紅蓮(ぐれん)のポケット

子どもの本の作家・三輪裕子のふつうの毎日
2015年夏。三宅島で農業を始め、東京と行ったり、来たりの生活になる

不思議な出会い

2004-10-01 12:49:17 | 15・心に残ること
私は東京近郊のマンションに住んでいる。130世帯くらいの人が暮らしているだろうか。ワンルームマンションの棟もあって、そこには、20人くらいの、学生とか勤め人、単身赴任の人と思われる人が住んでいる。

よくマンションは、隣りに住んでいても顔も見たことがない、というような話しを聞く。が、そんなこともなく、私は生協に入っていることもあって、知り合いも多い。
でも、ほとんど知っている人がいないのが、ワンルームマンションに住んでいる人だ。たいてい、朝早く出かけていき、夜帰ってくるので、私が外をうろついている時と、時間帯がずれるのである。

私は、マンション内や敷地内で人に会うと、全然知らない人でも、あいさつするようにしている。ワンルームマンションの人にも、あいさつをする。迷惑そうな顔で見られることもあるし、聞こえなかったふりをされることもある。
その中に一人だけ、会うたびに、とても気持ちよくあいさつを返してくれる青年がいた。会うたびといっても、2-3ヶ月に一度会うかどうかというところだ。

その青年と、あっと驚くような場所で出会った。
穂高に登った時だ。梯子やくさりの緊張した登りがほぼ終わり、紀美子平という所にたどり着いた。奥穂からきた人も、岳沢から登ってきた人も、緊張して歩いてきた後に、ほっと休憩できる場所だ。10人くらいの人がいた。
そこで休んでいた時に、奥穂からの稜線をたどって緊張した顔でやってきたのが、その青年だった。

私はあれっと思って、「こんにちは」といった。青年はすぐには、私だと気づかなかったようだが、やがて、気づいて笑った。そこに一緒にいたのは、数分だったが、こんなに大変な山に行くのは、1年に1度くらいだということ、いつもは近間の山に登っていることなどを話してくれた。話しをしたのは初めてだった。
そして、私は山の仲間と奥穂に向かい、その青年は、友だち2人と前穂に向かっていった。

私は、マンションでその青年に会ったら、あれからどんな山に登ったか聞こうと楽しみにしている。が、穂高から帰ってきて1ヶ月たつが、また1度も顔を見かけていない。同じマンションに住んでいても、めったに会うことなどないのである。

anikobeさんのカフェテラス 「下りゴンドラ・一人旅の青年」 を読んで、この時のことを思い出した。(TBしました)

(写真は、紀美子平の後、奥穂まであと少しという所・喜多村さん撮影)