耳の構造と音を聞くしくみ、耳の病気、難聴と補聴器、耳垢などについて説明した本。
耳の中の蝸牛で捉えられた音情報は、延髄にある蝸牛神経核に到達した後、さまざまな神経核を経由し左右で交叉し合い、大脳の聴覚野に達するというしくみで、その経路はまだ明らかになっていない点があるが、複数の神経核を経由する過程でさまざまな抑制・活性化などの処理を受けることになり、そのために雑音の中から聞きたい音を聞き出すことができるという聴覚の特色があるのだろうと考えられているそうです。会話の聞き取りなどでは脳の推測・補完が働いて、実際に聞こえている音と脳が聞いている会話は同じでないことがあるようです(70~76ページ)。不思議でも便利でもあり、同時に不安になる話でもあります。
補聴器は、メガネ同様にその人の難聴の程度に応じて度を変える必要があり、欧米では補聴器の販売の際に資格のある Audiologist が調整しているが、日本では補聴器の販売は野放し状態で(以前は全くの野放し、現在でも販売経験が1年以上で1万2000円の講習会を受ければ「補聴器」の販売ができ、それがなくても「集音器」の販売はできるとか)、ドイツやイギリスでは7~8割の人が補聴器に満足していると答えているのに、日本では満足と答えた人は36%だそうです(133~135ページ)。ヨーロッパでは、マイクの音をFMで補聴器に送るシステムがかなりの講演会場・劇場に普及しているが、日本では聾学校など以外ではあまり使用されていないとか(141ページ)。高齢化社会が進む日本の社会は、まだまだ高齢者や弱者への配慮が薄い住みにくい社会なのだなと再認識しました。
耳垢は、耳垢腺から分泌された油脂、皮脂腺の分泌物、脱落した外耳道表層の角化細胞、耳毛、その他ほこりなどの耳内の異物が一緒くたになったもの(171ページ)だが、外耳道では鼓膜から外側に向かって皮膚の表面が移動していくマイグレーション (migration)という現象があり、表皮が外耳道の骨部から軟骨部に移るところで剥がれ落ちて耳垢の一部となるのだとか(173~174ページ)。私は、子どもの頃から耳垢がたくさん出る体質で、子どもの頃は母親が、近年ではカミさんが、たくさん取れるのをおもしろがって耳掃除をしたがるくらいなのですが、どうして耳垢がたくさん出るのかを考えると乾燥度の高いかさぶたのようなものなのではないかと思っていました。少し謎が解けたような気がしました。

杉浦彩子 講談社ブルーバックス 2014年10月20日発行
耳の中の蝸牛で捉えられた音情報は、延髄にある蝸牛神経核に到達した後、さまざまな神経核を経由し左右で交叉し合い、大脳の聴覚野に達するというしくみで、その経路はまだ明らかになっていない点があるが、複数の神経核を経由する過程でさまざまな抑制・活性化などの処理を受けることになり、そのために雑音の中から聞きたい音を聞き出すことができるという聴覚の特色があるのだろうと考えられているそうです。会話の聞き取りなどでは脳の推測・補完が働いて、実際に聞こえている音と脳が聞いている会話は同じでないことがあるようです(70~76ページ)。不思議でも便利でもあり、同時に不安になる話でもあります。
補聴器は、メガネ同様にその人の難聴の程度に応じて度を変える必要があり、欧米では補聴器の販売の際に資格のある Audiologist が調整しているが、日本では補聴器の販売は野放し状態で(以前は全くの野放し、現在でも販売経験が1年以上で1万2000円の講習会を受ければ「補聴器」の販売ができ、それがなくても「集音器」の販売はできるとか)、ドイツやイギリスでは7~8割の人が補聴器に満足していると答えているのに、日本では満足と答えた人は36%だそうです(133~135ページ)。ヨーロッパでは、マイクの音をFMで補聴器に送るシステムがかなりの講演会場・劇場に普及しているが、日本では聾学校など以外ではあまり使用されていないとか(141ページ)。高齢化社会が進む日本の社会は、まだまだ高齢者や弱者への配慮が薄い住みにくい社会なのだなと再認識しました。
耳垢は、耳垢腺から分泌された油脂、皮脂腺の分泌物、脱落した外耳道表層の角化細胞、耳毛、その他ほこりなどの耳内の異物が一緒くたになったもの(171ページ)だが、外耳道では鼓膜から外側に向かって皮膚の表面が移動していくマイグレーション (migration)という現象があり、表皮が外耳道の骨部から軟骨部に移るところで剥がれ落ちて耳垢の一部となるのだとか(173~174ページ)。私は、子どもの頃から耳垢がたくさん出る体質で、子どもの頃は母親が、近年ではカミさんが、たくさん取れるのをおもしろがって耳掃除をしたがるくらいなのですが、どうして耳垢がたくさん出るのかを考えると乾燥度の高いかさぶたのようなものなのではないかと思っていました。少し謎が解けたような気がしました。

杉浦彩子 講談社ブルーバックス 2014年10月20日発行