経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

ドイツ vs 日本 : この冬の備え

2022-09-16 07:58:37 | エネルギー
◇ 出来ることをやった国、やらない国 = ドイツ政府は先週「原発2基を来年4月まで稼働できるようにする」と発表した。ドイツは11年に「原発を22年末までに全廃する」と決めていたが、この冬の電力不足に備えて2基だけを例外扱いとした。ただし来年4月末にはこの2基も廃棄し、原発ゼロの大方針は貫く。すでに6月には石炭火力発電の稼働増加も決めており、冬に向かって万全の体制を整えた。

またドイツ政府は家計を支援するため、光熱費の補助に650億ユーロ(約9兆円)の予算を組んだ。その財源は石油・ガス会社などの超過利益に対する課税で賄う。さらに月額5ユーロ(約1200円)で、国内の電車とバスに乗り放題の定期券を発行。ガソリン節約・脱炭素・家計支援の面から、大きな成果を挙げている。これまでに国民の4人に1人が利用したという。

ドイツはこれまで、ロシア産の天然ガスに大きく依存してきた。それがウクライナ戦争の勃発で、いつパイプラインを締められるか判らない危機に曝された。特にこの冬のエネルギー不足が深刻になるという懸念が大きい。ドイツ政府はその対策を急いだわけ。しかし「原発はゼロにする」とか「再生可能エネルギーの発電比率を30年には80%にする」といった基本的な目標は変えず、むしろ再確認した。原発2基の稼働延長に、緑の党でさえ賛成したのはこのためである。

やはり冬の電力不足が心配されている日本の状況は、どうだろう。原発について、岸田首相は「17基の再稼働を目指す」と述べたが、具体的な話はなく‟言いっ放し”の感じ。小池都知事が新築住宅へ太陽光パネルを義務付けるよう奮闘しているが、国は静観。将来の電源構成についても、何も出てこない。出来ることを全部やった国と、何も出来ない国。その差が表われる冬が怖い。

        ≪15日の日経平均 = 上げ +57.29円≫

        ≪16日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

膏薬は貼った 大事なのは次の一手

2022-09-15 07:41:35 | 景気
◇ 問われる「新しい資本主義」の内容 = 政府は先週9日、物価高騰に対処するための追加の施策を決定した。その内容は①住民税非課税世帯への一律5万円支給②ガソリン価格抑制のための石油元売り会社に対する補助金の延長③小麦売り渡し価格の据え置き④地方創生臨時交付金の増額--の4点。必要経費は3兆5000億円前後、今年度予算の予備費から支出する方針だ。

一律5万円の支給は1600万世帯にのぼる見込み。低所得世帯の支出に占める食料品の割合が49%にものぼる調査結果を考慮した。石油元売り会社に対する補助金は9月末までに1兆9000億円を支出、ガソリンの小売価格を1リットル=168円に抑え込んできた。これを12月末まで延長する。地方創生交付金は、自治体が独自の対策に使用できる資金。これを6000億円増額する。

いずれも過去の施策を拡大・延長するだけだから、あっという間に対策は組み上がった。しかし、これらは傷口に膏薬を貼るだけの対症療法。日本経済の将来に希望を持たせるような内容ではない。だから政府が10月中にまとめる予定の総合経済対策に、大きな期待がかかる。ところが永田町から流れてくる情報によると、その内容は今回決めた膏薬のさらなる延長が中心になるという。

これでは膏薬貼りばかり。エネルギーや食料の問題をどう解決して行くのか。日本は今後どういう国を目指すことになるのか。その指針が明らかにならないと、個人も企業も将来設計を建てられない。岸田首相の「新しい資本主義」も内容が乏しければ、国民の信は失われるだろう。永田町から漏れ出る情報が誤りであることを願うばかりだ。

        ≪14日の日経平均 = 下げ -796.01円≫

        ≪15日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

輸入物価上昇の半分は 円安の影響

2022-09-14 07:31:10 | 物価
◇ 8月の企業物価は前年比9.0%の上昇 = 日銀が13日発表した8月の国内企業物価は、前年比で9.0%の上昇だった。7月と同じ上昇率。これで18か月連続の前年比プラスになった。物価の水準は過去最高。ウクライナ戦争などの影響でエネルギー・資源・食料品の国際価格が高騰、それに円安の影響が加わった。小売り段階での値上げラッシュも止まりそうにない。

調査の対象になった515品目のうち、約8割の431品目が上昇した。品目別にみると、電力・都市ガス・水道が33.4%、鉱産物が26.6%、鉄鋼が26.1%値上がりした。また飲食料品は5.6%、木材・木製品は20.2%の上昇だった。やはりエネルギー関連の上昇率が大きい。一方、値下がりしたのは農林水産物とスクラップ類の2品目だけだった。

このうち輸入品の物価だけを取り出してみると、全体では前年比42.5%の上昇。7月の49.1%上昇から、やや上昇幅が縮小した。品目別では、飲食料品が27.9%上昇している。注目されるのは、契約通貨ベースでみた輸入物価は21.7%の上昇にとどまっていること。要するに輸入物価の上昇率の約半分は円安の影響だったことが判る。

企業物価は企業の間で取引されるモノの値段。いわば卸売り段階の価格と言っていい。通常ならこの段階で価格が上がると、すぐに小売り段階に転嫁される。ところが現在は消費需要が弱いために転嫁が遅れ、たとえば7月の消費者物価は前年比2.6%の上昇にとどまっている。しかし転嫁は少しずつでも進むから、小売り段階での値上げラッシュは止まらない。

        ≪13日の日経平均 = 上げ +72.52円≫

        ≪14日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

劇薬を呑む ユーロ圏

2022-09-13 08:06:09 | ヨーロッパ
◇ 急激な金融引き締めに耐えられるか? = ECB(ヨーロッパ中央銀行)は先週8日、政策金利の0.75%引き上げを決めた。7月にはゼロ金利政策を放棄、金利を0.5%に引き上げている。今回の決定で、政策金利は1.25%となった。インフレを抑制するためで、リガルド総裁は「物価上昇率が2%になるまで、金利を上げ続ける」と宣言している。ECBが0.75%の大幅利上げに踏み切ったことで、ゼロ金利に固執する日本の姿勢がますます鮮明になった。

ロシアからの天然ガス供給が不安定となったため、ヨーロッパではエネルギー価格が高騰。さらに異常気象やウクライナ戦争、それにユーロ安の影響が加わって、食料品も大幅に値上がりしている。8月の消費者物価は前年比9.1%の上昇だったが、9月以降は2ケタの上昇率になるという予測が多い。ECBがかつてないほどの大幅な利上げを決めたのは、このためだ。

金融引き締めは、確実に景気の悪化を招く。たとえばアメリカのモルガン・スタンレー証券は「ユーロ圏は10月から景気後退に落ち込む」と予測した。しかし大問題なのは、物価の先行きがきわめて不透明なこと。というのも、ロシアがいつ天然ガスの供給を止めるか判らないからである。したがって利上げがいつまで続くのか、見当をつけにくい。

もう1つの大問題は、ユーロ圏19か国の国力に大きな差があること。ドイツやフランスに比べると、ギリシャやリトアニアなどは引き締めに対する抵抗力がいちじるしく低い。こうした国では国民の不満が高じやすく、政治の不安定につながりやすい。もし政情不安が多発した場合、はたしてECBは金利を上げ続けられるのか。仮に政変が起きて過激な政党が進出すると、ほくそ笑むのはプーチン大統領ということにもなりかねない。

       ≪12日の日経平均 = 上げ +327.36円≫

       ≪13日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

今週のポイント

2022-09-12 07:56:12 | 株価
◇ 下げ過ぎ訂正で大幅高 = ダウ平均は先週833ドルの値上がり。4週間ぶりの上昇で、終り値は3万2000ドルを取り戻した。カナダ中銀とECB(ヨーロッパ中央銀行)が相次いで利上げ、ウオールストリート・ジャーナルが「9月の利上げは0.75%で決まり」と報じるなど、市場にとっては好ましくないニュースがずらり。にもかかわらず株価が上げたのは、下げ過ぎの訂正としか考えられない。

日経平均は先週564円の値上がり。3週間ぶりの上昇で、終り値は2万8000円を取り戻した。こちらも特に好材料は見当たらず、ニューヨークの後を追って下げ過ぎを訂正した。ただ円安の進行にもかかわらず、海外からの資金流入は限定的のようだ。財務相や日銀総裁の口先介入で円安はストップしたが、市場はむしろ歓迎している。

このところダウ平均は3万2000ドル、日経平均は2万8000円を割り込むと、下げ過ぎ訂正の力が働くようだ。まだ市場の周辺には豊富な資金が存在するからだろう。しかし金融環境はしだいに厳しくなるから、上値は重い。特にニューヨークは、13日に発表される8月の消費者物価が関心のマト。さらに来週のFOMC(公開市場委員会)を控えて、動きは鈍いだろう。

今週は13日に、7-9月期の法人企業景気予測調査、8月の企業物価。14日に、7月の機械受注。15日に、8月の貿易統計、7月の第3次産業活動指数。アメリカでは13日に、8月の消費者物価。14日に8月の生産者物価。15日に、8月の小売り売上高、工業生産。16日に、9月のミシガン大学・消費者信頼感指数。また中国が16日に、8月の鉱工業生産、小売り売上高、固定資産投資額を発表する。

        ≪12日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

Zenback

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