経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

植田・日銀新総裁を待ち受ける カベ (下)

2023-02-15 07:52:33 | 日銀
◇ 「説得力 + 包容力」 が試される = 日銀が金融引き締め政策に踏み切ると、必ず反対論が巻き起こる。負債を背負った企業や個人の負担が増大するからだ。もっと単純に、景気の先行きを心配する反対論も湧き起る。これに対して日銀総裁は、利上げの必要性を説明して説得するしかない。この点に関しては、教鞭もとっている植田新総裁の‟説得力”に期待する声は大きい。

だが反対勢力は、意外なところにも潜んでいる。現状からみると、その1つは自民党の内部に。いま日銀が明確な引き締めに転じることは、アベノミックスの否定につながる。このため自民党内の安倍派は、決して利上げを好まない。また野党の多くも、中小企業や低所得層の立場から引き締めには反対する可能性がある。

伏兵は財務省内にも存在する。長期金利が1%上昇すると、国債費は3兆円以上も増大する。だから国債を管理する理財局は、基本的に利上げには反対だ。かつて民間から日銀総裁に就任した宇佐美氏は大蔵省と対立、当時の福田赳夫蔵相から引導を渡され、再任を拒否された。さらに日銀内部にも、金融緩和派は少なくない。

今回、政府は副総裁に財務省出身の氷見野良三氏と日銀の内田真一氏を任命する方針。いわば財務省と日銀を代表する役割を負うが、ある意味では‟お目付け役”でもある。特に民間出身である植田総裁は、この2人と協調できなければ、孤立してしまうだろう。そういう意味で、新総裁には‟説得力”に加えて‟包容力”が求められるわけだ。植田新総裁の、ご健闘を祈る。

        ≪14日の日経平均 = 上げ +175.45円≫

        ≪15日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

植田・日銀新総裁を待ち受ける カベ (上)

2023-02-14 08:04:51 | 日銀
◇ 金融政策はゆっくり引き締めへ = 政府は日銀の次期総裁に、経済学者の植田和男氏(71)を起用することを決めた。植田氏は米マサチューセッツ工科大学で学位を取得、98年から05年まで日銀審議委員を務めている。日銀総裁に学者が就くのは初めて。また民間からの起用は、64年に三菱銀行から転身した宇佐美洵氏以来のこと。政府は14日に公表、国会の承認を経て4月9日に就任する。

市場はこのニュースに最初は戸惑った。円相場は3円も上昇、株価は下落した。しかし植田氏が審議委員時代に、ゼロ金利政策の理論的な構築に貢献したことが伝わると、相場はすぐに平静を取り戻している。ただ市場に表われたこの現象は、植田氏が世間一般には‟未知の人”だったことを如実に示している。

植田氏は記者団に対して「現在の政策は適切だ。いまは緩和政策が必要」と述べている。しかし経済学者だから、現在の超緩和政策によって発生した多くの副作用についても、すでに計量を終えているはず。結論として「このままでいい」とは考えていないだろう。しかし急激に引き締め政策に転換すれば、新たな副作用を惹き起こす。

したがって、当面は①政府と日銀が取り決めた「物価2%目標」の修正②長期金利の変動幅を0.75%に拡大--の2点を目指す公算がきわめて大きい。その後は内外経済の動向しだいということになるが、ここからが試金石。たとえば物価がさらに上昇して、政策金利を1%に上げるかどうかといった場合、各方面をどう説得できるか。そこが大きなカベになる可能性は、決して小さくない。

                       (続きは明日)

        ≪13日の日経平均 = 下げ -243.66円≫

        ≪14日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

今週のポイント

2023-02-13 08:16:36 | 株価
◇ ボックスから抜け出せない株価 = ダウ平均は先週57ドルの値下がり。終り値は3万3869ドルで、3万4000ドルを前に足踏みした。年初来では722ドル、率にして2.2%の上昇。株価はずっと3万2900ドル~3万4500ドルの間で、行ったり来たり。パウエルFRB議長は、株価がこの下限に近付くと「インフレは鈍化」と言って、市場を勇気づける。上限に近付くと「まだ利上げは続く」と言って、市場の熱を冷ましているようだ。

日経平均は先週162円の値上がり。終り値は2万7671円だった。年初来では1576円、率にして6.0%の上昇。こちらも2万5700円~2万7700円の間で揺れ動いている。IMF(国際通貨基金)が日本の経済見通しを上方修正したことなどを好感したが、発表された企業物価や家計調査、毎月勤労統計などは、みな株価にとっての好材料とはならなかった。

いま10-12月期の決算発表がピーク。この時点ではアメリカの見通しが予想よりは悪くなく、日本は予想よりやや悪い。こうした点からみると、ニューヨークの方が早くボックス圏から抜け出るかもしれない。しかし東京市場の方が出遅れ株に対する物色が入りやすく、また日銀総裁の交代といった新しい材料も現れた。

今週は14日に、10-12月期のGDP改定値。15日に、12月の第3次産業活動指数、1月の訪日外国人客数。16日に、1月の貿易統計、12月の機械受注。アメリカでは14日に、1月の消費者物価。15日に、1月の小売り売上高、工業生産、2月のNAHB住宅市場指数。16日に、1月の生産者物価、住宅着工戸数が発表される。

        ≪13日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

死者が語る コロナ肺炎の危険度 (150)

2023-02-11 07:56:34 | なし
◇ 日本の死亡者が7万人を超えた = 世界の感染者は累計6億7320万人、この1週間で120万人増加した。この増加数は前週より93万人少なく、1週間の増加数としては過去最少。死亡者は677万6041人で、週間1万1218人の増加だった。この増加数は前週より1852人少ない。感染者の増加数は目に見えて縮小しているが、これは多くの国が全数把握を止めた影響が大きい。ただ死亡者数も縮小しているので、全体として改善傾向にあるとみていいだろう。

国別の死亡者数をみると、アメリカは累計111万3236人。この1週間で3549人増加した。次いでブラジルが69万人台、インドが53万人台、ロシアが38万人台、メキシコが33万人台。さらにイギリスが21万人台、イタリアが18万人台、ドイツ・フランス・インドネシアが16万人台となっている。アメリカ・ロシア・イタリアで増加数が前週より拡大。アメリカの死亡者は111万人台に乗せた。

日本の感染者は累計3290万8794人、この1週間で24万1962人増加した。この増加数は前週より9万4149人少なく、4週連続で縮小している。死亡者は7万0423人で、週間1325人増加した。この増加数は前週より676人少なく、3週連続で縮小した。全体として改善傾向にあり、第8波は収束過程に入ったと思われる。ただし死亡者数はまだ多い。

日本の死亡者数が2月7日、ついに7万人を超えた。昨年12月上旬に5万人、ことし1月上旬に6万人を超えているから、このところ1か月に1万人のペースで増えている。もっと大きく減らないと、コロナをインフルエンザ並みに扱うことは難しいのではないか。政府は死亡者の減り方が鈍い原因を追及すべきである。

        ≪10日の日経平均 = 上げ +86.63円≫

        【今週の日経平均予想 = 4勝1敗】     

「ギョーザ日本一」は ???

2023-02-10 08:12:51 | 統計
◇ 家計調査で決めるのは疑問だ = 新聞各紙に「ギョーザは宮崎、ラーメンは山形」という記事が載った。総務省の家計調査で、昨年1年間の1世帯当たり支出額が公表されたからである。たとえば「宮崎市の世帯たりギョーザ支出額は4053円、宇都宮市や浜松市を抑えて連覇を達成した」という具合。「バンザイ!」「残念、来年こそは」といった市民の声も載せている。ちょっと、微笑ましい。

しかし、市がギョーザやラーメンを「観光資源としてPRするための協議会を立ち上げた」という話が出てくると、そうも言ってはいられない。ギョーザ戦争やラーメン戦争に自治体が乗り出せば、税金も使われることになる。ところが、そもそも家計調査でギョーザやラーメンの日本一を決めることには、大きな疑問があるからだ。

家計調査は、世帯の収入や支出、貯蓄や負債を調べることが目的。総務省が毎月、全国168市町村の約9000世帯を対象に実施している。無作為に抽出した世帯に、調査票を渡して記入してもらう仕組み。この世帯数は人口とほぼ比例するから、宮崎市や山形市だと20-30世帯になるだろう。

こうした世帯の記入者は、もちろんギョーザ戦争やラーメン戦争のことは知っているはず。故意にギョーザやラーメンの購入量を水増しすることはないにしても、実際にたくさん買おうとするかもしれない。すると平均的な支出額が増えてしまうという危険性がある。もし本当にギョーザやラーメンを観光資源としてPRしたいのなら、小売店ベースでのギョーザやラーメンの販売額を調べるべきだろう。

        ≪9日の日経平均 = 下げ -22.11円≫

        ≪10日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

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