタンクが据え付けられていました。このタンクは源泉のストック用でしょうか。



(上画像クリックで拡大)
下足場には湯使いに関する実に細かな情報開示が掲示されており、施設側のお湯に対する誠意が伝わってきます。


 
全体的にやや古風で田舎臭い建物ですが、窓口傍にはそんな雰囲気にそぐわない、最新の機種と思しきタッチパネル式の券売マシーンが設置されており、これで料金を支払って、券をカウンターに差し出します。お風呂は受付の左に掛かっている暖簾の向こう側です。


 
受付窓口の右側には食堂やお座敷があり、訪問時には湯上がりに食事をしながら寛ぐお客さんで大賑わいでした。また受付前のワゴンでは信州リンゴが販売されていました。



男湯の場合、脱衣室の右側に棚と青い籠、左側に洗面台とドライヤーなどが配置されており、床にはござが敷かれていました。週末の夕方というタイミングゆえに、奥まった立地にもかかわらず、脱衣室の籠がほぼ埋まっており、かなり混雑していました。


 
浴室は男女別の内湯のみで、窓を除いて全面タイル貼りとなっており、窓ガラスからは冠雪している木曽山脈の山稜が望めました。右側の洗い場にはシャワー付き混合水栓が5基並び、室内手前左側にも1基設けられています。そして窓に面して長方形の浴槽が一つ据えられています。浴槽と洗い場以外には特に目立った設備は無く、お風呂としては至ってシンプルなレイアウトです。

浴槽は6~7人サイズの長方形で、縁には木材が用いられており、槽内も床や壁と同様にタイル貼りです。縁の一部には溝が彫られており、そこからお湯が床へ溢れ出ていました。浴槽の窓側には冷たい非加温の源泉を供給している木の湯口があり、その上には「飲めません」と書かれた札が貼り付けられています。非加温源泉は10℃強しかありませんから、当然ながらこのままでは入浴に適さず、加温したお湯も供給されており、底面にあいた2箇所の穴より、細かな気泡とともに加温された循環湯が吐出されていました。湯船の温度は42~3℃で維持されています。館内表示によれば、加温・循環を実施するとともに、新しい鉱泉も常時補給とのことですから、木の樋から注がれている冷たい非加温の鉱泉は、まさにその新しい鉱泉なのでしょうね。


 
施設のリーフレットやホームページの画像に写っている浴槽には、まるでブラッドオレンジジュースのような赤色に強く濁るお湯が湯船に張られているのですが、私が訪れた時の湯船のお湯は、若干緑がかった暗めの山吹色を呈しており、ホームページの画像ほど赤みはそれほど強くなく、また濁って底は見えないものの、槽内のステップ目視できるほどの透明度がありました。一般論として、濁り方や色合いが強ければ強いほど、そのお湯は劣化が進行しているわけですから、私が実際に目にしたお湯は、ここのお湯としては鮮度が良い方なのかもしれません。それもそのはず、入浴に適した温度にするため、上述のように加温したお湯を循環させていますが、非加温の冷鉱泉の投入量もかなり多く、掛け流しと循環併用の半循環状態でした。
湯口から滔々と吐出される冷鉱泉に自分の腕に当てるだけで、炭酸の泡がビッシリと付着します。


 
湯船においても炭酸の泡付きが非常に激しく、湯船に脛をちょっと入れるだけで即座に泡がこびりつき、肩まで浸かれば全身泡だらけになって、拭っても拭っても絶え間なく大粒の泡がくっついてきます。それどころか、肌に付着しきれなかった泡がどんどん上へと浮かび、湯面でパチパチと弾けているのです。大袈裟ではなく、本当に自分の体がソーダ水の中に入れられた氷やストローみたいな状態となり、絶えず肌の上では泡が弾けてシュワシュワしていました。日本屈指の炭酸泉である大分県の「七里田温泉 下湯」にも匹敵するほどの激しい泡付きに私は大興奮し、入浴中は頻りに泡を拭ったり、あるいは泡まみれの自分の肌に落書きしたりと、気泡で思う存分遊んでしまいました。このような激しい炭酸の泡付きは、非加温冷鉱泉を大量に投入しているからこそ実現できるのでしょう。

この冷鉱泉を口に含んでみますと、パチパチと弾けながら気泡が口腔を刺激し、強い炭酸味と金気味、そしてえぐみや渋味が口いっぱいに広がっていきます。そして金気臭が鼻へと抜けて行きます。とにかくすぐに吐き出したくなるほど不味いものでした。またこの手のお湯は得てしてギシギシと引っかかる浴感を有しているものですが、泡付きによる軽やかなフワフワ感やサラサラ感が、そのギシギシを超越してしまっており、いかに気泡のパワーが凄まじいか、その浴感によっても実感することができました。なお塩素消毒を実施しているとのことでしたが、特にそのような臭いは気になりませんでした。

含有される炭酸ガスの量は大分県・長湯温泉の1/2~1/3程度なんだそうですが、それにしても、これだけの強い炭酸は日本屈指であろうと思われます(比肩できるのは会津の大塩温泉あたりでしょうか)。炭酸の温浴効果のおかげで湯上がりはいつまでもホコホコし、まるで体の芯に熱源を抱いているかのように、いつまでも温まりが持続して、湯冷めすることがありませんでした。



2号泉
含鉄・二酸化炭素-カルシウム-炭酸水素塩冷鉱泉 12.9℃ pH5.94 214L/min(動力揚湯・掘削深度80m) 蒸発残留物1665mg/kg
Na+:55.4mg, Mg++:41.7mg, Ca++:245.2mg, Fe++:32.5mg,
Cl-:6.9mg, HCO3-:1135.0mg,
H2SiO3:52.5mg, CO2:1949.0mg,
加水なし
循環あり(衛生管理のため。新しい鉱泉も常時補給)
加温あり(入浴に適した温度にするため)
消毒あり(次亜塩素酸ナトリウム投入と紫外線殺菌の併用)

JR中央本線・木曽福島駅より木曽町営バスの開田高原線(幹線)で「渡合」バス停下車、更に「渡合」から定期便タクシー新開西洞線に乗り換えて「二本木の湯」下車すぐ(但し、「渡合」で接続する定期便タクシーは、土日祝は朝と夜の2往復のみとなるため、かなり使いにくい。「渡合」から歩く場合は1.9kmで約25分)
(木曽町営バスおよび定期便タクシーの時刻は、木曽町公式HPの「生活交通システム」にて確認可能)
無料送迎バスあり(詳しくは公式HPで確認)
長野県木曽郡木曽町新開6013-1  地図
0264-27-6150
ホームページ

10:00~19:00 木曜定休
600円
ロッカー(貴重品用は無料)・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする