伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。今年も目標達成!

老いては夫を従え

2020-03-29 21:07:45 | エッセイ
 老化をテーマにしたエッセイ集。
 私にとっては、20代前半に「女ともだち」を読んで驚き、その後恋愛の語り手として一世を風靡した柴門ふみが、今や老化を語ることに、時の流れを感じ、3つ年下の自分(些細なことですが、英語の聞き取りを、「リスニング」ではなく「ヒアリング」と書いてしまう:176ページあたり、同世代なのだと思ってしまいます)もまた、老化を言われる時期にいるのだと改めて認識しました。
 「歳をとると、頭で立てた計画の半分も実行できれば上等なのだ。どうやら脳は、衰える肉体のスピードを認識できてないみたいだ。三十代の肉体がこなした仕事量を五十代にも当てはめようとするのは、きっとそのせいだ」(61ページ)というのは、そのとおりだと思います。私も、1日にできる量も、健康なときの疲れのとれ具合も、そして体調が悪くなったときの回復の具合も、数年前とは違ってきていることを実感しています。
 「定年退職した男性の最悪のケースは、企業でそこそこの地位にあった人間だ。他人に上から指示する癖から抜け出せない。しかも会議で発言することが自分の優秀さの証明だと思い込んでいるので、この手の人間がマンション管理組合の理事になったら大変である。問題のないところに無理やり問題を提起し、騒動を大きくして、反対派をやり込めることに全精力をつぎ込む。彼らは自転車置き場で洗車を禁止するといった類いの小さな規約を嬉々として作り上げる」(28~29ページ)というのは、実にリアルですが、ひょっとして実体験でしょうか。私は、マンション関係は専門ではありませんが、近年相談を受けていて、マンション管理組合とマンション住民(の一部)の対立で、どうしてそんなことでそこまで意固地になってるのかと思うことが少なくありません。こういう指摘を見ると、あぁなるほどと膝を打ってしまいます。


柴門ふみ 小学館文庫 2020年2月11日発行(単行本は2016年12月、「本の窓」2013年1月号~2016年5月号連載)
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