

前回記事の「ホテルTAITO」は鶴居村温泉でしたが、今回取り上げる「グリーンパークつるい」は鶴居温泉です。両者の間は1km程度しか離れていないにもかかわらず、温泉名に「村」の一文字があるかないかで、泉質のみならず建物の雰囲気までがかなり違うのです。いかにも昭和の大規模公共宿泊施設らしい佇まいを見せる「グリーンパークつるい」は、東京ローカルの表現で恐縮ですが、「ホテルTAITO」が代官山や自由が丘(東急沿線)のイメージだとすれば、「グリーンパークつるい」は東武か京成沿線を思わせる庶民的なイメージであり、実際に私が訪問した時の客層も、前者は若年~中年層が多かったのに対し、後者は老人客が目立っていました。
フロント前には日帰り入浴客専用の券売機が用意されているので、それで料金を支払い、券をフロントに手渡します。フロントではスタンプカードを発行しており、入浴のみの利用も積極的に受け入れているようです。


ロビーの左側且つ食堂の右側が大浴場の入口です。館内には宿泊客専用の浴室もあるようですが、日帰り入浴の私は利用できるはずもなく、素直に大浴場へと向かいました。

脱衣室は広くて明るいものの、昭和っぽい古さは否めず、実用本位で飾り気もありません。この室内からは青森県の温泉銭湯に近い空気感を覚えました。



浴室は「大浴場」の名に恥じない、天井が高くて広々としている立派なお風呂です。大きなガラス窓からは外光がたっぷり降り注がれるので、室内は明るく開放的です。また腰掛けや入浴道具置場などを用意して、実用的な配慮もなされています。洗い場は2箇所に分かれて配置されており、計16基のシャワー付き混合水栓が取り付けられていました。

大浴場にサウナは欠かせませんね。もちろん水風呂も用意されています。



大きな窓の下には、グランドピアノの蓋を縦に細長く伸ばしたような形状の内湯主浴槽が据えられており、隅の湯口からは源泉100%のお湯が完全掛け流しで注がれていました。湯口周りや湯面では気泡の塊が目立っています。

露天風呂の出入口付近には泡風呂もあり、こちらにも温泉のお湯が張られていました。


露天風呂は日本庭園風の岩風呂で、湯船自体は建物に沿って細長く、部分的に屋根掛けされており、石灯籠が立てられていたり、飾りのような小さな竹垣があったり、うだつのように塀からちょこんと突き出ている部分に瓦が載せられていたりと、和風な雰囲気を醸し出そうとする努力の片鱗が垣間見えますが、目隠しの塀が浴槽に迫っているため、湯船に浸かっちゃうと周りの景色はほとんど眺められません。また庭に植えられている植物も枝が伸び放題だったり、あるいは雑草が生えっぱなしだったりと、お手入れが疎かになっているのではと疑いたくなるような箇所もあって、ちょっと残念です。でも、このいまひとつな感じも、昭和のハコモノっぽい外観や館内風景を見ていると、なぜか違和感を覚えなくなってしまうのですから不思議なものです。


内湯の主浴槽では湯面に浮く気泡が目立っていましたが、露天風呂ではそれがより顕著に現れており、就中、湯口の中は洗剤が溶けているんじゃないかと勘違いしてしまいそうなほど、大量の泡が立って盛り上がっていました。そしてその泡が湯船へと落ち、湯口周辺を中心にした湯面には大量のアワアワが漂っていました。これって、いわゆるモール泉で見られるような泡や炭酸的な気泡と異なり、粘性を有する液体(つまりここの温泉)に衝撃が加えられる(この場合は配管から湯船へ落とされる)ことによって泡立ってしまっているのではないかと想像されます。施設側によればこの温泉はモール泉であると説明されていますが、実際に私が確認してみたところ、見た目は薄い黄色の透明で、辛くはないけどしょっぱい味がはっきりしており、それに出汁味や弱金気味、そしてほろ苦みが感じられました。そしてアブラ臭とモール臭を足して2で割ったような匂いがお湯から漂っていました。たしかにモール泉っぽい感じを有していますが、どちらかといえばモール泉の要素を兼ね備えた食塩泉と言うべき質感があり、湯船に浸かった時に肌に得られるツルスベ浴感も、モールというよりは正に食塩泉のそれでした。なお上述のように湯面をはじめとしてアワアワが大変目立っていますが、意外にも肌への泡付きは弱く、若干付着する程度でした。更には、湯上りには肌がつっぱり、多少のべたつきも残りましたので、湯上りの感覚はモールではなく完全に食塩泉のものであり、私個人としては津軽平野の食塩泉(板柳や鷹の羽など)を思い出さずにはいられませんでした。なお露天風呂も内湯同様に完全掛け流しの湯使いとなっています。
当記事の冒頭では、鶴居村温泉「ホテルTAITO」とは1kmしか離れていないのに、雰囲気も泉質も異なると申し上げましたが、鶴居村温泉は典型的且つ濃厚なモール泉であるのに対し、こちらのお湯は食塩泉としての性格が強いんですね。両者とも日帰り入浴料金は同じですから、お客さんの好みに応じて使い分けできちゃうわけです。鶴居村の温泉って面白いですね。
ナトリウム-塩化物温泉 45.9℃ pH8.5 湧出量未記載(動力揚湯) 溶存物質4.629g/kg 成分総計4.630g/kg
Na+:1643mg(93.67mval%), Ca++:67.2mg(4.39mval%),
Cl-:2499mg(95.41mval%), HCO3-:127.9mg(2.84mval%), CO3--:24.1mg(1.08mval%),
H2SiO3:163.4mg, HBO2:33.7mg, CO2:0.7mg,
北海道阿寒郡鶴居村鶴居北1-5 地図
0154-64-2221
ホームページ
日帰り入浴10:00~22:00
500円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり
私の好み:★★+0.5