童話「安寿と厨子王」を厨子王の逃亡ないしは復讐のための旅程を現代まで800年余に延長し、源氏物語なども入れて変形した童話。
もともと過酷な運命を強調したフィクションですが、厨子王の放浪ないし逃亡を現代に至る800年余とすることで非現実性がより明白になり、むしろパロディ化されて悲しみを感じにくくなっているように思えます。過剰な表現が、一定の程度までは読者の感情を揺さぶるのに効果があっても、度を超すと白けるということを実感させたいのでしょうか。私には今ひとつ作った意図が理解できませんでした。
アンジュは生き返らせながら、乳母うわたきはどうなったかわからず、作者に見放されています。命を失っても身分が低い故に顧みられないうわたきの運命にむしろ同情してしまいました。
吉田修一 小学館 2019年10月5日発行
もともと過酷な運命を強調したフィクションですが、厨子王の放浪ないし逃亡を現代に至る800年余とすることで非現実性がより明白になり、むしろパロディ化されて悲しみを感じにくくなっているように思えます。過剰な表現が、一定の程度までは読者の感情を揺さぶるのに効果があっても、度を超すと白けるということを実感させたいのでしょうか。私には今ひとつ作った意図が理解できませんでした。
アンジュは生き返らせながら、乳母うわたきはどうなったかわからず、作者に見放されています。命を失っても身分が低い故に顧みられないうわたきの運命にむしろ同情してしまいました。
吉田修一 小学館 2019年10月5日発行