どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

どうぶつ・ティータイム(62)

2008-09-30 01:26:55 | ドライブ
     
     信州路寄り道ドライブ(2)<須坂~小布施>

 須坂の街並みに圧倒されたまま、さらに先を急ぐ。
 いつの間にか道の表示は406号から403号に変わっている。ナビシステムなど搭載していないから、地図と山勘の二本立てでひたすら野沢温泉をめざす。

 まもなく小布施町に入り、人通りの多い繁華街で信号につかまった。
 以前、小林一茶の記念館を見学したのもこの近くではなかったろうか。
 そうだ、あれは確か信濃町だった・・・・と思っているうちに、右手に『北斎館』入口の案内板が出てきた。

 あれれ? 小布施は北斎ゆかりの地との知識はあったが、いきなり標識で北斎館を案内されるとは思っていなかった。
 そういえば、一茶記念館は妙高へ向かう途中で立ち寄ったものだ。市街地を通るこの道とはかなり離れているのだ。

 とっさにハンドルを右に切って、『北斎館』を探した。
 すぐに派手な土産物店が目に入り、そこの広場の一角に設けられた駐車場にクルマを置いた。

 広場の出口には、案内所を兼ねた入場券売り場がある。
 お姉さんに聞くと、北斎館を含めた三館共通入場券が1000円だと告げられたが、予備知識がないから他の二館がどんなものか見当がつかない。
 第一、先を急ぐ身としては北斎館を観るだけでも精一杯だ。500円を払って入口の案内板の前に立った。(写真は屋台の天井に描かれた竜の図)

 入館してみておどろいた。
 世間に知られた版画のほか、初めて目にする肉筆画40数点が惜しげもなく展示されていたのだ。
 かねてより北斎の凄さ、すばらしさは、本で読みテレビや映画で聞き知っていたが、肉筆画の迫力にすっかり引き込まれてしまった。

 館内は撮影禁止になっているので、画そのものを紹介できないのが残念。
 しかし、インターネットで画業の一端に触れることは出来る。『北斎館』で検索すると、「小布施 葛飾北斎肉筆画美術館」ほか数項目で、作品および北斎の人と成りを解説している。

 当日、館内で三十分ほどの解説映像を見せてもらったのも、北斎を知る上で大変有意義だった。
 北斎83歳のとき、高井鴻山をたずねて初めて小布施の地を踏んだこと。以後都合四回小布施を訪れ、高井鴻山の援助を受けながら肉筆画に全力を注いだことが記されている。

「高井鴻山」とは何者ぞ!
 次回で知りえた知識の一部を披露するつもりだが、この人物については謎も多い。
 解説を見ていて気づいたことがある。案内所のお姉さんが勧めてくれた三館共通入場券の一つは、『高井鴻山記念館』のことだったのだ。
 時間があればぜひ立ち寄りたい場所だ。
 この土地に根付いていた人物だけに、まるごと痕跡が残されていて面白そうだ。

「画狂人」葛飾北斎。
 広重、歌麿より先に、ヨーロッパの著名な画家たちに多大な影響を与えた天才は、一方で西洋の遠近法を初めてわが国に取り入れたことでも知られている。
 そのほか、一日に三度引越しをしたとか、興が乗ると食事のことはまったく忘れ去ったとか、エピソードには事欠かない。

 90歳で没した北斎のすさまじい一言。「100歳まで生きられれば、一画一点を以って物の本質を描けただろうに・・・・」
 一筆・・・・だったかな? 多少言い回しが違うと思うが、これだけの画業を残した天才の飽くなき追究心に驚嘆したのであった。

     (つづく)

 
 

 
 
 

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1 コメント

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たまたまのこと (くりたえいじ)
2008-10-01 12:22:08
 
ドライブの道中、思ってもいなかった物件(?)が目にとまり、そちらへ引っ張られてしまう。
よく起こりうるようで、好運には簡単に恵まれるものではありませんよね。

少しケチって飛び込んだ北斎館で、偶然にもこの巨人の肉筆に接しられたとは!
うらやましいなあ。
 
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