アメリカの公文書館のCIA文書の中の正力松太郎ファイルを元に読売新聞社主の正力松太郎が政界に転じ「原子力の父」となっていった経緯をCIAとの関係でレポートした本。
アジアの反共の砦として日本を陣営に留め置き米軍の補完の範囲で再軍備をさせたいアメリカが、第五福竜丸事件で沸き起こった反核・反米の世論、原水禁運動を鎮静化させるために「原子力平和利用」キャンペーンを最も上位下達体制で扱いやすかったメディアを用いて広めたかったというCIAの利害と、日本テレビの商売のためにアメリカの協力を得てマイクロ波通信網を構築したかった正力側の利害の下で、CIAと正力が協力・利用・対立する駆け引きの様子が描かれています。
原発は、正力にとっては、一民間企業が当時は民間に許可されることはかなり困難だった通信インフラを手にするためにアメリカの協力を得、さらには自分が総理大臣になって法改正をするしかないという判断から、金はあるが政界での実績がない正力が総理大臣の座を射止めるためのカードだった(それに過ぎなかった)ことが主要な論点になっています。
CIA文書を中心に見ているので、CIAがいかに正力の政治的野望に利用されずに、できるだけ金を使わずに、自分たちは正力の力を利用するかに腐心している様子や、当初元敵国の日本には平和のための原子力のキャンペーンはするが原子炉は与えるつもりがなかったアメリカが、イギリスやソ連の売り込みに焦り原子炉を供与せざるを得なくなっていった様子が生々しく描かれ、興味を引かれます。

有馬哲夫 新潮新書 2008年2月20日発行
アジアの反共の砦として日本を陣営に留め置き米軍の補完の範囲で再軍備をさせたいアメリカが、第五福竜丸事件で沸き起こった反核・反米の世論、原水禁運動を鎮静化させるために「原子力平和利用」キャンペーンを最も上位下達体制で扱いやすかったメディアを用いて広めたかったというCIAの利害と、日本テレビの商売のためにアメリカの協力を得てマイクロ波通信網を構築したかった正力側の利害の下で、CIAと正力が協力・利用・対立する駆け引きの様子が描かれています。
原発は、正力にとっては、一民間企業が当時は民間に許可されることはかなり困難だった通信インフラを手にするためにアメリカの協力を得、さらには自分が総理大臣になって法改正をするしかないという判断から、金はあるが政界での実績がない正力が総理大臣の座を射止めるためのカードだった(それに過ぎなかった)ことが主要な論点になっています。
CIA文書を中心に見ているので、CIAがいかに正力の政治的野望に利用されずに、できるだけ金を使わずに、自分たちは正力の力を利用するかに腐心している様子や、当初元敵国の日本には平和のための原子力のキャンペーンはするが原子炉は与えるつもりがなかったアメリカが、イギリスやソ連の売り込みに焦り原子炉を供与せざるを得なくなっていった様子が生々しく描かれ、興味を引かれます。

有馬哲夫 新潮新書 2008年2月20日発行