温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

昭吉の湯 2013年11月再訪

2014年03月02日 | 静岡県
 
昨年(2013年)11月の某日、伊豆半島南部の下田市にある「昭吉の湯」へ再訪してまいりました。こちらの温泉は拙ブログで5年前に取り上げており、その時には「観光地伊豆のイメージを覆す秘湯感」「眺望が素晴らしい」「ヌルヌル&ツルツル浴感」といった要素に感激して好印象ばかりが記憶に残っているのですが、それから5年の歳月が経ち、津々浦々のいろんな温泉を巡ってきた今日、果たして自分の記憶は正しかったのだろうかと確かめたくなり、再訪することにしたのです。
横川集落の信号で県道15号線から、ヌルヌルのアルカリ泉として有名な「観音温泉」へ伸びる狭隘な道へと入り、しばらくは同じ道を辿るのですが、途中に立つ「昭吉の湯」の案内看板のところで左折し、更に細い私道へと入ります。この道がとんでもなく険しくて急な坂の連続でして、往きは登っていけるか、帰りは転げ落ちていかないか不安になっちゃうほどです。


 
途中何回か角を曲がりつつ、急坂を登り切って現地へ到着。駐車場に車を停めると、施設を運営しておるオーナーさんの奥さんと思しき方が私の到着を察知して、母屋(受付棟)の玄関に出てきて挨拶し、料金を受け取っていきました。玄関の左側には料金など営業案内とともに、この日のお風呂の温度が掲示されていました。



受付棟から更に急な坂を上がった先にある…


 
この建物が浴場棟であります。私道の入口から一気に急坂を登ってきたわけですが、どれだけの高さを上がってきたのでしょうか、浴場棟の脇から今来た方角を眺めると、伊豆半島の脊梁に当たる稜線が彼方に広がっており、その景色を気持よく見晴らせます。


 
浴場棟は無人状態となっているため、下の受付棟で料金を先払いしておくわけですね。下足場から奥へ伸びる廊下の右側にはいろんな掲示や観光資料が並んでいるのですが、受付玄関脇と同様にこちらにも浴槽の温度が表示されていました。細い坂道のどん詰まりという立地や、素朴で質素な浴場棟の佇まいからして、既に「観光地伊豆のイメージを覆す秘湯感」たっぷりであり、私が前回感じた3つの好感要素のうち一つはここで再確認されました。



廊下の奥には手造り感溢れる休憩室が広がっており、更にその先に男女別の浴室があります。


 

その休憩室には、お水の無料サービスが用意されているのですが、この水は「昭吉の湯」の温泉水をパッケージしたもので、「いずみず」という商品名で販売されているんだそうです。ご近所の「観音温泉」も温泉水販売が有名ですが、こちらでも同様に泉質の良さを売りにしているんですね。実際に飲んでみますと、軽やかな喉越しを伴いながらスッと素早く体へ入り込んでいきました。典型的なアルカリ泉の爽快な喉越しであり、冷やして飲むのも勿論ですが、常温でも美味いんですよね。


 

室内に富士山の絵や木彫の飾りが提げられている脱衣室には、扉付きの棚の他、洗面台やドライヤー・扇風機などひと通りのものがあり、使い勝手はまずまずです。棚の扉には南京錠が掛けられる金具が取り付けられているのですが、肝心の鍵が見当たりませんでした(必要な時は借りるのかな?)。またこちらにも「いずみず」の飲泉サービス用サーバーが置かれていました。


 
お風呂は露天風呂のみで、内湯はありません。浴槽は20人以上同時に入れそうな大きなものですが、頭上は屋根で覆われており、その屋根を支える立派な柱が浴槽に屹立しているので、その柱がちょっと邪魔かも(私は柱に寄りかかりながら入浴しましたが…)。またお風呂の下方に駐車場があるため、まわりには目隠しが施されていますが、高台にあるため結構な開放感が味わえます。尤も、露天風呂として確保されている区画の殆どを浴槽が占めており、お風呂から上がって体をクールダウンさせたいときなどに、腰を掛けて休憩できそうなスペースが殆ど無いのはちょっと残念です。



湯船に浸かると目隠しが邪魔して景色があまり目に入りませんが、湯船で立てば眺望良好。清らかに澄み切った広い空を仰ぎながら、黄昏に染まる伊豆半島の山々が一望できました。眺望はこの露天風呂の大きな特徴のひとつであり、前回訪問時におぼえた好感要素の2つ目である「眺望が素晴らしい」という記憶にも間違いありませんでした。



立派な柱と太い梁が目を引く露天風呂の屋根は、重厚感のある本格的な木造建築であり、よく見ますと釘を使わない伝統的な木組みの工法が採用されているようです。このお風呂ではつい景色に関心がいきがちですが、是非視線を上げてこの屋根にも注目していただきたいものですね。


 
脱衣室からお風呂へ向かう際には、まず洗い場に出ることとなります。露天風呂と一体化しているこの洗い場にはシャワー付き混合水栓が2基取り付けられており、お湯は源泉が出てきます。また、洗い場および浴槽には伊豆青石が使われており、洗い場を歩いたり、湯船に座って底にお尻をつけたりすると、凝灰岩ならではの感触の良さが肌に伝わってきました。下世話な関心ですが、立派な屋根といい、この伊豆青石といい、一見すると質素な感じの造りでありながら、実は相当お金がかかっているのかもしれませんよ。


 
浴槽隅にある溶岩みたいな赤い岩から塩ビ管が突き出ており、そこから体感で47~48℃くらいのやや熱い温泉が浴槽へ供給されています。そして広い浴槽を満たしたお湯は、洗い場から見て右前方の縁に接しているUV管のオーバーフロー管より排湯されています。浴槽内ではお湯が供給口からオーバーフロー管へ向かって緩い流れが生まれているため、湯船の左側(湯口側)が最も熱く、そこから離れるに連れて徐々に冷めてゆき、オーバーフロー管近くにおいては玄関脇などで掲示されていた42℃となっていました。
お湯は無色澄明、湯口に置かれたコップでお湯を飲んでみますと、アルカリ性泉によく見られる弱い収斂と表現が難しい独特の味(土気、特に粘土に似て非なる味)が微かに感じられましたが、ほぼ無味無臭と言ってよいほどクセがないもので、当然ながら上述の「いずみず」同様に、ゴクンと飲み込めば、軽快な喉越しを伴いながらスゥーっと素早く体に吸収されてゆきます。その喉越しの軽やかさが癖になり、入浴中は何度もお湯を飲んでしまいました。

さて前回訪問時は「ヌルヌル&ツルツル浴感」に感激したわけですが、今回入浴してみますと、確かにアルカリ泉らしい明瞭なツル&スベ感は得られましたが、誤解を承知で申し上げるならば、感動するほどではなかったかもしれません。前回入浴した時点の私は、まだまだ他の強力なヌルヌル温泉を知らなかったので、こちらのお湯や近所の「観音温泉」のヌルヌル感でも十分に驚いたのでしょう。と言っても、決して浴感が弱いわけではなく、あくまで私が今まで入浴してきた温泉の中で考えた場合の相対的な問題であって、関東の日帰り圏内に湧く温泉の中では、かなり強い方に属するツル&ヌル浴感を有していることに間違いありません。

観光色の強い伊豆という土地にありながら、車で手軽に秘湯感を味わえ、飲泉できちゃうほどクオリティの高いお湯が完全掛け流し、しかも見晴らし良好、営業時間も長くて料金も(伊豆にしては)手頃、というポジティブ要素をたくさん擁する、おすすめの露天風呂でした。


アルカリ性単純温泉 48.0℃ pH9.48
Na+:73.7mg, Ca++:1.2mg,
Cl-:9.4mg, SO4--:31.6mg, HCO3-:61.1mg, CO3--:37.3mg,
H2SiO3:88.3mg,

静岡県下田市横川1066-24  地図
0558-28-0457
ホームページ

平日10:00~20:00、土日祝8:00~20:00
700円
シャンプー類・ドライヤーあり、ロッカー見当たらず

私の好み:★★★
コメント
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