伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

官能教育 私たちは愛とセックスをいかに教えられてきたか

2014-07-07 22:15:53 | 人文・社会科学系
 一夫一妻制度の制約から逃れて多くの(複数の)人と性的に親密な関係をより軽く結ぶことを目指して、一夫一妻制度が人類の歴史上つい最近の短い期間に欧米などの狭い社会で採用された例外的な制度であると論じ、不倫をするのが人間であり誰にとっても不倫は避けられないのかも知れない、不倫を禁じる倫理の方に問題があると主張する本。
 一夫一妻制が例外的と論じるところでも、その手の議論にありがちな自分の主張に合う例をつまみ食い的に寄せ集めた感があり、本の全体的な構成も、あまり体系的ではなく、堅苦しい関係じゃなくもっと自由にいろいろな人といい関係になろうよという観点から悪い例といい例を並べたエッセイという感じです。
 著者はこの本の最終章のテーマ/タイトルを「セックスに対抗するにはキスしかない」としているのですが、それが「いったん性行為にまで至ると、キスで心をふるわせることはなくなってしまう」(163ページ)、「恋愛を長いレンジで考えると、そのもっとも好ましい果汁がいっぱいのときを代表するのがキスであり、セックスは二人の関係がもはや引き返せなくなるところに位置している。」(175ページ)ためであるとしたら、それはセックスをゴールと考えるまたひとつのセックス至上主義ではないかという気がします。著者の主張の指向性からすれば、親密な関係やときめきこそがゴールでありまた目指すべきピークであって、セックスがその前にあるか後にあるかはむしろ重要でないという方がすっきりするように思えるのですが。
 92ページで引用されている世界各国のセックス頻度と性生活満足度調査、どれくらいの標本数と年齢層でどういう調査方法だったのかがまったく説明されていないのでどう評価していいのか疑問は残りますが、年間セックス頻度が世界平均103回、日本は調査対象41か国中ダントツの最下位で45回(最高はギリシャで138回、年間70回以下は日本だけ)、性生活に満足している( I'm happy with my sex life )人が日本では24%で中国に次いで下から2番目(世界平均は44%)というのは、ちょっとすごい。日本の文化は、性的関係について、世界標準から見てかなり抑圧的・否定的ということなのでしょうか。


植島啓司 幻冬舎新書 2013年11月30日発行
コメント
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