1990年代後半の東京で行き場のない女4人がともに暮らしていた封印していた記憶をコロナ禍のときに振り返り、辛く忘れたい過去だったのか真実は違ったのかを思い惑う小説。
語り手の伊藤花が、自分がただ仲のよい相手とともに暮らしたいと思って始めた共同生活なのに、いつの間にか自分ばかりが犠牲になっているという思いを募らせる流れが、切なく思えます。その思いも、花が、何も考えていない、楽していると見ている相手方からは別のように見え、それを指摘されて花がたじろぎつつさらに対立が深まるのも、端から見ているとやはり悲しい。世に好きで結婚した相手との離婚がつきないことからして、人間関係の宿命かも知れませんが。
責任感が強いというか、周りの人が負った負債や生活能力の喪失を自分が解決しないといけないという気持ちになってしまう(もちろんなぜ自分がという被害者意識も持っているのですが)花が、真っ先に犯罪に手を染めてしまうという展開が、問題提起なのでしょうけれども哀しいところです。
できごとについての報道、世間の目が、当事者ないし近しい人から見た「真実」と違うことが1つのテーマとなっている作品です。それが読売新聞に連載されていたというのも興味深いところです。
川上未映子 中央公論新社 2023年2月25日発行
2024年本屋大賞第6位
読売新聞連載
語り手の伊藤花が、自分がただ仲のよい相手とともに暮らしたいと思って始めた共同生活なのに、いつの間にか自分ばかりが犠牲になっているという思いを募らせる流れが、切なく思えます。その思いも、花が、何も考えていない、楽していると見ている相手方からは別のように見え、それを指摘されて花がたじろぎつつさらに対立が深まるのも、端から見ているとやはり悲しい。世に好きで結婚した相手との離婚がつきないことからして、人間関係の宿命かも知れませんが。
責任感が強いというか、周りの人が負った負債や生活能力の喪失を自分が解決しないといけないという気持ちになってしまう(もちろんなぜ自分がという被害者意識も持っているのですが)花が、真っ先に犯罪に手を染めてしまうという展開が、問題提起なのでしょうけれども哀しいところです。
できごとについての報道、世間の目が、当事者ないし近しい人から見た「真実」と違うことが1つのテーマとなっている作品です。それが読売新聞に連載されていたというのも興味深いところです。
川上未映子 中央公論新社 2023年2月25日発行
2024年本屋大賞第6位
読売新聞連載
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます