伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

リーシーの物語

2008-11-03 01:12:19 | 物語・ファンタジー・SF
 売れっ子作家スコット・ランドンが死亡して2年後、心の整理ができずに亡夫の残した原稿や書籍類の整理に手をつけられずにいて、遺稿探しを求める出版社・研究者をはねつけ続けるリーシー・ランドンを、スコットファンの変質者が襲い、リーシーが封印してきた夫との日々の記憶を蘇らせながら変質者と戦うというストーリーの小説です。
 読み終わってみると、最初の方の関係なさそうに見えるエピソードがそれなりに布石となっており、行きつ戻りつする話も最終的にはきちんとまとめられてはいるのですが、やはり長いし、じらしすぎ。特にかなり長い第1章が、時代を行きつ戻りつしながら、同じエピソードを繰り返しつつ少しずつ先を明かしという形で進み、というか全然話が進まない冗長な小説という印象です。実は私は、ホラーが好きでないこともあってスティーヴン・キングは読んだことなくて初めて読んだのですが、「スティーヴン・キング」という名前がなければ、確実に第1章の途中でぶん投げていたと思います。第2章まで読み進めてしばらくすると、ようやく展開のイメージがつかめてきて、読みやすくなるというか読み進む意欲が湧いてきますが。繰り返しながら少しずつそれぞれの話を進めてじらしていくのもテクニックだと言われればそうなんでしょうけど、2段組上下で680頁あまりの本にされると、素直に書いたら普通の小説の長さかちょっと長い程度にできるんじゃないのと思ってしまいます。
 それにしても、キーポイントがパラレルワールドというか異次元世界ですから、これではファンタジーです。最初からファンタジーならいいんですが、普通のサスペンスのように始めて、盛り上がってきてからパラレルワールドじゃあねえ。
 それから、「ブール」「ブーム」「ブーヤ・ムーン」というキーポイントになる概念を始め、独自に作った用語や言葉遊び的な部分が多く、訳者の翻訳には苦労の跡が見えますが、それでも日本語としては読みにくい。原文はどうなってるんだろうなと気にもなるところがかなりあります。言ってみればオリエンテーリングの隠されたポイント(そこに隠された指示文書)のようなものが「道行きの留」と訳されていて何だろうと思っていたら、本の中に登場する手書きメモからして原文では「station」のようですし。やたらと登場する1キロ半も、きっと原文は1マイルでしょうし。

原題:LISEY’S STORY
スティーヴン・キング 訳:白石朗
文藝春秋 2008年8月10日発行 (原書は2006年)
コメント
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