十月十二・十三日、当山において第三回松林寺集中講座を開講します。法話あり、落語あり、音楽ありの講座で、たくさんの方が来場して下さいます。
お寺は本来、いかに生きるかを学ぶ場所であるはずで、生きているうちにこそ来るべき場所である、という思いから、この講座を行っています。
松林寺のある最上町は、山形県の北東の隅に位置し山に囲まれた田舎町です。都会にくらべれば「何もない」町かもしれません。実際に町の人の声を耳にすると、自分の町への愚痴や批判が多く、誇りを持ってここに生きている人が少ないように感じられます。
しかし、ここで生きるのに「こんな町イヤだイヤだ」と言って生きるのと、「ここがいい、ここでよかった」と言って生きるのとでは人生がはるかに違ってくると思います。
また、親が「こんな町イヤだ」と言って生きているとすれば、それを聞いて育つ子供は、「自分はイヤな町に生まれてしまったんだ」と思うでしょう。「早くこんな町出て行かなければ」とも考えるでしょう。それは子供にとって一番不幸なことではないでしょうか。
本当にこの町が嫌なら、東京でも外国でも好きなところで生きればいいのです。法律で移動を禁じているわけでもありません。しかし、どんな理由にせよ、事情にせよ、ここで生きていくのなら、「ここがいい」と思って生きたいと思うし、「ここでよかった」と思って死にたいと思います。
どこに移動したとしても、その土地によって幸せが決まるわけではなく、その土地がいい場所かどうかは、そこに生きる人がそこでどう生きるかによるのでしょう。自分が住みよい場所は自分で住みよいようにつくっていくしかないのです。
人生はまことに短い。後悔しないのはどっち?と道の選択に悩むよりも、選んだ道で後悔しないように頑張るしかないのです。ましてや、過ぎてしまった道を後悔することに時間を費やすのはまことに残念なことです。
この町で生きることを選択した人々が、この町でよかったと思えるような一つとして、松林寺集中講座が役に立てばいいなと思っています。
今生きているここで、精一杯生き切りましょう。
(曹洞宗東北管区教化センター「心の電話」H20.10.01~10原稿)