温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

あららぎ温泉 湯元館

2014年03月04日 | 長野県

信州・南木曽町の妻籠宿から伊那谷の昼神温泉へと抜けるには、国道256号線の山道を登って清内路トンネルを潜ることになりますが、妻籠から清内路トンネルへ向かってちょっと登った先には、南木曽温泉郷と称されるエリアがあり、1軒の宿と2軒の食堂兼日帰り入浴施設が営業しております。今回はその中でもお湯の質に定評がある「あららぎ温泉 湯元館」でひとっ風呂浴びて参りました。国道の路傍には「ここで元気してって下さ~い 信州で2番めにいいトコですョ」と書かれた看板が立っており、そこを矢印に従って曲がればすぐに到着です。よく飲食店では「当店は世界で2番めに美味しい店(一番うまいのはおふくろの味)」といったコピーを見かけますが、あららぎ温泉が「2番めにいいトコ」となると、信州で1番の温泉とは果たしてどこを指しているのでしょうか。


 
工場か倉庫を思わせる外観の、横に長い建物の左側に食堂「ひのき」の入口があり、温泉を利用する場合もこちらから入館します。ちなみに温泉名のあららぎは当地の地名なんだそうでして、漢字では「蘭」と表記するんだとか。相当の難読漢字ですよね。今回初めてそのことを知ったのですが、後日漢和辞典をひいてみたら、「蘭」の字をアララギと読む場合は、常緑樹の一種であるイチイの別称を意味するんだそうです。おかげさまで脳みその皺が一本増えました。



広い敷地には駐車場の他、いかにも木曽ヒノキの産地らしく、木工品直売所もありました。なお南木曽温泉郷から更にトンネルへ向かって登ってゆくと、国道の両側に木工品の加工所や販売店が並ぶ木地師の集落があり、その生業ゆえに(※)、店名には小椋の姓が含まれていました。
(※)拙ブログでは秋田県の泥湯温泉の記事で触れておりますが、日本の木地師は滋賀県愛知郡小椋庄を源流として各地に拡がってゆき、そのほとんどが小椋姓を名乗って、今でも伝統を継承しています。


 
暖簾を潜って食堂入り、入口すぐ右にあるレジで入浴料金を支払います。


 
左手に休憩室の扉を見ながら、温泉施設というより倉庫か仮設施設のような無機質な長い廊下を歩いて奥へと向かいます。
ちなみに、この廊下の壁には南木曽町の入湯税に関する掲示が貼り出されており、宿泊では1泊150円、日帰り入浴は100円となっていました。こちらの施設の料金は550円ですから、そこから100円を引いた450円が、施設側が手にする実質的な収入となるわけです。入湯税は市町村が課す地方税ですから、その税率設定は各市町村に任されています。宿泊に関しては南木曽町に限らずどの自治体でも標準税率である150円にほぼ統一されていますが、日帰り入浴に関しては自治体によってバラバラなんですし、施設によって徴収しているのかいないのか、わからない場合も多々あります。かなりいい加減な税金ですね。


 
廊下の突き当たりに掛かっている暖簾を潜って脱衣室へ。使い勝手には特に問題なく、床にはタイルカーペットが敷かれており、梁や柱には太い木材が用いられていますが、にもかかわらず、室内は無駄に広くて仮設の倉庫のような無味乾燥とした雰囲気でした。



壁には大きな模造紙に味のある字で注意が記されており、曰く、掛け流しなので量は少ない、それゆえ、入浴する前に体をよく洗い、タオルは湯船に入れないで、とのこと。掛け流しなのに量が少ないとはこれ如何に?


 
浴室は男女別の内湯のみで、お風呂は数年前にリニューアルされたらしく、質素な外観とは裏腹に明るくて綺麗な室内空間が創り出されていました。壁の上半分はオレンジ色の防水壁材、下半分はライトグレーのタイル、床はオリーブグレーのタイルが用いられており、タイルの床の上に総木造の浴槽が一つ据えられています。
洗い場にはシャワー付き混合水栓が6基並んでおり、シャワーの吐出圧力は良い塩梅です。また土地柄なのか用意されている桶や腰掛けはヒノキの木工品なのですが、これは上述の木工品直売所の製品なんでしょうか。


 
木曽ヒノキの産地という地の利を活かして浴槽は立派な総ヒノキ造。分厚くドッシリと構えており、容量としてはおおよそ5人サイズです。木組みの湯口から加温されたお湯がチョロチョロと注がれており、脱衣室の注意書きに記されていたように、本当に投入量は少しずつでした。槽内には吸引口など見当たらず、縁から静々とオーバーフローしていましたので、その状況から湯使いを推測するに、源泉を加温した上での放流式であるかと思われます。なお館内表示によれば塩素消毒を実施しているそうですが、特に塩素臭等は気になりませんでした。

お湯は無色澄明無味無臭、これといった特徴が無さそうに見えますが、湯中で肌を擦ると、まるで何かをコーティングしたかのような心地良いツルツルスベスベ感があり、その浴感から只者ではないお湯であることがわかります。常連客から伺った話によりますと、この浴場では、自家源泉である「あららぎ温泉」と、他施設でも用いられている「南木曽温泉」の2種類をブレンドしており、以前は自家源泉のみの使用で、源泉温度が低いためにしっかり加温していたが、現在は源泉温度の高い「南木曽温泉」を混ぜることによって加温の程度も軽く済むようになった、とのことでした。館内には「南木曽温泉」を使用してる旨は明示されているものの、分析表が掲示されていないために詳しいことはわかりませんが、このお湯に浸かったときに全身を纏ってくれる魅惑的なツルツルスベスベは、「あららぎ温泉」由来だとすれば24.5mgという国内の温泉屈指の量を誇るフッ素イオンの影響によるものかもしれませんし、「南木曽温泉」由来だとすればアルカリ性泉ゆえの特徴なんだろうと思われます。とはいえ、私の実感で申し上げるならば、いわゆるアルカリ性泉的な浴感とは別物のツルスベだったように感じられたので、おそらく「あららぎ温泉」独特の特徴がよく現れているのではないのでしょうか。またこうした浴感のみならず、パワフルな温まり効果も秘めており、湯船では41℃という長湯したくなるややぬるめの湯加減であったにもかかわらず、しばらく入っているうちに全身が火照ってしまい、湯上がりにはしばらく汗が引きませんでした。
癖のない無色透明のお湯と侮れない、個性的なお湯でした。


あららぎ温泉
アルカリ性単純温泉 25.2℃ pH9.40 溶存物質489.9mg/kg 成分総計489.9mg/kg 
Na+:165.4mg(97.27mval%),
F-:24.5mg(17.05mval%), Cl-:74.8mg(27.49mval%), HCO3-:82.4mg(17.85mval%), CO3-:39.0mg(17.19mval%), BO2-:20.8mg(6.42mval%),
H2SiO3:28.8mg,
(平成21年3月16日)

南木曽温泉
アルカリ性単純温泉 39.0℃ 詳細データの掲示見当たらず
(平成21年3月16日)

加水・循環なし
加温あり(入浴に適した温度を保つため)
塩素剤投入(県公衆浴場基準を満たすため)

JR中央本線・南木曽駅よりおんたけ交通バスの保神行で「ホテル木曽路前」バス停下車すぐ
(バス時刻は南木曽町観光協会公式サイトにて確認可能)
長野県木曽郡南木曽町吾妻尾越2333  地図
0264-58-2365
ホームページ

10:00~20:00 火曜定休
550円
ロッカー(有料100円)・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
コメント
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