なあむ

やどかり和尚の考えたこと

サンサンラジオ306 ミャンマーを憂う

2021年03月21日 05時00分00秒 | サンサンラジオ
三ちゃんのサンデーサンサンラジオ。第306回。3月21日、日曜日。

昨日は彼岸の中日でした。
今年は大雪だったため駐車場の雪が残り、檀家衆の車の出入りに大変でした。
雪国は春彼岸に墓参りができないので、ほとんど全檀家が寺の位牌堂をお参りに来ます。
それが1年初めの寺参りという人も多く、自分の家の位牌ばかりでなく親戚の位牌にも供物を上げてお参りします。
今の供物はほとんどが袋のお菓子や果物ですが、以前はぼたもち、炊き込みご飯、だんごなどでしたからその後の始末が大変でした。
母親の話では、昔は空の重箱を持ってきて上がった供物をいただいていく家もあったとか。貧しい家庭にとってはめったにないごちそうだったに違いありません。それを楽しみに待っていた子どもたちもいたでしょう。
持てる者は供え、持たざる者はいただく、そんな循環の機能がお寺にあったということです。東南アジアの寺院には今もそれに近い機能があるように思います。
昨日は、毎年手伝いをしてくれる6名と家族も総出で片づけをして、お菓子や果物は「お護符」として分配しました。小さな子供がいる家にもおすそ分けするようにしていて、一部は山口県の友人にも送ります。みんな健康で暮らしてくれればと思います。

ミャンマーの情勢が気になって心が晴れません。
ミャンマーは、長年にわたり軍政にありましたが、2015年の選挙によって民主化が実現し、海外からの投資も増大してアジア最後のフロンティアと呼ばれていました。
ところが、2月1日の軍部のクーデターにより、一気に元の軍部による独裁政権に逆戻りしてしまいました。
昨年11月に行われた総選挙でスー・チーさん率いるNLDが再び圧勝し、軍の力が弱まることに危機感を感じたフライン総司令官らがクーデターを起こしたのです。
ロヒンギャに対する迫害も軍部によるもので、それらに対する追求から逃れたいという狙いもあったと思われます。
しかし、毎日のように罪のない一般市民の命が奪われる状況には、ふつふつと湧いてくる怒りが抑えられません。
本来国民を守るべきはずの軍隊と警察が国民に銃を向けるという事態はとても看過できません。一体軍隊は何を守ろうとしているのか。
軍部はおそらく、以前に戻るだけだ、国民もすぐになれるだろうと甘く見たのだろうと思われ、それが誤算だったでしょう。
軍政から解放されて一度自由の空気を味わった国民は、そう簡単に圧政に戻ることを受け入れはしなかったのです。
武器を持たない国民が武器の代わりに使ったのはSNSという情報手段でした。
一人一人は弱い存在ですが、集団になれば力となります。国民の心をつなぐ情報手段は大きな武器となりました。
ただし、ここにきて軍部はWi-Fiの接続遮断、民間新聞の休刊など、情報を断絶する処置を取り始めているようです。
このまま情報が遮断されてしまえば、見えないところでどんな残虐な事態が起こるか益々心配されるところです。
熱心な仏教徒が多いミャンマーですが、僧侶たちも声を上げ、デモを行っているようです。しかしその僧侶さえも拘束されているという情報があります。
国民に銃を向けることに耐えられない軍や警察の人の中からインド側に亡命する人も出ているようで、その心の苦しみが察せられます。
何とかしなければなりません。
軍部が軍政から手を引くつもりはなさそうです。一方国民側も徹底的に不服従で抵抗すると予想されています。
どこに着地点を見出すのか、専門家の誰にも見通しができません。
以前のように少数民族との内戦が再燃するかもしれませんし、新たな難民が発生することも予測されています。
国民があきらめてしまうことで軍事政権は長期化、既成事実化してしまうでしょう。
海外の人々がしっかり監視をして、国民が孤立しないように見続けなくてはなりません。

シャンティ国際ボランティア会では、ミャンマーの国内支援を行う事務所をピイに置いているほか、タイ側に逃れた難民がキャンプから帰還する受け入れのための事業事務所をパアンに置いています。
それぞれにローカルスタッフを雇用し、前政権との連携の下教育支援を行ってきました。
それがクーデター後に活動の縮小と休止を余儀なくされています。
最も困ったのはスタッフの給与が支払えないことです。銀行が閉鎖されATMが止まっています。パアンの事務所には現金が日本円で5000円しかないという状態です。
スタッフの生活を支えるために、何とかお金を送らなければなりません。今、その方法を模索しているところです。
これまでせっかく積み上げてきた活動と活動の拠点を閉鎖することは、ミャンマーの国民にとっても大きな痛手となります。
活動ができないのに事務所を維持しスタッフに給与を支払うのは、団体の資金繰りとしても大変厳しいのですが、事態が沈静化するまで何とか維持して次につなげていきたいと苦心しているところです。

ミャンマーに安定が戻ることを心より祈ります。

今週はここまで。また来週お立ち寄りください。