伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。今年も目標達成!

アキバの帝王

2012-05-10 00:19:24 | 小説
 借金を抱えた会社の債権を買い取って厳しい取立をかけて会社を乗っ取り売り飛ばす稼業を営む桐谷は幼なじみの右腕名倉とともに荒稼ぎをしてきたが、名倉の反対を押し切って芸能プロダクションの乗っ取りを謀り、しかも所属のナンバー1タレント中上愛美のメジャーデビューの話を断り、名倉と決定的に対立する、桐谷の動機は・・・というような展開のワル系ビジネス娯楽小説。
 アイドルオタクたちがアキバ系アイドルを応援する心理と行動を描いているのですが、アイドルの本音や一般人の視線のみならず、アイドルオタクたちの行動の節操のなさ安易さも含め、結局はこの作品でもオタクたちを低く見てるんじゃないかなという気がします。
 この作者のワルっぽい小説としてみると、設定が結局芸能プロダクションの乗っ取りで止まって流れの切れが悪く、展開も中途半端な感じがします。桐谷と名倉の友情小説という方がいいかもしれません。
 債権買取による乗っ取りについて、分割払いの約束だったのに、債権譲渡で新しい債権者がそれを反古にできるかのように書かれています(23ページ)。契約書の内容が明記されていませんから断言はしませんが、債権譲渡では、債務者(借主)は譲渡前に債権者(貸主)に対して主張できたことは原則として債権を譲り受けた新たな債権者に主張できますので、前の貸主との間で分割払いの約束ができていたならそれを新たな貸主が一方的に破棄することはできないはずです。まぁヤクザまがいの乗っ取り屋なら法律上間違っていようが何でも言うということで受け取っておいてもいいですが。


新堂冬樹 講談社 2011年7月27日発行
コメント
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