経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

スウェーデンよ お前もか

2018-09-13 06:52:50 | ヨーロッパ
◇ 移民反対の極右が第3党に = スウェーデンでは9日、総選挙が実施された。ロベーン首相の率いる社会民主労働党は12議席を減らしたが、かろうじて第1党を維持。野党の穏健党も14議席を失った。こうしたなかで議席を13伸ばして第3党となったのは、移民反対を掲げた極右の民主党。スウェーデン国内ではどんな連立内閣が誕生するかに関心が集まっているが、EU域内では移民反対の勢力伸長に警戒を強めている。

北欧スウェーデンといえば、高福祉・高負担で有名な国。税金は高いが、教育や医療はほぼ無償だ。国民は長い間この高福祉に満足し、世界でも政治的な不満が最も少ない国だと考えられてきた。ところが15年には16万3000人の難民が流入。国内の治安が急速に悪化した。ことしになってからも、銃撃事件や放火が相次いでいる。

こうした状況のなかで台頭したのが、ネオナチの流れを汲む極右の民主党。選挙戦ではほとんど「移民排斥」だけを訴えて、得票を伸ばしている。現在のところ、社会民主労働党にしても穏健党にしても、この極右政党と連立を組む気は全くない。したがってネオナチの幹部が入閣する可能性はないが、議会での発言力は確実に増大する。

ヨーロッパではこのところ、選挙のたびに「移民反対の政党」が票を伸ばしている。ドイツ、フランス、イタリア、オーストリア、ハンガリーなどが、その好例だ。EU委員会は基本的な政策として「難民受け入れ」を掲げている。したがって「移民反対」の政党は、必然的に「反EU」にならざるをえない。EUの悩みは、スウェーデンの選挙でまた一段と深くなった。

       ≪12日の日経平均 = 下げ -60.08円≫

       ≪13日の日経平均は? 予想 = 上げ


米中貿易は 全面戦争へ (下)

2018-09-12 07:20:59 | 貿易
◇ 資本主義と社会主義の覇権争い = トランプ大統領が中国に対する関税引き上げの第3弾、第4弾を発動すると、これはもう全面戦争の状態になる。米中両国の経済が打撃を受けるだけではなく、日本企業などの経営にも大きな影響が及ぶだろう。たとえば中国で生産しアメリカへ輸出している企業は、生産拠点の移動を考える必要に迫られる。逆に中国での生産を増やし、アメリカ製品が撤退したあとの市場を獲得しようと考える企業も出てくるだろう。

米中両国はこうした事態に陥るのを避けようと、一時は次官級による協議も行った。しかし話し合いは進展せず、交渉は立ち消えになったようだ。アメリカ側の要求のうち、中国側が最も受け入れ難たかったのは、おそらく「製造2025」の抜本的な修正だったろう。これは中国政府が、25年までに10大製造業の高度化を達成するための政策だ。

欧米諸国や日本でも、この種の計画は造られる。しかし中国の場合は、政府が財政支援を含めて全面的に関与する形。アメリカはこれが不公平だと指摘して、修正を強く求めている。だが中国政府としては、共産党の最重要政策となっているから口出しされたくない。その根底には、社会主義なのだから政府が産業政策に関与するのは当たり前だという考え方が存在する。

ここまでくると、資本主義と社会主義の対立という構図が鮮明になってくる。さらに問題は、貿易や経済にとどまらないかもしれない。2つの大国の太平洋やインド洋、アフリカにおける覇権争いにまで発展する危険性もないではない。米中貿易戦争は、こうした恐ろしさを含んでいる。だから怖い。

       ≪11日の日経平均 = 上げ +291.60円≫

       ≪12日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

米中貿易は 全面戦争へ (上)

2018-09-11 06:41:42 | 貿易
◇ すべての中国製品に25%関税を上乗せ? = トランプ大統領は先週7日、記者団に対して「中国製品2670億ドル(30兆円)に25%の関税を上乗せする用意がある」と言明した。アメリカは7月に340億ドル、8月に160億ドルの中国製品に対して25%の関税を上乗せ。中国もこれに対抗して、アメリカ製品に同等の報復関税をかけている。さらにトランプ大統領は近く、中国製品2000億ドルに対する追加関税を発動する構え。これに第4弾の2670億ドルが追加されると、25%関税の対象額は合計5170億ドルに。中国からの輸入総額を上回る計算だ。

現状では、第1弾の340億ドルと第2弾の160億ドルが発動されただけ。しかし、その影響は貿易統計の面にじわっと表われてきた。アメリカ側の統計によると、7月の対中輸出は前年比8,2%の減少。乗用車は36%、大豆は16.2%減った。一方、中国側の統計では、8月の対米輸入は2.7%の増加。7月の11%増から大幅に縮小している。

第3弾の2000億ドル分については、先週6日に公聴会が終了したところ。その取りまとめが終わりしだい、トランプ大統領がゴー・サインを出す公算が大きい。対象となる品目も第1弾と第2弾では産業用の素材が中心だったが、第3弾では食品や日用品が多く含まれている。それだけ消費者物価への上昇圧力も強まるわけだ、

早ければ、第3弾は今週にも発動される可能性がある。発動されれば中国も対抗するだろう。ただ中国は、すべてのアメリカ製品に報復関税をかけても1300億ドル分にしかならない。そこでハリウッド映画の上映禁止、アメリカ向け団体旅行の停止、アメリカ製品の不買運動などの手段に訴えるのではないかという見方も広がっている。先週の株式市場は、こうした動きを警戒して軟調になった。

                                (続きは明日)
 
       ≪10日の日経平均 = 上げ +66.03円≫

       ≪11日の日経平均は? 予想 = 上げ


今週のポイント

2018-09-10 07:58:07 | 株価
2018-09-10-Mon CATEGORY: 政治・経済


◇ 霧のなかの花火2発 = ニューヨーク市場では先週、アマゾンの時価総額が1兆ドル(110兆円)に到達した。アップルに続く快挙である。なにしろトヨタの5倍というのだから凄い。だが大輪の花火が2発も打ち上がったにもかかわらず、市場は霧に包まれていた。霧の発生源は、トランプ政権が近く中国製品に対する2000億ドル分の関税引き上げを発動する見込みが強まったこと。ダウ平均は先週48ドルの値下がり。

東京市場でも、米中貿易戦争の激化が警戒された。さらに加えて2つの悪材料が。1つは台風と地震の自然災害。もう1つはトランプ大統領が、日本との貿易交渉について厳しい発言を繰り返したこと。災害で営業活動に支障が出そうな企業や自動車などの銘柄に、外国人投資家からの売り注文が目立っている。日経平均は先週558円の値下がり。

自然災害は急ピッチの復旧が進んでいるから、その影響はしだいに薄れる。だから東京の株価は、反発の機会を探ることになるだろう。しかし中国に対する追加の制裁関税は、先週までに公聴会が終わった。したがってトランプ大統領が急いで発動するとすれば、今週の可能性が大きい。霧は晴れず、反発には限界がありそうだ。

今週は10日に、4-6月期のGDP改定値、7月の国際収支、8月の景気ウォッチャー調査。11日に、7月の第3次産業活動指数。12日に、7-9月期の法人企業景気予測調査。13日に、8月の企業物価と7月の機械受注。アメリカでは12日に、8月の生産者物価。13日に、8月の消費者物価。14日に、8月の小売り売上高、工業生産、9月のミシガン大学・消費者信頼感指数。また中国が10日に、8月の消費者物価と生産者物価。14日に、8月の鉱工業生産、小売り売上高、固定資産投資額を発表する。

       ≪10日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

新次元・SF経済小説 【 プ レ ー ト 】

2018-09-09 07:36:40 | SF
第5章 ニッポン : 2060年代

≪49≫ 再会 = 2062年3月1日の夜10時すぎ、ぼくは駅から家へ向かって歩いていた。まだ肌寒いが、おぼろ月夜。街なかを抜け小さな公園に差しかかったとき、後ろからハイヒールの足音が迫ってきた。直感的にマーヤではないかと思ったが、振り返るわけにもいかない。

追い付いてきた女性が、低い声で囁いた。「ただいま」
ああ、やっぱりマーヤだ。幸い人通りもなかったので、二人はそのまま抱き合った。

マーヤは薄いベージュ色のツーピースを着て、中型の鞄を手にしていた。どこからみても、30代の主婦が旅行から帰ってきたように見える。声もロボット特有の機械音が消えて、おっとりした奥様風の調子になっている。

その晩は、明け方まで寝られなかった。私たちが乗ってきた宇宙船は、マーヤを乗せたまま音もなくUFOに吸い上げられた。マーヤはそのままUFOにとどまり、ずっとダーストン国と連絡を取り合っていたのだという。そして、あのダーストニウム合金も、UFOにはもう届いているそうだ。

こちらは宝くじを買ったら、なんと10億円が当たった話をした。何か細工をしたのかい? と聞いても、マーヤは「うふふ」と笑うだけだった。

お互いの報告が済んだとき、マーヤが鞄から一通の書類を取り出した。見るとマーヤの戸籍謄本である。市役所に結婚届を出すためだという。どうやって手に入れたのか疑問に思ったが、追及はしなかった。

その戸籍謄本には『二階堂 摩耶』と書いてあった。そう、ぼくの名前は二階堂純一だ。ここでマーヤは思いがけないことを、白状した。
「ダーストン語で、二階堂というのは“大ウソつき”という意味です。だから私が貴方の名前を知ったとき、これはまずいと直感しました。そこで貴方がよく口にした“ぼく”という言い方を名前にしてしまいました。ダーストン語では“豊か”という意味で、あの国では誰もが貴方の名前は“ぼく”だと思っているんです」

へえっ、そうだったのか。でもその機転のおかげで、ぼくは歓迎されたのかもしれない。マーヤ、ありがとう。
いまの日本では奇跡的に生還した宇宙飛行士として、ぼくの名前は全国に知れ渡っている。しかし宇宙での5年間は、記憶喪失したまま。やっぱり、ぼくは大ウソつきなのかもしれない。

                              (続きは来週日曜日)

Zenback

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