遅咲きのピアニスト、フジコ・ヘミングの自伝。
文庫版刊行に寄せての冒頭に「1999年2月、TVのドキュメント番組で一夜で人気の出た私」とあるようにNHKの番組で注目を浴びたことをきっかけにブレイクした著者ですが、この本の中では「わたし自身のことやわたしの演奏が、NHKで取り上げられ、放映されたことの大きかった」(200ページ)とあるだけで、その内容も経緯も記されていません。その他の著者の人生での節目となる大きなできごとも、時期を示して時系列で整理して具体的に述べるところが少なく、著者の人生の事実を知るというよりも、著者の信条や心情を知るという風情の本です。その点で、自伝ではありますが、むしろエッセイ的な読み味の本だと思います。
お金がなくなって砂糖水だけで過ごした(66ページ)、ドイツだろうと、どこだろうと、国籍を問わず、どこにでも意地悪をする人間はいて、外国人だと見ればすぐに苛める、本当にどこにでもいる(68ページ)、後年、わたしは数え切れないぐらい何人もの音楽家に会ってきたが、世間一般がいうところの、表の名声とは違って、人間としてあまり尊敬できない音楽家がずいぶん多いように思う(97ページ)など、苦労が偲ばれる記述とそれと闘って勝利し溜飲を下げる記述の対比が印象的です。
フジコ・ヘミング 新潮文庫 2008年11月1日発行(単行本は2000年5月、求龍堂)
文庫版刊行に寄せての冒頭に「1999年2月、TVのドキュメント番組で一夜で人気の出た私」とあるようにNHKの番組で注目を浴びたことをきっかけにブレイクした著者ですが、この本の中では「わたし自身のことやわたしの演奏が、NHKで取り上げられ、放映されたことの大きかった」(200ページ)とあるだけで、その内容も経緯も記されていません。その他の著者の人生での節目となる大きなできごとも、時期を示して時系列で整理して具体的に述べるところが少なく、著者の人生の事実を知るというよりも、著者の信条や心情を知るという風情の本です。その点で、自伝ではありますが、むしろエッセイ的な読み味の本だと思います。
お金がなくなって砂糖水だけで過ごした(66ページ)、ドイツだろうと、どこだろうと、国籍を問わず、どこにでも意地悪をする人間はいて、外国人だと見ればすぐに苛める、本当にどこにでもいる(68ページ)、後年、わたしは数え切れないぐらい何人もの音楽家に会ってきたが、世間一般がいうところの、表の名声とは違って、人間としてあまり尊敬できない音楽家がずいぶん多いように思う(97ページ)など、苦労が偲ばれる記述とそれと闘って勝利し溜飲を下げる記述の対比が印象的です。
フジコ・ヘミング 新潮文庫 2008年11月1日発行(単行本は2000年5月、求龍堂)
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