Fsの独り言・つぶやき

1951年生。2012年3月定年、仕事を退く。俳句、写真、美術館巡り、クラシック音楽等自由気儘に綴る。労組退職者会役員。

冬籠り

2021年01月28日 16時54分11秒 | 俳句・短歌・詩等関連

 寒いと思ったら、すでにみぞれになっていた。予報を見るとまもなく雪となり、21時までは降るらしい。
 雪が混じるのは、今年初めてだと思う。同時に午前中に病院に行ってよかった。

★鉄瓶に傾ぐくせあり冬ごもり      久保田万太郎
★背に触れて妻が通りぬ冬籠       石田波郷

 第1句。火鉢に据えられた五徳の上の鉄瓶のことだろうか。あるいは囲炉裏の自在鉤に吊るされた鉄瓶のことだろうか。いづれももはや若い人には死語であろう。かくいう私も、火鉢と五徳は我が家にあったので知っているが、自在鉤をいじったのは山小屋で2度ほどあるだけ。旅館で飾ってあるものや、民具を並べた小さな博物館のものを見ることはたびたびある。
 五徳でも鉄瓶の座りが悪くて傾いてしまうのが気になる。まして自在鉤の場合は自在鉤の動かし方だけでなく、鉄瓶のかけ方にもよってすぐに傾いてしまう。下手するとお湯がこぼれて大変なことになる。少量でも灰が小さな爆発のように舞い上がってしまう。
 冬ごもりをして、じっと鉄瓶を見つめ、その音を聴いている時間。外に出られないほどの雪か寒さを感じる。秋口ならば、体を動かしてここまで鉄瓶を意識することもないのである。鉄瓶にはつい水を入れすぎて、沸騰すると口からお湯がこぼれることもある。これもまた灰を台無しにし、部屋中を灰だらけにしてしまう。
 鉄瓶の微かな傾きと同時に湯気と、曇る眼鏡と、そして褞袍(どてら)の温い重さを感じる句である。

 第2句、夫婦の情愛が感じられる。病弱の波郷にとっては、妻の手が触れる一瞬というのはホッとしたなごみの一瞬だったと思われる。意識的に手で夫に触れるだけでなく、豊かとはいえない小さな家の狭い室内で、行き来する妻と体が触れてしまう一瞬の温みを感じる。



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