エノコログサ
(城跡ほっつき歩記)より
広い空き地へ飛んできて
いつの間にか風に揺れているエノコログサ
あなたの名前は犬ころ草なの?
摘んで帰って柴犬のコロクでもからかおうか
二年間は二匹と二人の家庭があった
雅代の連れてきた子猫と僕のコロクの共同生活だ
新しもの好きの雅代の猫はラグドール
気取った名前はジョセフィーヌだった
ジョセフィーヌを相手に猫じゃらし
雅代と二人でコチョコチョ遊んだものだ
だけど蜜月は長く続かず
愛想を尽かした新妻は秋風とともに去った
僕には柴犬のコロクが残った
もともとの戦友は変わらず僕の靴下が好き
ことさら愛想を振りまくわけではないが
一日ほって置かれた寂しさをクンクンと訴えるのだ
たまの休みの日に散歩に出ると
コロクは空き地へ一目散
草原にはもうエノコログサはなく
柴犬の鼻先には湿った土の匂いだけ
暦を破ると下にはNovemberの文字
神無月とともに幸せは彼方へ引き上げた
いいさいいさ男と女はいつかすれ違うもの
二年が長いのか短いのか考えてみたって仕方がない
ジョセフィーヌを慰めた猫じゃらし
コロクの鼻先をくすぐったエノコログサ
風が運んできた思い出は風が連れ去った
空き地に佇むコロクと僕にはスッテンテンの空
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