温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

角間温泉 傳習館

2015年03月31日 | 長野県
 
志賀高原から信州中野方面へ向かってオリンピック道路を車で走行中、角間大橋の上から1軒のスタイリッシュな温泉宿が見下ろせたので、思いつきで立ち寄ってみることにしました。路傍に立つ看板や幟に導かれながら、大橋の下を潜って夜間瀬川沿いを遡ってゆくと、迷うこと無く現地に到着です。ここはかつて「とらや」というB級感の強い鄙びた施設でしたが、いつの間にやら「傳習館」という和風なネーミングの小洒落た施設に生まれ変わったんですね。
伝習館といえば九州・柳川藩の藩校(現在は福岡県立の高校)が思い浮かびますが、なにかご縁でもあるのかな。伝法院は浅草で伝通院は小石川、そして伝習館は信州の温泉旅館。個人的な感覚として、漢字三文字というシンプルな名前は、横文字や形容詞を混ぜた名称より、はるかに印象に残りやすく、好感が持てます。


 
温泉地のエリアとしては崖上の角間温泉のひとつに含まれるようですが、集落外れの緑豊かな川沿いに位置しており、実質的には一軒宿と捉えても良さそうなロケーションです。目の前を流れる角間川から上流を眺めると、志賀高原の稜線が雲をたなびかせながら重畳していました。実に長閑な景色です。胸いっぱいに空気を吸い込もうとすると、駐車場の奥の小屋から何やら動物の啼き声が聞こえてくるぞ…。


 
小屋ではヤギやニワトリが飼われていたのでした。なんとも牧歌的だこと。天気の良いには外に出てくるようですが、この日は生憎の空模様でしたので、小屋の中で雨宿り。


 
全面改築によって「とらや」時代の鄙びた雰囲気は一掃され、洋楽が流れる館内は現代風の瀟洒な佇まいです。玄関を入った正面には受付カウンターがあり、その右隣りに設置されている券売機で料金を支払います。旅館ですが日帰り入浴もウェルカムで、訪問時は若い女性スタッフの方が明るく対応してくださいました。
受付の右側には食堂や宿泊棟が、左側には休憩スペースや浴室が配置されており、窓に面した明るい休憩スペースにはマッサージチェアが2台置かれていました。ウッディーな脱衣室は、ややこぢんまりしていますが、手入れが行き届いて綺麗に維持されており、使い勝手は問題ありません(ロッカーは受付カウンターの隣に設置されています)。


 
浴室には木材と石材が多用され、大きな窓から外光が降り注いでいますが、室内照度は程々に抑えられおり、落ち着いた和の佇まいです。洗い場にはシャワー付きカランが5基並んでいます。
室内にはサウナがあるのですが、訪問時は使用停止中で、水風呂には蓋が閉められていました。


 

浴槽は目測で2.5m×3.5mの四角形。肩までしっかり浸かれる深めの造りで、入り心地良好です。底面は石敷きですが、縁には黒い御影石が用いられており、その表面は温泉成分の付着によってクリーム色に薄っすらとコーティングされていました。また部分的にそれが剥がれて鯖の体みたいな模様が出来上がっていました。日々温泉が流れることによってこのような模様が生まれるのでしょうから、今後どんな模様に成長するのか、ちょっと楽しみです。

湯船に張られたお湯は無色透明。体感で44℃前後というちょっと熱い湯加減でした。お湯は浴槽の隅にある湯口から注がれている他、槽内側面からも投入されており、縁の切り欠けから洗い場の床へ溢れ出ているのですが、投入量に対してオーバーフロー量が少ないので、完全な放流式であるか否か判別できません。


 
日本庭園風の露天風呂は、近隣の緑や遠望する志賀高原の山々を借景にしているのですが、周囲を竹垣模様のエクステリアで目隠しされているため、湯船に入っちゃうと景色を眺められません。でも高原からの風や周りの緑を感じながら湯浴みできますし、浴槽の手前側は屋根掛けされているので、雨の日でも露天に入れます。石造りの浴槽はおおよそ3.5m×7.5mで、スペースの関係により内湯側がやや欠けた形状です。外気の影響を受けるのか、熱めの内湯に対してこちらは入りやすい42℃前後に抑えられており、内湯同様、露天風呂もやや深めの造りなので、縁に体をもたれかからせることにより、どっしりと体を落ち着かせて入浴することができました。



露天風呂では岩積みの湯口からお湯が投入され、内湯側の切り欠けより排湯されています。内湯以上に投入量>排湯量の差が顕著であり、槽内で吸い込まれていると考えて間違いないでしょう。なお館内表示によれば加水加温循環消毒の無い掛け流しなんだそうですが、このような状況ですので、実際に湯使いについては判然としません(槽内吸い込みだからと言って、即座に循環だと判断するのは早計だと思います)。なおネット上では、熱湯状態の源泉を一旦プールし、冷ましてから浴槽へ供給しているという情報を目にしましたので、参考までにご紹介しておきます。

お湯は無色透明。ほんのり塩味を有し、芒硝の味や匂いも感じられます。また微かに硫黄臭らしき匂いも嗅ぎ取れました。塩味は本当にほんのりとしか感じられないのですが、たとえ味は薄くても食塩泉の面目躍如としたパワーはいかんなく発揮され、湯中ではツルスベ浴感がしっかり肌に伝わり、且つしっとり潤い、力強く温まって湯上がり後も発汗が続きました。
温泉マニアにはちょっと物足りない部分もあるかもしれませんが、一般客からは高評価が得られそうな、好印象の施設でした。


角間天狗の湯
ナトリウム-塩化物温泉 91.0℃ pH7.3 掘削自噴 溶存物質1799mg/kg 成分総計1816mg/kg
Na+:436.3mg(78.30mval%), Ca++:76.6mg(15.76mval%),
Cl-:674.3mg(77.94mval%), Br-:3.4mg, I-:0.7mg, HS-:1.0mg, SO4--:191.6mg(16.35mval%), HCO3-:76.3mg(5.12mval%),
H2SiO3:195.5mg, HBO2:89.6mg,CO2:16.5mg, H2S:0.6mg,
館内表示によれば加水加温循環消毒なし

長野県下高井郡山ノ内町佐野2592-22  地図
0269-31-3454
ホームページ

日帰り入浴時間
平日11:00~20:00(受付19:30まで)、休前日および休日11:00~15:00(受付14:30まで)
不定休
650円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★


コメント
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