温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

湯川温泉 きよもん湯

2014年06月09日 | 和歌山県
 
和歌山県那智勝浦町にある汽水湖「ゆかし潟」の周囲ではあちこちで温泉が湧出しており、ちょっとした温泉の宝庫でありますが、今回は国道42号線沿いに建つ日帰り温泉施設「きよもん湯」を利用してまいりました。国道沿いという好立地ですし、駐車場も完備されていますので、温泉ファンのみならず一般の方でも利用しやすい施設です。


 
瓦屋根の建物は平屋で地味ながらもそこはかとない風格があり、殊に玄関まわりはまるで旅館のような佇まいです。その玄関傍にある外水道では温泉のお湯が汲め、この画像を撮った直後に、軽自動車で乗り付けたおばちゃんがポリタンクにお湯を溜めはじめました。



受付前の券売機で料金を支払い、券を受付に差し出します。受付の右手にはガラス張りの休憩室が設けられており、中央には畳の小上がりが用意されています。ガラス窓の周りは庭園風に植栽が整えられており、わずか数百円で利用できる施設とは思えないほど美しく上品な趣きです。


 
受付からまっすぐ進み、左へ曲線を描く渡り廊下を歩いて入浴棟の下足場へと向かいます。なお下足場から中へ入ってすぐ左手には家族風呂(50分1000円)が何室かあるのですが、今回は利用しませんでした。


 
廊下の壁に展示されている書状は、昭和23年に当時の皇太子様(今上天皇陛下)が喜代門旅館に宿泊した際、東宮大夫から送られた感謝状です。達筆且つ簡にして要を得た文には敬服するばかりですが、皇族がお泊りになるほど、こちらは嘗て由緒あるお宿だったんですね。たしかに、今でこそお隣の勝浦の方が温泉地としては有名ですが、歴史的に見れば、勝浦温泉の開湯は江戸期ですが、湯川温泉は平安時代まで遡れるそうですから、こちらの方がはるかに長い伝統を有しているわけです。私個人としては「きよもん」を漢字で「喜代門」と書くことに目から小さなウロコの破片が落ちました。


 
脱衣室に入るや否や、温泉から放たれるタマゴ臭が香り、一秒でも早く服を脱いでお湯に浸かりたくなります。室内は実用的な造りながら、よくメンテナンスされていて明るく綺麗です。無料のドライヤーがある他、カゴも用意されていればロッカーも設置されており、使い勝手も良好。扇風機が3つもあって、湯上がりのクールダウン対策もバッチリです。


 
脱衣室の壁に掲示された「出しっ放し」の赤い字が、完全掛け流しであることをアピールしていました。また「貴金属は変色することがあります」という文言が、お湯に硫黄が含まれていることを示唆していました。


 
お風呂は内湯のみで露天風呂はありません。浴室の壁にはブラウン系、床にはグレー系のタイルが用いられており、空から降り注ぐ陽光で水色のタイルが鮮やかに輝く大きな浴槽が窓に面して一つ据えられています。その浴槽は15~6人くらい同時に入って足を伸ばしてもゆとりがありそうな程の容量を有し、とてもクリアなお湯が湛えられています。
一方、窓とは反対側の壁にそって洗い場がL字型に配置されており、シャワー付き混合水栓が6基並んでいます。浴室のお掃除もぬかりなく行き届いており、気持ちよく使えました。


 
湯口からは絶え間なく源泉がドバドバと注がれており、浴槽の縁からは惜しげも無くザバザバとオーバーフローして、洗い場へと流下しています。投入時の音と溢れ出る音、その両方が浴室内に木霊しており、見た目のみならず耳からも湯量の豊富さを実感できました。
こちらのお湯は保健所からちゃんと飲泉許可も得ていますから、心置きなくお湯を飲んでみますと、甘いタマゴ味にアルカリ単純泉的な微収斂が感じられ、茹でタマゴ臭がやさしく香ってきました。



心が洗われるほど無色澄明でクリアなお湯に浸かると、入って20秒も経たないうちに肌が気泡に覆われ、たちまち全身が泡だらけになってしまいました。これはすごい! しかもお湯が持つツルツルスベスベ感に、泡付きのよるエアリー感も加味されるので、湯船の中では実に軽やかで爽快な浴感が楽しめました。また投入量が多くてどんどんオーバーフローされてゆくので、大きな湯船でも十分に鮮度感が得られました。なおこちらのお湯は2つの源泉をミックスさせて使っているようです。

このような爽快感のあるお湯であり、湯船では41~2℃でしたから、湯上がりは爽やかで清涼感があるものかと思いきや、なぜか温まりが強く、気がつけば顔が赤らみ心臓の拍動も増え、早々に体が音を上げてしまったので、あまり長湯できずに湯船から上がらざるを得ませんでした。イオウによる血管拡張効果が覿面に効いているのかもしれません。脱衣室に扇風機が3つも用意されている意味が、ここに至ってようやく理解できました。見た目や浴感からは想像できないパワーも有しているようです。でも食塩泉のような嫌味なベタつきや火照りは無く、扇風機に当たっているうちに爽快感が戻ってきました。
施設の資料によれば1200年の歴史があるんだとか。長い歴史に裏打ちされている、素晴らしいお湯でした。


喜代門湯
アルカリ性単純温泉 40.8℃ pH9.8 252L/min(掘削自噴) 溶存物質0.177g/kg 成分総計0.177g/kg
Na+:48.8mg(91.77mval%), Ca++:3.6mg(7.79mval%),
F-:8.8mg, Cl-:30.6mg(27.13mval%), OH-:1.1mg, HS-:1.0mg, S2O3--:0.1mg未満, CO3--:27.0mg(28.39mval%), HSiO3-:35.6mg(14.51mval%),
H2SiO3・CO2・H2Sいずれも0.1mg未満,

喜代門湯2号
アルカリ性単純温泉 39.5℃ pH9.9 223L/min(掘削揚湯) 溶存物質0.174g/kg 成分総計0.174g/kg
Na+:48.3mg(91.70mval%), Ca++:3.6mg(7.86mval%),
F-:8.8mg, Cl-:29.6mg(26.77mval%), OH-:1.2mg, HS-:0.6mg, S2O3--:0.1mg未満, CO3--:25.2mg(28.39mval%), HSiO3-:34.7mg(14.52mval%),
H2SiO3・CO2・H2Sいずれも0.1mg未満,

JR紀勢本線・湯川駅より徒歩12~3分(1.0km)、もしくは新宮駅~紀伊勝浦駅~串本駅を運行する熊野交通バスで「湯川温泉」バス停下車すぐ
和歌山県東牟婁郡那智勝浦町湯川1062  地図
0735-52-0880
ホームページ

12:00~23:30
500円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
コメント (2)
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