大沢温泉の「大沢荘山の家露天風呂」は、かなり古いガイドブックにも載っているほど、伊豆にある日帰り入浴専門施設の中でも古株に属する人気の露天風呂です。私も運転免許を取得したての学生時代など、いままで何度か訪れていますが、温泉をマニアックに巡るようになってからは疎遠でしたので、久しぶりに再訪してみることにしました。
まずは施設の目の前を通り過ぎ駐車場に車をとめてから、道を歩いて戻り、川に架かる木造の橋を渡って受付棟へと向かいます。
ちなみに、橋の目の前に立つバス停は、その名もズバリ「野天風呂」。松崎から1日5便運行されるようですが、本数や運行時間を考えると、旅行者には使いにくいかもしれません。路線バスでアクセスする場合は、伊豆急下田駅から堂ヶ島へ向かう1時間に1本程度運転されているバスに乗って「大沢温泉口」で下車すれば、そこから徒歩12分で到達することができます。
駐車場は橋から100〜200メートルほど離れたところにあるのですが、その片隅には素泊まり専用の宿泊施設「湯治処」が設けられています。名前こそ湯治処ですが、一人一泊の利用も可能なんだとか(大人1泊4000円〜)。伊豆は宿泊相場が高いイメージがありますから、リーズナブルに泊まりたい場合には良いかもしれませんね。
駐車場の前には配湯管が川を渡っていました。「山の家」を運営する企業の名前が記載されていましたから、露天風呂と何らかの関係があるのでしょうね。
さて休憩用座敷がある受付でお婆ちゃんに料金を納め、脱衣小屋へと移動しましょう。小屋の内部は棚にカゴが備え付けられているだけ。至って質素です。
お風呂は露天風呂だけの一本勝負。内湯はありません。またお風呂には屋根もありません。実に潔い造りです。かつてこの露天風呂は男女混浴だったそうですが、少なくとも私が学生だった頃(20年ほど前)には既に仕切りが設けられ、その後今日に至るまで男女別浴です。岩風呂の大きさはおおよそ3m×4m。やや深い造りなので、入り応えがあります。見上げると深い緑の木々、そして後背ではせせらぎの音。西伊豆の自然をたっぷりと感じられるのんびりとした環境です。また床にはご当地産と思しき伊豆青石が敷き詰められており、歩くたびに足裏から伝わってくる感触が良好です。
この露天風呂で最も象徴的なのは、仕切りの下からボコッボコッと上がってくる大量のお湯でしょう。足元自噴ではないようですが、新鮮な源泉100%のお湯が勢い良く噴き上がってくる様には誰しも目を奪われるはず。湯量が豊富な温泉だからこそできる、実に魅力的な演出です。なお浴槽から溢れ出たお湯は、まるで川のように太い流れを為してお風呂の外へ去っていました。
露天浴槽がひとつあるだけのシンプルなお風呂ですから、洗い場としての立派な設備は無いのですが、その代わり水だけが出るシャワーがひとつ設置されているほか、掛け湯や上がり湯用として青い縁の大きな鉢にお湯が注がれています。この鉢のお湯も温泉。注ぎ口には硫酸塩の白い結晶がこびりついていました。
さてこちらのお湯は無色透明で、清らかに澄みきっており、しかも大量投入の完全掛け流しであるため、お湯のコンディションは抜群です。トロミがあるお湯に浸かると、ツルスベと同時に硫酸塩泉的な引っかかりも一緒に肌へ伝わってきます。お湯を味見してみますと石膏の甘みと少々の芒硝味が口の中に広がり、芒硝由来と思しき匂いが香ってきます。私が訪れた時には43℃という若干熱めの湯加減になっており、そのためか一般的な日帰り温泉入浴施設に比べてお客さんの回転が早かったようでしたが、おかげさまで独り占めできる時間帯が長く、じっくりゆっくり過ごすことができました。特にこの日は春のうららかな陽気で、山の新緑がとても美しく、川のせせらぎと山の自然美に抱かれながら露天風呂に浸かることで、より一層心身を癒すことができました。
大沢温泉大沢8号
カルシウム・ナトリウム-硫酸塩温泉 46.7℃ pH8.4 成分総計1.27g/kg
Na+:153mg, Ca++:227mg,
Cl-:20.8mg, SO4--:819.7mg,
H2SiO3:32.5mg,
(平成21年8月24日)
加温加水循環消毒なし
伊豆急下田駅から東海バスの堂ヶ島行で「大沢温泉口」下車、徒歩12分
静岡県賀茂郡松崎町大沢川之本445 地図
0558-43-0031
5月〜8月→8:00〜21:00、9月〜4月→9:00〜21:00 年中無休
500円
ロッカーあり、他備品類なし
私の好み:★★★