夕食後は宿題に疲れたので、読書タイム。「バロック美術 西洋文化の爛熟」(宮下規久朗、中公新書)の第1章「聖 カトリック改革とバロックの舞台」の第6節、及び第2章「光と陰 カラヴァッジョの革新とその系譜」の第4節までを読み終わった。
「西洋絵画のもっとも顕著な特色は光を表現したことである。東洋では西洋絵画のような明暗法は生まれなかった。西洋でもっとも明暗法が追及され、光が画面のもっとも重要な構成要素になったのはバロック時代であった。」
「カラヴァッジョは当初から光の方向性やそれが作り出す明暗のコントラストに意識的であった。光への感受性は阪神的な細部描写とともに、ネーデルラントの作品に感化された者であろう。」
「カラヴァッジョの宗教画の最大の特色は現実性や臨場感であり、奇蹟が実際に目の前で起こっているようなヴィジョンを与えることであった。」
「奇蹟というものは、客観的な復活や治癒などではなく、すべて内面的な現象にすぎず、神も信仰もすべて個人的な内面や真理の問題に帰着する。それを説得力のある様式で初めて視覚的に提示したのはカラヴァッジョ出会った。‥劇的な明暗、質感豊かな細部描写、画面からモチーフが突き出るような表現など、観者のいる現実空間にリアルな幻視をもたらすための仕掛けであった。」
「カラヴァッジョ様式の特徴はまず、モデルを直接写したかのような迫真性や静物画的な事物の質感描写や細部描写を備え、理想化を排した自然主義にあった。次に重要なのが明暗法である。暗い空間に強い光が差し込み、人物を鋭く浮かび上がらせる・・・。光と闇のコントラストには、聖と俗や善と悪といった象徴的意味が宿っているように見えるが、光と闇の用い方こそがカラヴァッジョ様式の最大の特徴であった。」
「光を追及してきた西洋美術は、カラヴァッジョの出現によって光と闇の対比を用いて現実をドラマに替える絵画を生み出したが、ベラスケスによって光と闇の相克が止揚されて、現実が現実のままに結晶した絵画が生み出された。」