紅蓮(ぐれん)のポケット

子どもの本の作家・三輪裕子のふつうの毎日
2015年夏。三宅島で農業を始め、東京と行ったり、来たりの生活になる

あの時に見た多摩川

2004-10-19 14:46:27 | 2・仕事の周辺
1999年、「最後の夏休み」を書き始めた時のことは、よく覚えている。その年の2月、父は重い感染症にかかり、入院した。痴呆症があったので、24時間付き添ってくださいと病院の人からいわれた。それが、私たち姉妹の介護生活の始まりだった。
3週間で、私も姉も疲れ切り、私はまっすぐに歩けなくなった。まっすぐに歩いているつもりなのに、気がつくと、塀の方に寄っていってしまうのである。倒れる寸前だった。

這うようにして、高井戸のY病院に、転院のお願いにいった。その病院は24時間付き添わなくてもいいと、中学の友人の久保島氏と末岡氏から聞いていたのだ。そして、その友人のおかげで、転院させてもらうことができた。
それからも、病院通いは続いたが、倒れそうなほど疲れることはなかった。でも、本は書けなかった。仕事をしようと思っても、取材にゆく余裕がなかったのだ。

そんなある日、友達から電話がかかった。「狛江で花の展覧会を開いているから見に来てよ。」「いつ?」と聞くと、「今日、たった今。」という。断る理由を見つける暇もない急な話に、私は久しぶりに病院以外の所に出かけた。
近道なので、多摩川沿いに行こうと、自転車を引いて、土手を上がった。そのとたん、川面を渡る風とともに、多摩川の穏やかな流れに、迎えられた。なつかしい人に会ったような、あたたかな気持ちになった。
その時、私は気がついたのだ。こんなに好きな場所が近くにあったんじゃないのと。その瞬間、多摩川を書こうと決心した。

その時個展に誘ってくれたのが真蘭さんです。
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