難読の地名は全国各地にあるが、その代表格の一つと言えるのが「及位(のぞき)」だろう。山形県最上郡と秋田県由利本荘市、大仙市にある。
難解なために、その由来には色々な推測がなされ、「山から周囲をのぞいた」というような解釈がなされてきたようだ。では何故「及位」という漢字を当てたのか、一説によると、修験道の山伏が、高い岩山の絶壁から体を突き出して眼下をのぞく荒行をするとなにがしかの「位」に達することができたのだと。
では、そのような岩場が山形県と秋田県のそれぞれに存在したのかというと、どうもそうではないらしい。
「ノゾキ」をアイヌ語で解読すると、「ノ・ソッキ」で、「よい・ねぐら」という意味になる。獲物の熊などがねぐらにしている場所、つまり、縄文の人々にとっての好猟場であった。
山形県の及位も、秋田県の及位も、山深い地形にあり、熊などのねぐらであったこともうなずける。但し、どういう理由で「及位」という字を充てたのかはいろんな説があるが分からない。
また、地籍の上で納税を免れた地域に「除地」という意味で、つけられた可能性もある。
川西町に「莅」、宮城県に「除」と書いてどちらも「ノゾキ」と読む地名がある。
余談だが、70年代に活躍した(現在も活躍中)フォークシンガーであり画家でもある、友川かずきの本名は「及位典司」。秋田県旧山本郡八竜村の出身で、おそらく先祖が及位から移り住んだのだろう。友川は「のぞき」という語呂を嫌って「友川」にしたと言われている。
(参考資料:大友幸男「日本のアイヌ語地名」他)