温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

長湯温泉 きもと温泉

2014年11月09日 | 大分県
 
長湯温泉の県道30号線と47号線の丁字路角に位置している「きもと温泉」は、同名の食料品店に付帯している公衆浴場であり、ニコニコしたお婆ちゃん「くにちゃん」のイラストが描かれた、黄色い看板が目印です。
商店と温泉浴場は長屋のように一続きの棟になっているのですが、商店の屋根瓦はグレー、湯屋の方は茶色というように分かれています。


 
こちらは商店。軒下には昔懐かしい琺瑯看板がかかっていました。


 
商店の右側には浴場の番台があり、湯銭はこの窓口で納めます。私が訪れたときにはお婆ちゃんがいらっしゃったので、支払い時に挨拶させていただきましたが、無人時には料金投入口へセルフで納めればOKのようです。
きもと温泉には新旧ふたつの男女別内湯がある他、家族湯まであって、意外にも浴室の種類は豊富です。商店を含めたすべての施設は、県道30号に面して一列に並んでいます。



上画像は旧浴場の「黒岳」で、料金は150円。


 
その右隣に並んでいる新しい浴場「大船」は50円高い200円。ま、新しいとはいえ、結構年季が入っているんですけどね。家族湯以外は貸切ではないので、どちらでも好きな方を選んで、それに応じた湯銭を支払えばよいのですが、「大船」浴室の目の前ではボコボコと音を立てている源泉井があったので、その光景を目にした私は迷わず「大船」を利用することにしました。


 
「大船」浴室の正面にある源泉井では、ボコボコと勢いよく音を立てて湯気を上げてながらお湯を汲みあげており、そのまわりはゴテゴテとした赤茶色の析出に覆われ、まるでモンスターみたいです。


 
とってもウッディーな脱衣室は、木の棚にプラ籠があるばかりの至って質素なものですが、壁には扇風機が取り付けられており、湯上りのクールダウンには大いに役立ちました。室内の床には黒いホースが屋外から浴室へ突き抜けているのですが、言わずもがなこのホースは源泉井から浴槽へお湯を引くためのものです。


 
壁や天井はモルタル塗、床や浴槽はコンクリ打ちっぱなしの質素な浴室は、田舎の共同浴場然とした実用的な造りで、シャワー等は設けられていませんが、その代わりに桶や手桶はそれなりの数が用意されていました。この「大船」浴室は「黒岳」浴室より新しいだけでなく、部屋そのものが一回り大きいらしく、そうした差が50円として反映されているようでした。



窓の外は長閑な田園風景。いい空気だ♪


 
浴槽はほぼ2メートル四方で、いかにも長湯温泉らしく槽や床には温泉成分がビッシリこびりついており、浴槽縁の上面には、千枚田状の石灰華によって小さな池のようなものができていました。湯使いは完全掛け流しで、焼肉のセンマイを彷彿とさせるデコボコな切り欠けから惜しげもなくお湯が捨てられています。


 
浴槽縁や床では成分付着がデコボコしているわけですが、壁際はまるでサンゴのようなトゲトゲによってビッシリ覆われており、実に繊細な自然の造形を生み出しています。このトゲトゲは壁際のみならず、槽内側面もトゲトゲしているため、入浴中、迂闊に背中から浴槽にもたれかかるとチクチクとした痛みが走ります。


 
分析表によれば湧出温度は48.9℃とのことですが、何しろ源泉井はすぐ目の前にあり、引湯距離はわずか数メートルですから、お湯はまさに新鮮そのもの。湯口でもほとんど冷めず、温度計は48℃を指していましたが、加水されていないものの自然冷却によって、湯船では42~3℃という実に心地よい湯加減となっていました。室内にデコボコやトゲトゲをもたらす温泉成分は、注がれたばかりの湯船で早くも目に見える形で現れており、湯面には白い粉上の膜が浮かび上がっていました。私が湯船に浸かると、この膜はパリパリと割れて消えてゆくのですが、数分も経てば再び石灰質の膜が形成されて湯面を覆ってゆきました。


 
源泉井から脱衣室を通って浴槽へと導かれている黒い引湯ホースは、ちょうど水道蛇口の直下部分に穴があいており、蛇口を開けるとこのホースへ直接水が落とされるようになっていました。尤も、この日は加水されておらず、私も蛇口を開けることはなかったのですが…。
湯口からは金気臭とともに鼻孔を刺激する不思議な匂いが嗅ぎ取れます。湯船のお湯はやや緑色掛かった山吹色を帯びており、槽内のステップが辛うじて見える程度の強い濁りを呈しています。口に含んでみるとマイルドな金気味と土気味、そして明瞭な炭酸味が口の中に広がり、前回取り上げた千寿温泉ほどではありませんが、ほんのりとした甘味も感じられました。

お手軽な料金で掛け流しのお湯を楽しめる、温泉天国長湯らしい素敵な公衆浴場でした。


マグネシウム・ナトリウム-炭酸水素塩温泉 48.9℃ pH6.8 湧出量測定せず(自噴・280m掘削) 溶存物質4.694g/kg 成分総計5.290g/kg
Na+:475.0mg(33.43mval%), NH4+:3.5mg, Mg++:334.0mg(44.47mval%), Ca++:213.0mg(17.20mval%),
Cl-:207.0mg(9.93mval%), SO4--:441.0mg(15.61mval%), HCO3-:2670.0mg(74.43mval%),
H2SiO3:238.0mg, HBO2:8.9mg, CO2:596.0mg,
加水加温循環消毒なし

豊後竹田駅より大野竹田バスの直入支所(長湯温泉)行で「桑畑」バス停下車すぐ
(時刻等は大分バスのホームページでご確認を)
大分県竹田市直入町大字長湯桑畑3273-1  地図

開店時間不明~21:00
「黒岳」浴室150円、「大船」浴室200円、家族湯1000円(1時間)
「黒岳」および「大船」は備品類なし(ドライヤーは番台貸出し)、家族湯には石鹸やシャンプーあり

私の好み:★★★
コメント
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