温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

ルルラン温泉 テレーノ気仙 前編(客室・食事)

2014年03月23日 | 北海道
 
標茶での宿泊は「ホテル テレーノ気仙」で一泊お世話になることにしました。



日没後にチェックインしたのですが、フロントは入浴利用のお客さんで賑わっており、ロビーも湯上がり後のお客さんがゆっくり寛いでいらっしゃいました。そんな中でフレンドリーなフロントのお姉さんは、手際よくチェックインの手続きを進めてくれました。



こちらのお宿は明治中期に「気仙旅館」として開業した老舗なんだそうでして、フロントのそばには以前の宿で使われていた銘板や備品、そしてかつての写真などが展示されています。


 
何枚か展示されている写真のうち最も古いのは、明治20年頃に撮影された標茶の船着場の様子です(画像左or上)。この写真が撮影された頃に気仙旅館も創業したんだそうでして、釧路と標茶を結ぶ川船は、昭和2年の釧網線開通まで当地にとっては唯一の物流ルートであり、標茶町によれば「旅客を主とするは発動機船、積荷を主とする引き舟の停泊所は開運橋あたりで、ここに建てられた気仙旅館は乗下船の切符を取り扱って、なかなかの繁盛でした」とのことです(出典 標茶町役場HP・「交通史」)。
画像右or下の写真にはキャプションが無いのですが、聯隊本部と書かれた建物の前で、騎乗した兵士が旭日旗か何かの旗を受け取ろうとしているので、おそらく出征する兵士を見送っているところではないかと思われます。


 
今回通された客室はツインの205号室です。こちらのホテルには和室と洋室の2タイプがあるんだそうですが、布団よりベッドの方が寝やすい私は洋室をチョイスしました。お部屋は広くて備品もひと通り揃っており、トイレや洗面台も完備されています。



また、冷蔵庫にはキンキンに冷えた水のボトルが用意されており、風呂あがりで乾いた喉を潤してくれました。こうしたささやかな心配りがありがたいです。



フロントの正面にはレストランがあり、宿泊者の食事もここでいただきます。客室がある2階と吹き抜けになっているんですね。


 
今回は2食付きのプランをお願いしたので、夕食・朝食ともにこのレストランでいただきました。画像左(上)は夕ごはん、画像右(下)は朝ごはんです。この晩の献立は、刺し身(サーモン・ホタテ・甘エビ)、キノコと里芋の煮物、野菜の天ぷら、鶏肉の鉄板焼、(画像に写っていませんが)カブの煮物、といったラインナップでして、特にカブは甘くて里芋はネットリ柔らかくて滅茶苦茶美味しかった! 一方、朝食は塩さば・玉子焼き・タラコ・長芋・納豆等といった内容でして、和風旅館らしい献立であるものの、ボリュームが多いので、その日の英気を養うには十二分でした。これだけのボリュームでありながら、1泊2食で7,500円なんですから、コストパフォーマンスは抜群です。


 
レストランの窓の向こうには清々しいガーデンが広がっており、私が朝食をいただいていた時には、朝霧の中で羊たちが草をはんでいました。

さて、ここまでで記事内容が嵩んでしまいましたので、肝心の温泉(お風呂)に関しては後編にてご紹介致します。

後編に続く
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標茶温泉 味幸園

2014年03月22日 | 北海道
 
前回および前々回取り上げた鶴居村の温泉から釧路湿原を北縁を走行して標茶へ向かう途中、再びタンチョウヅルに遭遇しました。今度は群れではなく親子連れでしたが、餌付けされているツルは人を見ても怖がらないようでして、この時は望遠を使わず、接近して親子連れを撮影することができました。飛ばずとも、ただそこにスッと立っているだけで十分に麗美ですね。


 
そのツル親子を撮影したところから程近いところにある標茶温泉「味幸園」で濃厚なモール泉を堪能してまいりました。こちらは温泉ファンからの評価が高く、施設名をググるとファン達によって多くのレポートが上梓されていることがわかります。以前は旅館として宿泊客を受け入れていましたが、現在は日帰り入浴のみの営業です。国道から800mほど西側に入ったちょっとわかりにくい場所にあるのですが、そのわかりにくさを払拭すべく、要所要所に看板が立っており、建物の屋根上には黄色いパトランプがグルグル回っていました。



周囲にはこれといった民家も見当たらず、こんなところで営業していて本当にお客さんは来るのだろうかと疑問を抱いておりましたが、私が訪れた夕方にはポツポツと車に乗って地元の老人が館内へと吸い込まれていきました。多少奥まった場所でも、お湯が良ければお客さんは利用してくれるんですね。


 
既に旅館業はやめていますから、カウンターに置かれた券売機は入浴券や基本的な入浴道具を販売するのみ。半分以上のボタンは使われていませんでした。館内にCWニコルのサインを発見。森は温かいけど、お湯は熱いよ。


 
脱衣室はシンプルな造りで、大きな棚と籠があるばかりですが、扇風機が用意されているので、湯上がりのクールダウンには重宝しました。


 
お風呂は男女別の内湯のみ。大小の浴槽が左右に分かれて据えられています。訪問時の浴室は湯気とモール泉の香りが朦々と篭っており、ちょっとしたミストサウナ状態でした。部屋の隅っこには公園にあるような水飲み用水栓が設けられており、入浴中の水分補給に役立ちます(でも水栓が古いので飲む気にはなれませんでしたが…)。余談ですが、入浴中には水分補給が欠かせないにもかかわらず、日本のお風呂って、水分補給できる設備を備えたところが少ないような気がします。


 
洗い場にはシャワー付き混合水栓が5基並んでおり、お湯をコックを開けると源泉が出てきました。源泉そのまんまのシャワーが浴びれるんですから、モール泉には目がない私にとっては天国も同然です。


 
浴槽には大小の2つがあり、右側にある大浴槽は7~8人サイズ、獅子の湯口から源泉が吐出されており、浴槽縁の切り欠けから惜しげも無く溢れ出ています。この大浴槽には加水できる水栓が無いため、源泉そのまんまの44~45℃という熱い湯加減となっていました。


 
一方、浴室の左側にある小浴槽は2~3人サイズで、同じく獅子の湯口から源泉が吐出されていますが、こちらには加水用の蛇口が設けられているため、水で薄めることが可能です。実際に先客のお爺さんは蛇口を全開にしてジャンジャン水で薄めていました。


 
コーヒー色のお湯は典型的なモール泉であり、芳醇な香りが室内を満たしています。もちろん湯使いは完全掛け流しです。お湯の色が濃いためか、床にはオーバーフローの流路がはっきりと残っています。湯口に置かれたコップで口に含んでみますと、タマゴ味・ほろ苦味・弱金気味がミックスして感じられ、タマゴ臭とアブラ臭を足して2で割ったような芳香とともに弱金気臭と何かが焦げたような匂いが混ぜこぜになって鼻へ抜けていきました。あまりに芳しい香りだったので、自分が飽きるまで延々と匂いを嗅ぎ続けたのですが、その様はほとんどジャンキーであり、仕舞いには匂いでラリってオーバードーズになってしまったのではないかと思うほど、前後不覚のクラクラ状態に陥ってしまいました。匂いのみならず浴感も魅惑的でして、湯船につま先をつけただけでスルリとした感触がわかり、我が身を肩まで湯船に沈めると、ヌル・ツル・スベの3拍子が揃ったモール泉らしい極上の浴感に包まれました。なお湯面には泡が漂っていましたが、室内が暗かったため、肌への気泡の付着は確認できませんでした。

お湯が熱いのであまり長湯できませんが、逆上せてフラフラになっても、湯船から出るのを躊躇ってしまうほど魅惑的な素晴らしい浴感であり、湯船の中のみならず、湯船から上がっても肌のヌルスベ感が残っていたので、嬉しくなって何度も自分の腕を擦ってしまいました。実に効果の高い美人の湯であります。また、脱衣室に上がった私の体は相当火照っていたので、上述の扇風機に助けられたのですが、これまたこちらのお湯の効果なのか、粗熱の抜けが早く、変なベタツキもなく、程よい爽快感と温まりが共存して、なんとも言えない軽やかな感覚に満たされました。本当に素晴らしいお湯ですね。十勝平野に点在するモール泉も良泉揃いですが、濃さや浴感など、お湯の持つ個性で較べると、私はこの標茶温泉をはじめとした釧路湿原周辺の温泉に軍配を上げたくなります。


アルカリ性単純温泉 45.1℃ pH9.2 湧出量未記載(自噴) 溶存物質0.770g/kg 成分総計0.770g/kg
Na+:195.7mg(96.38mval%), NH4+:2.2mg,
Cl-:165.5mg(51.66mval%), OH-:0.3mg, HS-:0.2mg, HCO3-:82.4mg(14.93mval%), CO3--:60.7mg(22.35mval%), BO2-:10.8mg,
H2SiO3:227.1mg,

北海道川上郡標茶町下オソツベツ628
015-485-2482

10:00~22:00(受付21:00まで) 第3木曜定休
400円
備品類なし

私の好み:★★★
コメント (6)
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鶴居温泉 グリーンパークつるい

2014年03月21日 | 北海道
 
前回記事の「ホテルTAITO」は鶴居村温泉でしたが、今回取り上げる「グリーンパークつるい」は鶴居温泉です。両者の間は1km程度しか離れていないにもかかわらず、温泉名に「村」の一文字があるかないかで、泉質のみならず建物の雰囲気までがかなり違うのです。いかにも昭和の大規模公共宿泊施設らしい佇まいを見せる「グリーンパークつるい」は、東京ローカルの表現で恐縮ですが、「ホテルTAITO」が代官山や自由が丘(東急沿線)のイメージだとすれば、「グリーンパークつるい」は東武か京成沿線を思わせる庶民的なイメージであり、実際に私が訪問した時の客層も、前者は若年~中年層が多かったのに対し、後者は老人客が目立っていました。
フロント前には日帰り入浴客専用の券売機が用意されているので、それで料金を支払い、券をフロントに手渡します。フロントではスタンプカードを発行しており、入浴のみの利用も積極的に受け入れているようです。


 
ロビーの左側且つ食堂の右側が大浴場の入口です。館内には宿泊客専用の浴室もあるようですが、日帰り入浴の私は利用できるはずもなく、素直に大浴場へと向かいました。



脱衣室は広くて明るいものの、昭和っぽい古さは否めず、実用本位で飾り気もありません。この室内からは青森県の温泉銭湯に近い空気感を覚えました。


 

浴室は「大浴場」の名に恥じない、天井が高くて広々としている立派なお風呂です。大きなガラス窓からは外光がたっぷり降り注がれるので、室内は明るく開放的です。また腰掛けや入浴道具置場などを用意して、実用的な配慮もなされています。洗い場は2箇所に分かれて配置されており、計16基のシャワー付き混合水栓が取り付けられていました。



大浴場にサウナは欠かせませんね。もちろん水風呂も用意されています。


 

大きな窓の下には、グランドピアノの蓋を縦に細長く伸ばしたような形状の内湯主浴槽が据えられており、隅の湯口からは源泉100%のお湯が完全掛け流しで注がれていました。湯口周りや湯面では気泡の塊が目立っています。



露天風呂の出入口付近には泡風呂もあり、こちらにも温泉のお湯が張られていました。


 
露天風呂は日本庭園風の岩風呂で、湯船自体は建物に沿って細長く、部分的に屋根掛けされており、石灯籠が立てられていたり、飾りのような小さな竹垣があったり、うだつのように塀からちょこんと突き出ている部分に瓦が載せられていたりと、和風な雰囲気を醸し出そうとする努力の片鱗が垣間見えますが、目隠しの塀が浴槽に迫っているため、湯船に浸かっちゃうと周りの景色はほとんど眺められません。また庭に植えられている植物も枝が伸び放題だったり、あるいは雑草が生えっぱなしだったりと、お手入れが疎かになっているのではと疑いたくなるような箇所もあって、ちょっと残念です。でも、このいまひとつな感じも、昭和のハコモノっぽい外観や館内風景を見ていると、なぜか違和感を覚えなくなってしまうのですから不思議なものです。


 
内湯の主浴槽では湯面に浮く気泡が目立っていましたが、露天風呂ではそれがより顕著に現れており、就中、湯口の中は洗剤が溶けているんじゃないかと勘違いしてしまいそうなほど、大量の泡が立って盛り上がっていました。そしてその泡が湯船へと落ち、湯口周辺を中心にした湯面には大量のアワアワが漂っていました。これって、いわゆるモール泉で見られるような泡や炭酸的な気泡と異なり、粘性を有する液体(つまりここの温泉)に衝撃が加えられる(この場合は配管から湯船へ落とされる)ことによって泡立ってしまっているのではないかと想像されます。施設側によればこの温泉はモール泉であると説明されていますが、実際に私が確認してみたところ、見た目は薄い黄色の透明で、辛くはないけどしょっぱい味がはっきりしており、それに出汁味や弱金気味、そしてほろ苦みが感じられました。そしてアブラ臭とモール臭を足して2で割ったような匂いがお湯から漂っていました。たしかにモール泉っぽい感じを有していますが、どちらかといえばモール泉の要素を兼ね備えた食塩泉と言うべき質感があり、湯船に浸かった時に肌に得られるツルスベ浴感も、モールというよりは正に食塩泉のそれでした。なお上述のように湯面をはじめとしてアワアワが大変目立っていますが、意外にも肌への泡付きは弱く、若干付着する程度でした。更には、湯上りには肌がつっぱり、多少のべたつきも残りましたので、湯上りの感覚はモールではなく完全に食塩泉のものであり、私個人としては津軽平野の食塩泉(板柳鷹の羽など)を思い出さずにはいられませんでした。なお露天風呂も内湯同様に完全掛け流しの湯使いとなっています。

当記事の冒頭では、鶴居村温泉「ホテルTAITO」とは1kmしか離れていないのに、雰囲気も泉質も異なると申し上げましたが、鶴居村温泉は典型的且つ濃厚なモール泉であるのに対し、こちらのお湯は食塩泉としての性格が強いんですね。両者とも日帰り入浴料金は同じですから、お客さんの好みに応じて使い分けできちゃうわけです。鶴居村の温泉って面白いですね。


ナトリウム-塩化物温泉 45.9℃ pH8.5 湧出量未記載(動力揚湯) 溶存物質4.629g/kg 成分総計4.630g/kg
Na+:1643mg(93.67mval%), Ca++:67.2mg(4.39mval%),
Cl-:2499mg(95.41mval%), HCO3-:127.9mg(2.84mval%), CO3--:24.1mg(1.08mval%),
H2SiO3:163.4mg, HBO2:33.7mg, CO2:0.7mg,

北海道阿寒郡鶴居村鶴居北1-5  地図
0154-64-2221
ホームページ

日帰り入浴10:00~22:00
500円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5
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鶴居村温泉 鶴居ノーザンビレッジ ホテルTAITO

2014年03月20日 | 北海道
 
釧路湿原北部に位置する鶴居村は、その名の通りに特別天然記念物であるタンチョウヅルの生息繁殖地でして、私が訪れた2013年晩秋の某日も、村内各地の畑ではツルたちが群れをなして餌を啄んでいました。本州で生活する私にとってタンチョウヅルは極めて珍しく、このような群れと遭遇できるのは幸運なことなのかとおもいきや、車を走らせるとあちこちでこの程度の群れに出会えるので、次第に有り難みが薄れていき・・・



しかも秀麗な姿で飛行する姿を想像していたら、上画像のように、呑気に道路を闊歩するツルもいて、私が近づいても逃げる素振りを見せません。絶滅が危惧される野生動物なんだから、もうちょっと人間を警戒してほしいものですが、ツルからはそうした緊張感がちっとも微塵も伝わってきません。センシティブな野生動物をやっとのことで観察できてこそ希少価値を感じられるのですが、こうして緊張感なく安々と出会えてしまうと、何だか拍子抜けしてしまいますね。もっとオイラをジラしてくれなきゃ有り難みが薄れるよぉ…。熱心な保護活動によって近年は生息数が増えているそうですから、私のみならず当地を訪れる観光客は当たり前のようにツルと出会えるのでしょうし、いわんや当地に暮らす村民にとってはツルなんてちっとも珍しくないのでしょう。けだし、都会人がヒヨドリやムクドリを見るような感覚なのかもしれません。いや、特別天然記念物と都会の野鳥を一緒にしては、ツルに失礼か。


 

さて、こんなツル達の楽園である鶴居村には濃いモール泉が湧いていますので、モール泉が大好きな私にとっても楽園同然の場所であります。今回は村内にいくつか存在する温泉施設のうち、「鶴居ノーザンビレッジ ホテルTAITO」で立ち寄り入浴してまいりました。村の中心部に位置しており、欧風の瀟洒な外観が印象的です。



ホテルのオーナーさんはプロカメラマンなんだそうでして、館内には美しいタンチョウの写真がたくさん飾られていました。近年はカメラの性能が向上して、下手な素人でも綺麗に撮れるようになったとはいえ、プロの作品には美しさ・構図・迫力、そのどれをとっても全く敵いません。足元にも及びません。カメラマンの才能には憧憬の念を強く抱かざるを得ませんね。
フロントで入浴料金を直接支払い、小さな物販コーナーを通り過ぎた先にある浴室へと向かいます。


 
こちらのホテルは外観が瀟洒であるのみならず、館内のお手入れもとても良く行き届いており、居心地が良いんですよね。脱衣室も明るく清潔感がみなぎっており、ロッカーやドライヤーなどひと通りのものが備わっているので使い勝手もまずまずでした。



明るく広い内湯浴室は大きなガラス窓を斜辺とした三角形のような形状をしており、その窓に面して15人近く同時に入れそうな容量の主浴槽が据えられています。その主浴槽は、縁に御影石が用いられており、槽内はタイル貼りです。湯使いは完全掛け流しとなっており、三角形斜辺の中央に立つ柱に設けられた湯口より源泉が投入され、左右両端の排水口より排湯されていました。湯船では41~2℃という絶妙な湯加減が維持されており、その心地良い湯加減ゆえ、利用客の多くはこの湯船でじっくり長湯していらっしゃいました。室内にはモール泉の芳香が充満していましたので、その香りもお客さんを室内に引き止めるのに一役買っていたのかもしれません。
湯船の右側には洗い場が配置されており、シャワー付きのカランはオートストップ式で、お湯(真湯)のみが吐出される単水栓が9基並んでいます。この他、浴室入口傍には上がり湯用の小さな枡が設けられていたり、また室内左側にはサウナや水風呂があったりと、大きさや明るさのみならず、設備面でも多くのお客さんが満足できるような設計がなされていました。


 
続いて露天風呂ゾーンへ。周囲を塀で囲ってあるため、遠くの景色を眺めることはできませんが、並木の緑が清々しい塀の内側はガーデンのような雰囲気が作られており、余裕のある広さが確保されているため、閉塞感とは全く無縁であり、森の中の庭で寛いでいるような爽快な気分に包まれました。
壁に立てられた札には「露天風呂ははっ葉(ママ)くんや虫さんたちも大好きなのでときどき入りに来ます」という「手のひらを太陽に」的な世界観にも似たお知らせが記されているとともに、お湯は循環の無い天然温泉100%であるから「純生をグイっと一杯おやり下さい」と、まるで生ビールを飲むかの如くお湯を飲んでみてほしいというオーナーさんの呼びかけも記されていました。私がこの湯を飲んだことは言うまでもありません。


 
露天風呂ゾーンには岩風呂の主浴槽の他、このように一人サイズの樽風呂も用意されており、こちらにも混じりっけのない100%の温泉が注がれています。樽は本物の木で作られており、腐食による溶解を防ぐためか、縁には配管カバーが被せられていました。木の樋から落とされるお湯は後述するする主浴槽のお湯と同じなのですが、投入量が少ないためか、樽風呂の温度は40℃あるかないかという、ぬるめの設定になっていました、冬季には加温されるそうですから、この日はまだ加温されていなかったのでしょう。


 
露天風呂の主浴槽は岩風呂で、湯口から落とされるお湯は泡を伴っており、湯面にもその泡が広がっていました。美しい琥珀色のお湯は典型的なモール泉であり、立て札にあったオーナーさんの呼びかけに応じて湯口のお湯をグイっと飲んでみますと、タマゴ味や清涼感のあるほろ苦みが口腔内に広がり、(アブラ臭+タマゴ臭+天然ガス臭)÷3と表現したくなるモール泉らしい芳醇な匂いが鼻へと抜けていきました。


 
香りや味のみならず、浴感も非常に素晴らしく、お湯につま先をちょこっと入れただけでモール泉らしいツルスベ感がわかっちゃうほど、この手のお湯ならでは爽快な浴感がはっきりと肌に伝わってきます。また湯船の湯面を覆うほどの気泡は入浴中の私の肌にも付着し、全身泡だらけになりました。ヌルヌルを伴うツルスベ浴感は十勝川温泉などよりも強く、クレンジング効果も存分に発揮され、まさに美人の湯、湯上がりの爽快感も極上です。十勝平野に点在するモール泉と比較すると、こちらのお湯の色はやや赤みが強く、金気が弱いのですが、いわゆるモール的な匂いや味が強くて浴感も明瞭に現れているように感じ取れました。モール泉らしい特徴が濃く現れているのです。

外気の影響を受けるためか、露天風呂は内湯よりもぬるい41℃前後の温度でしたが、冬季には加温されるとのこと。尤も、この日のぬるめの湯加減は私が好む長湯仕様でありますから、濃いモール泉に体がふやけるまでじっくり入り続けさせてもらいました。というか、あまりに良いお湯すぎて、後ろ髪が引かれてしまい、湯船から出ることができなかったのです。


 
鶴居村ではチーズが名物のようですが・・・


 
湯上がりにはチーズではなく、ソフトクリームをいただきました。このソフトクリームが篦棒に美味い! 我が人生で3本の指に入るほどのうまさでした。建物は綺麗だし、お湯は最高、それでいて食欲までも満たしてくれるという、実にブリリアントなホテルなのでした。


ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉 43.5℃ pH9.0 400L/min(動力揚湯) 溶存物質1.149g/kg 成分総計1.149g/kg
Na+:375.7mg(97.73mval%),
Cl-:378.7mg(63.80mval%), HCO3-:221.9mg(21.74mval%), CO3--:59.2mg(11.77mval%),
H2SiO3:76.7mg, HBO2:12.0mg, CO2:0.0mg,
冬季は露天風呂のお湯を加温することがある

北海道阿寒郡鶴居村鶴居西1丁目5
0154-64-3111
ホームページ

日帰り入浴11:00(日曜祝日は10::00)~22:00(受付21:30まで)
500円
ロッカー(100円リターン式)・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
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十勝川温泉 富士ホテル

2014年03月18日 | 北海道
 
十勝平野に点在するモール泉の温泉の中でも、十勝川温泉はその代表格であり、いまや北海道屈指の知名度を誇る温泉郷と言っても過言ではありません。当地にはいくつもの旅館がありますが、今回は自家源泉のお湯を掛け流しで客に提供している「富士ホテル」で一泊お世話になることにしました。こちらのお宿は当地の一般的な他旅館と異なって、どちらかと言えばビジネスホテルに近くてカジュアルな感覚で利用できることも、今回選択した大きな理由の一つであります。


 
森林地帯にある欧風ロッジのような、ぬくもりが伝わる雰囲気のフロント。こちらでは日帰り入浴も積極的に受け入れているようでして、ロビーには専用の券売機も設置されていました。


 
フロントやロビーまわりは小洒落ていながら落ち着きのある佇まいも見せており、エントランスを入って左手にあるこのオブジェの裏手には、日帰り入浴客も使える休憩室が用意されていました。



十勝川温泉といえばモール泉ですね。温泉ファンには名の知れたこの名称も、一般の方には馴染みがありませんから、フロント前では実際の亜炭を展示しながら、モール泉についての説明がなされていました。


 

こちらは実際に私が泊まった客室です。一般的なビジネスホテルの客室とほぼ同等の広さの和室には、既に布団が敷かれており、すぐさま寝転べる状態になっていました(私個人としては嬉しい!)。清掃が行き届いて綺麗な室内にはひと通りの設備が備わっており、洗面台やトイレ(ウォシュレット)も完備。ただし、お風呂やシャワーはありませんので、大浴場を使うことになります。



お部屋で浴衣に着替え、部屋のタオルを小脇に抱えて、1階の浴室へ。


 
手入れが行き届いて綺麗な脱衣室。使い勝手もまずまずです。室内にはモール泉についての説明プレートが掲示されていました。文面はフロント前に展示されていた亜炭のものと同じですが、モール泉に関して、その文中にある「日本ではこの十勝川温泉のみで、海外ではドイツ南西部にしかない」という説明は、かなり昔に唱えられていた古い説であり、今では日本国内だけでもかなりの数のモール泉が存在しております。


 
お風呂は男女別の内湯のみ。浴室に入った瞬間、モール泉の芳しい匂いが香ってきました。タイルが多用されている浴室には、日中なら照明を点灯させなくても十分明るい室内環境が維持できるほど、大きな窓から陽光が降り注いでいます。室内には窓の下にお宿ご自慢の自家源泉モール泉を湛えた主浴槽が据えられている他、壁に沿って洗い場が配置され、シャワー付き混合水栓が7基取り付けられていました(シャワーのお湯は真湯です)。



浴室にはサウナや水風呂も設けられています。


 
タイル貼りの浴槽には湯口から絶えず紅茶色を帯びたモール泉が注がれており、浴槽の縁から惜しげも無くオーバーフローして洗い場へと流下しています。十勝川温泉ではお湯の循環装置を稼働させているお宿が多いのですが、こちらのホテルでは当地では珍しく完全掛け流しとなっており、何の手も加えられていない源泉そのままのお湯を堪能することができるんですね。モール泉が大好きな私にとってはたまらないお風呂です。

湯口のお湯を口に含んでみますと、明瞭なモール臭の他、フンワリとしたタマゴ臭や弱金気臭が鼻孔へと抜け、また弱タマゴ味や金気味(非鉄系の新鮮金気がはっきりと)、そして清涼感のあるほろ苦みが感じられました。入浴中の肌にはうっすらと気泡が付着し、モール泉らしいツルツルスベスベな浴感を思う存分楽しむことができました。その気持ち良い浴感ゆえ、一旦湯船に浸かると、浴感の虜になってしまい、湯船から出ようにも出られなくなってしまうほどです。またよく温まるのに、湯上がりは無駄な熱の篭りがなく、粗熱がスッと抜けて爽快感に包まれました。完全掛け流しのモール泉は本当に素晴らしいですね。

施設の雰囲気は良く、館内も綺麗であり、しかもお湯も質も素晴らしい。それでいてリーズナブル。実に利用価値の高いホテルでした。あえて要望を申し上げれば、私個人としては客室に禁煙室の設定がほしいところです。


富士ホテル源泉
単純温泉 43.1℃ pH7.7 60L/min(動力揚湯) 溶存物質0.655g/kg 成分総計0.662g/kg
Na+:128.1mg(93.46mval%),
Cl-:19.5mg(8.59mval%), HCO3-:350.6mg(89.84mval%),
H2SiO3:141.2mg, CO2:7.3mg, 腐植質2.1mg,

帯広駅より十勝バスの十勝川温泉行で「富士ホテル」バス停下車すぐ
北海道河東郡音更町十勝川温泉南14丁目1
0155-46-2201
ホームページ

日帰り入浴13:00~22:00
300円
ロッカー(貴重品用)・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
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