伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

受験生は謎解きに向かない

2025-01-05 21:45:07 | 小説
 「卒業生には向かない真実」で完結した「自由研究には向かない殺人」以下3冊シリーズのエピソード0です。
 1作目が明るく始まったもののどんどん暗くなっていったシリーズの前日譚が、ちゃんと明るいトーンに戻っているところはさすがと思いました。1作目で不自然というか唐突に思えたピップが5年前に起きて誰も不審に思っていない殺人事件の真実を疑いその解明を自由研究の目的にする動機もうまく説明していて、エピソード0としては出色のできといってよいと思いました。
 友人が作成した殺人事件ミステリーゲームの登場人物に友人たちがそれぞれなりきってプレイヤーとして推理するという設定については、それぞれが指示に従うゲームのため、自分が扮している人物の真実を知らないので、登場人物の内心を描いてもゲーム上の人物の内心はわからないということになって、ある意味で巧妙なというか斬新さがあります。事件の捜査/調査を自由研究のテーマにするという第1作の設定も合わせ、こういう思いつきの巧みさに感心しました。
 他方で、殺人事件自体が所詮はゲーム(絵空事)ということが、読者のみならず登場人物もそう思っているというのが二重に真剣味を欠いてしまうこと、各人がゲーム上の登場人物の名前と作品中の登場人物の名前で呼ばれ、名前を覚えるのが苦手な私はシーンごとに人物の同定に苦しみ混乱して読みにかったことが、残念に思えました。


原題:KILL JOY
ホリー・ジャクソン 訳:服部京子
創元推理文庫 2024年1月12日発行(原書は2021年)

「自由研究には向かない殺人」は2023年9月12日の記事で紹介しています。
「優等生は探偵に向かない」は2023年9月13日の記事で紹介しています。
「卒業生には向かない真実」は2023年11月20日の記事で紹介しています。

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