長湯温泉の入浴施設では最も新しい(はずの)「温泉交流館 みつばちの湯」を利用してまいりました。以前ここには「憩の家」という老人福祉施設があったそうですが、老朽化のため取り壊され、その跡地に現在の施設が新築されました。金属の素材感を活かしたいかにも現代風の建築様式を採り入れているこの施設は、2012年7月にオープンしたばかりで、開業からまだ2年しか経ていないためか、どこもかしこもピッカピカです。
みつばちという名前ゆえか、建物の外形は蜂の巣を模したヘキサゴンになっているようです。正面入口を通り過ぎた隣の辺に当たる箇所には、デイサービス施設が併設されており(上画像)、現在の浴場もデイサービス施設のスタッフが運営にあたっています。全面リニューアルされたとはいえ、老人福祉施設であることは従前も現在も変わりがないようです。
玄関右手に立っている塔は貯湯槽であり、その直下に自家源泉があります。湧出量は豊富なのですが、閑散時のお風呂で使用される量はたかが知れているため、塔の上からお湯が溢れ出ないよう、余ったお湯がドバドバ大量に用水路へ捨てられていました。あぁもったいない…。
受付カウンターの上に置かれているミニ券売機で料金を支払います。メタリックな外観とは異なって、館内は木材を使ったぬくもりのある空間となっており、実際に使用するのかどうかわかりませんが、受付横のホールには煙突付きの暖炉が設置されていました。施設内には後述する男女別の内湯の他、貸切利用の家族風呂が4室用意されています。
館内に飲物の自販機は無いのですが、その代わりファミレスや漫画喫茶にあるようなドリンクサーバーが設けられており、なんと100円を支払えばドリンク飲み放題という嬉しいサービスを実施しています。
受付ホールから中庭に出て、男女別の内湯へと向かいます。外形のみならず、中庭も六角形になっていることから、館内が全体的にハニカム模様の空間構成になっているものと想像されます。中庭を挟んで別の部屋に移るだなんて、石川県金沢市の金沢21世紀美術館みたいですね。
白壁と木材によってぬくもりと明るさに溢れている脱衣室は、新しい上にきちんと手入れされているので清潔感に満ちており、気持ちよく利用するのができました。なおロッカーは脱衣室内には無く、受付ホールに設置されていますから、貴重品は入室前にそちらへ預けておきましょう。
六角形の外形にこだわったためか、2方向に建物を切り落としたような形状をしている浴室は、5~6人以上で使うと窮屈に感じられそうなほどコンパクトな空間なのですが、コンクリ打ちっぱなしの床以外はほとんど木造であり、新しい白木の美しさが映えていました。室内の狭さを払拭するためか、天井が高く確保されている他、空間を広く見せようと図るべく洗い場には横に長い鏡が設けられており、それらのおかげで床面積以上の開放的が感じられました。なお洗い場にはシャワー付き混合水栓が3基設けられています。
窓は上下に分かれており、上部がガラスサッシのはめ殺しなのですが、下部はガラスのサッシではなくて木戸のみとなっていて、その木戸を開いてみますと、窓外には長閑で麗しい田園風景が広がっていました。
浴槽は外壁に合わせる感じで五角形となっており、目測でおおよそ3~4人サイズ。まだ開業して2年も経っていないのに、浴槽の縁や排湯用の切り欠けには、早くもベージュ色をした鱗状の析出が層を成してこびりついていました。また床も全体的に黄土色に染まっていました。著しい成分付着は長湯温泉の各源泉に共通する特徴であり、温泉ファンにとってはお湯の濃さを視覚で実感できる面白い現象ですが、お風呂を管理する方にとっては厄介物でしかなく、2年でこの状態なのですから、今後営業を続けてゆくうちに、こまめにメンテナンスを行ったとしても、どんどん付着が分厚くなってゆくのでしょうね。
壁から突き出ているパイプよりお湯が吐出されており、湯口では約50℃なのですが、このままでは入浴には熱すぎるため、水道ホースより加水されています。入館時には受付のスタッフの方が「入浴前には水で薄めてください」と仰っていたのですが、私が湯船に入ろうとした時には既に適温まで下がっていたので、余計な加水をせずに済みました。ぬるめのお湯が多い長湯温泉にあって、こちらの源泉は高温の部類に含まれるかと思われます。
湯船のお湯はカナリアイエローに濁っており、窓から外光が差し込むとレモンイエローに見え、湯面にはカルシウムの膜が張っています。浴槽の底にはたくさんの沈殿が溜まっており、入浴前には槽内ステップが目視できる程度の透明度があったのですが、湯船に体を沈めようとすると、沈殿が一気に舞い上がって透明度が殆ど失われるほど強い濁りを呈し、湯面の膜もパリパリと割れてしまいました。でもしばらく経つと沈殿も落ち着いて透明度が蘇り、膜も徐々に再生されていきました。
長湯の他源泉と比べて金気が弱く炭酸味も強くないのですが、土気や苦味は明瞭であり、何かが焦げたような黒ゴムっぽい風味も感じられます。見た目を裏切らないギシギシ浴感があり、加水されているもののお湯の鮮度は良好。しっかり放流式の湯使いです。
敷地を取り囲むように設けられている排水溝には、浚渫された温泉のスケールが積み上げられていました。たまたま管理しているおじさんからお話をちょこっと伺えたのですが、頻繁にスケールを除去しているにもかかわらず、その度にこれだけの量がとれてしまうので、こまめに作業しないとすぐに詰まってしまうんだとか。濃厚な温泉の管理って本当に大変ですね。
現代的のスタイリッシュな建物ですから、鄙び系を好む温泉ファンには触手が伸びにくいかもしれませんが、館内はとても明るく綺麗で清潔感にあふれていますし、湯使いも放流式ですから、鄙びた共同浴場はちょっと苦手、という方におすすめです。鄙び系も現代的施設も、どちらも選択できてしまう長湯温泉の懐の広さは、旅行者にとっては実にありがたいですね。
マグネシウム・ナトリウム-炭酸水素塩温泉 51.7℃ pH7.0 湧出量測定せず 溶存物質4.956g/kg 成分総計5.431g/kg
Na+:513.0mg(35.17mval%), NH4+:2.1mg, Mg++:358.0mg(46.44mval%), Ca++:167.0mg(13.13mval%), Fe++:4.3mg,
Cl-:207.0mg(9.39mval%), Br-:0.5mg, SO4--:382.0mg(12.79mval%), HCO3-:2950.0mg(77.76mval%),
H2SiO3:249.0mg, CO2:475.0mg,
加水あり(源泉温度が高いため)
加温循環消毒なし
大分県竹田市直入町長湯3050-2
0974-75-2124
公式サイト
8:00~21:00 第2火曜定休
300円、家族風呂1000円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり
私の好み:★★★