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前回記事で長万部から特急列車に乗った私は、終点の函館で下車し、路面電車に乗り換えて湯の川温泉で軽く湯巡りをすることにしました。まず1軒目は「旅館新松」。交差点の角に位置しており、結構な大きさを有するお宿です。
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深紅のカーペットが敷かれたロビーを訪うと、館内は何やら慌ただしい様子。どうやら団体客が宴会をしており、スタッフさんはその対応に追われていたようでした。受付のカウンターに目をやると、日帰り入浴専用の料金受け皿を発見。そこで、釣り銭が無いようにセルフで湯銭をここに置いて、入館させていただくことにしました。このようなものが用意されているということは、地元の方から銭湯のような愛され方もされているのでしょうね。
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案内表示に従って廊下を進み、共用洗面台を通り過ぎた先に紺と紅の暖簾がかかっていました。
脱衣室ではお琴の音楽がスピーカーから流れており、日本旅館らしい和の風情を醸し出しているのですが・・・
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浴室は実用的な造りで、旅館というより公衆浴場のような雰囲気です。でも室内空間は広いので、のびのび湯浴みできるはず。そんなお風呂には大きな浴槽がひとつ設けられ、洗い場にはカランが11基並んでいました(うち6基はシャワー付き)。
タイル張りの浴槽はおよそ6m×3m弱の四角形で、ゆとりのあるサイズですから、団体で利用しても楽に足を伸ばして悠々と入浴できるかと思います。この浴槽で目を引くのが、縁に分厚くこびりついている温泉成分。タイルの色がわからなくなるほどベージュ色にコーティングされているほか、浴槽側面の湯面ライン上にも庇のような出っ張りが形成されていたり、オーバーフローが流れる床のタイルも赤茶色に染まっていたりと、お湯の濃さがビジュアル的に伝わってきました。
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獅子の湯口も元の容貌が隠れてしまうほどの析出で覆われており、そんな口からお湯がドバドバと供給されていました。お湯は弱いベージュ色に濁っており、湯中では明るい赤茶色の湯の花が舞っています。お湯を口に含むと、塩味、弱石膏感、ほのかな磯の香り、そして石灰を思わせる粉っぽい感覚が得られました。
湯口から吐出される時点でお湯は既に適温に近く、湯船でも万人受けする湯加減が維持されていました。函館エリアの温泉浴場は熱いお風呂が多いのですが、そんな土地柄にあって、適温の大浴場は貴重な存在かもしれません。湯使いに関する表示が無いので断定的なことはわかりませんが、適温にするため加水されている可能性はあるにせよ、循環などは行われていない放流式の湯使いかと推測されます。適温ながらも食塩泉らしい力強い温まりが得られ、湯上がりにはポカポカが持続して冬の函館でも寒さを気にせず過ごせました。
温泉分析書見当たらず(ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉)
函館市電・湯の川電停より徒歩5分(約400m)
北海道函館市湯川町2-12-16 地図
0138-57-5558
ホームページ
日帰り入浴は夜8時まで
400円
シャンプー類・ドライヤーあり、貴重品は自己管理
私の好み:★★