東京地裁で2015年10月から2016年9月までの1年間に言い渡された不貞行為慰謝料に関する判決123件と、2016年12月から2019年2月までに言い渡された不貞行為慰謝料に関する判決150件を分析して解説した本。
元裁判官(現弁護士)である著者が法律雑誌に連載した論文が第1部(2015年10月から1年分の判決の分析)の元になっていることから見て、(抽出の際の判断が微妙な判決もあるでしょうから完全とは言えなくても)実質的に一定期間に東京地裁が言い渡した不貞行為慰謝料に関する判決全件を検討したものと評価してよいと思います。私たちが通常読むことができる判決の検討は、法律雑誌に掲載されたものに限られ、また著者の関心等により選別された判決を検討したものです。東京地裁が一定期間に言い渡した判決全件の検討の場合、裁判所の判決の傾向が見えるわけで、それだけでも私たち弁護士にとっては大変貴重な文献と言えます。
大量の判決を紹介する関係上、判決文の引用がなされず著者が論点ごとに要約して紹介していてそこは本当はより判決文に近いものを読みたいという思いはありますが、それでも不貞行為の有無の認定(何を根拠にどう評価して認定したか)についての事案と裁判所が考慮した事情の一覧表、不貞行為時の婚姻関係の破綻の認定や相手方の故意・過失(配偶者がいることの認識、破綻しているという認識)の判断についての双方の主張と裁判所の判断の一覧表は、弁護士にはとても参考になります。
私としては、これが一定期間とは言え東京地裁の全判決とすると、不貞行為時には婚姻関係が破綻していたという主張がほとんど認められていないことに衝撃を受けました。そう簡単ではないとは思っていましたが、これほどまでにほとんど認められない(被告側の主張立証責任のハードルがここまで高い)とは…
私の感覚では、不貞行為では男性が主導的なパターンが多く女性が被告の場合にはそれほど高い慰謝料の支払いは命じられないと思っていたのですが、女性被告に対しても、男性が主導的だったとは言えないと認定され、200万円、300万円の支払が命じられているケースが散見され、慰謝料額に性差はあまり感じられません。私の感覚はもう古いというか、先入観にとらわれたものだったのですね。
第1部の74番の判決(126ページ等)。妻がソープランドで働いていて(夫は知らなかったと主張)そこに客として週1、2回通った被告に対して慰謝料150万円、弁護士費用15万円の支払いが命じられているんですが、これって…違和感ありませんか?
興信所の調査料、数十万円が多いですが、304万4609円(20万円だけ認容:381ページ)とか237万円(60万円だけ認容:378ページ)なんていうのもあります。高っ! 請求しても支払が認められないケースも多いですし(380~381ページ等)。
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大塚正之 日本加除出版 2022年4月27日発行
元裁判官(現弁護士)である著者が法律雑誌に連載した論文が第1部(2015年10月から1年分の判決の分析)の元になっていることから見て、(抽出の際の判断が微妙な判決もあるでしょうから完全とは言えなくても)実質的に一定期間に東京地裁が言い渡した不貞行為慰謝料に関する判決全件を検討したものと評価してよいと思います。私たちが通常読むことができる判決の検討は、法律雑誌に掲載されたものに限られ、また著者の関心等により選別された判決を検討したものです。東京地裁が一定期間に言い渡した判決全件の検討の場合、裁判所の判決の傾向が見えるわけで、それだけでも私たち弁護士にとっては大変貴重な文献と言えます。
大量の判決を紹介する関係上、判決文の引用がなされず著者が論点ごとに要約して紹介していてそこは本当はより判決文に近いものを読みたいという思いはありますが、それでも不貞行為の有無の認定(何を根拠にどう評価して認定したか)についての事案と裁判所が考慮した事情の一覧表、不貞行為時の婚姻関係の破綻の認定や相手方の故意・過失(配偶者がいることの認識、破綻しているという認識)の判断についての双方の主張と裁判所の判断の一覧表は、弁護士にはとても参考になります。
私としては、これが一定期間とは言え東京地裁の全判決とすると、不貞行為時には婚姻関係が破綻していたという主張がほとんど認められていないことに衝撃を受けました。そう簡単ではないとは思っていましたが、これほどまでにほとんど認められない(被告側の主張立証責任のハードルがここまで高い)とは…
私の感覚では、不貞行為では男性が主導的なパターンが多く女性が被告の場合にはそれほど高い慰謝料の支払いは命じられないと思っていたのですが、女性被告に対しても、男性が主導的だったとは言えないと認定され、200万円、300万円の支払が命じられているケースが散見され、慰謝料額に性差はあまり感じられません。私の感覚はもう古いというか、先入観にとらわれたものだったのですね。
第1部の74番の判決(126ページ等)。妻がソープランドで働いていて(夫は知らなかったと主張)そこに客として週1、2回通った被告に対して慰謝料150万円、弁護士費用15万円の支払いが命じられているんですが、これって…違和感ありませんか?
興信所の調査料、数十万円が多いですが、304万4609円(20万円だけ認容:381ページ)とか237万円(60万円だけ認容:378ページ)なんていうのもあります。高っ! 請求しても支払が認められないケースも多いですし(380~381ページ等)。
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大塚正之 日本加除出版 2022年4月27日発行
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