昨年秋に十和田大湯温泉を訪れた際には、リーズナブルに宿泊できる「元ノ湯旅館」で一泊お世話になりました。こちらのお宿は温泉街の西側に位置しており、以前拙ブログで取り上げた「川原の湯共同浴場」のすぐ目の前です。
路地の向かいにはお湯汲み場がありました。当地の生活と温泉は切っても切り離せない関係にあることが窺えます。
館内の一角では、まるでえのき茸を栽培しているかのように、似通ったサイズのこけしが密集していました。これだけ隙間なく大量のこけしが並んでいると、そのうちの数個は、みんなが寝静まった頃に夜な夜な動いていたりして・・・。
またラウンジではコーヒーのサービスも行われており、私は朝食後に一杯いただきました。
●客室など
こちらが今回通された客室です。6畳の和室でかなり古いつくりですが、テレビやお茶のセット、冷蔵庫、洗面台などひと通りの備品が揃っており、使い勝手に問題ありません。
2食付きで6,000円(税別)という破格なプランにもかかわらず、夕食はお部屋出しで提供されました。しかも上画像をご覧のように、鍋(豚とキャベツの味噌鍋)をメインに焼きサバ、お刺身、煮物など品数も多く、家庭的で豪華さは無いものの、十分に満足のいく食事をいただくことができました。
朝食は1階の大広間でいただきました。いかにも東北らしい味付けで、白いご飯がよく進みました。
●浴場
胃袋を満たした後は温泉のお風呂へとまいりましょう。お風呂は男女別の内湯のみで、露天はありません。脱衣室内には、自噴源泉であることや湯使いに関する事項などが表示されていました。
大きな窓の下に浴槽が据えられた浴室は、窓から降り注ぐ光のおかげで明るい入浴環境が生み出されており、足元に敷き詰められた感触良好の十和田石も、快適な入浴に一役買っていました。浴室自体は四角形に近い空間なのですが、アクセントをもたらすためか、浴槽はL字のような形状をしており、洗い場も浴槽と点対称になるようにL字型に配置されており、L字同士が向かい合わせに組むようなレイアウトになっていました。
洗い場は出入口を挟んで左右に設けられ、計8基のシャワー付きカランが取り付けられていました。館内表示によれば、カランから出てくるお湯は、温泉と水道の混合なんだそうです。
浴槽の縁は御影石で浴槽内は水色タイル貼りです。後述する湯口から注がれたお湯は無色透明で綺麗に澄んでおり、湯船において絶妙な湯加減となっていました。湯船へ入りしなこそ脛にピリッとした弱い刺激が走りますが、一旦肩まで浸かると、肌の皺一本一本に染み入ってくるようなしっとり感に覆われ、且つツルすべの滑らかな浴感も伝わり、その気持ちよさゆえ、いつまでも湯浴みしていたくなりました。共同浴場のように不特定多数のお客さんが利用するわけではないので、お湯が綺麗な状態を保っているのも嬉しい点です。
湯船を満たしたお湯は、窓の下に設けられた溝へ落ちて排水されていました。かけ流されているお湯の量も多く、私が湯船に入ったら排水が追いつかず、排水口がギュルギュルと音を立てて溢れんばかりの状態になっていました。なお館内表示によれば、加水加温循環ろ過は行っていないのですが、塩素系薬剤による消毒は行われているとのこと。でも塩素らしい臭いは特に感じられませんでした。
湯船の最奥にある石組みの湯口からは、激熱のお湯が注がれており、その流路の左右両端は温泉成分の白い析出が線状にこびりついていました。館内表示によればこの温泉の泉質は弱アルカリ性の単純泉とのことですが、湯口の上に置かれているコップで飲泉していますと、薄い塩味とともに弱い芒硝感が得られ、特に湯口では芒硝らしさが明瞭に感じられました。加水していないそうですから、源泉の濃さをそのまま味わえるわけですね。
窓の外にはシャッターを閉めた小屋が建っており、そこには「ポンプ室」と記されていました。こちらのお宿では自噴する自家源泉を所有しているんだそうでして、62〜68℃で湧き出たお湯をポンプで屋上まで上げ、そこで少し冷ましてから浴槽へ供給しているんだとか。窓外のポンプ室は、まさに自噴源泉を上げるための設備なのであり、水で薄めることなくお湯をお客さんに提供しようとするお宿の誠実な姿勢の表れなのですね。
鮮度の良いお湯がしっかりと楽しめる実力派の旅館でした。
温泉分析書見当たらず
秋田県鹿角市十和田大湯字川原の湯43-1 地図
0186-37-2031
日帰り入浴時間要確認
350円
シャンプー類・ドライヤーあり
私の好み:★★