本日は、ナサニエル・ローゼン&落合敦デュオコンサートを、みなとみらいホールの小ホールへ聴きに行った。
二人分のチケットを貰えた。ブラームスのチェロソナタ2番、ドビュッシーのチェロソナタ、その外ブルッフ、ウェーバー、ラフマニノフなど7曲。なかなかの選曲である。
残念ながら演奏者のことは存じ上げないが、チェロのナサニエル・ローゼンはチャイコフスキーコンクール金メダル・ピッツバーグ交響楽団首席というなかなかの経歴の65歳。一昨年より日本在住となっている。ピアノの落合敦はフェリスの教授とのこと。
チェロに興味のある妻にはもってこいの演奏会と思われる。全席自由席、良い席に座ることが出来るか心配したが、やや後方の中央の席を確保できた。
ブラームスのチェロソナタはいつもヨー・ヨー・マとエマニュエル・アックスのものを聞いているので、少々チェロが地味に聞こえてもの足りなく感じた。
ところが初めて聞くドビュッシーのチェロソナタになって俄然目が冴えた。曲がとても技巧的でピアノとチェロの掛け合いが難しいと思われたが、そんなことを微塵も感じない緊張感溢れる演奏であった。特に第二楽章・第三楽章の細かな掛け合いの息がぴったり合っていると感じた。チェロもピアノも細かく跳躍する音型が続くのだが、チェロという楽器がよく鳴っている。音の厚みもある。
解説では1738年製の「モンタニアータ」なる楽器を使用しているという。どういう楽器だか知識は無いが、ドビュッシーなどに適した楽器とは思えないにも関わらず存分に楽器が鳴っていると感じた。演奏者の力量なのだろう。
そして、休憩とピアノのソロの後、これも私ははじめて聞くブルッフの「コル・ニドライ」。解説ではヘブライの旋律に基づく曲のようだが、「哀歌」ともいうべき情感溢れる静かな祈りのような曲である。聴いた瞬間に気にいった。それをあまり感情移入を感じさせない感じで弾いている。謹厳実直な感じのチェリストが不器用な感じで情感溢れるように弾くととても私などは引き寄せられてしまう。あまり情に流された演奏はだれてしまうが、そんな甘さが無いのがいい。
続いての曲は現代日本の作曲家久木山直(くきやまなおし、1958年生)の「リニアG」という技巧を駆使するかなり活発な曲。この曲も細かく跳躍する恩恵が生命のチェロの曲だが、実に楽器がよく響いていて好感の持てる演奏であった。時間も短く感じるほど緊張感をもって聞くことが出来た。
続いてウェーバーの「アダージョとロンド」もたっぷりチェロの音を聞かせる曲である。
この後半の3曲は選曲も順番もなかなか凝っている。充分にチェロの音を堪能することができた。
アンコールのチャイコフスキー:ノクターン op.19/4 チェロ・ピアノ、そしてグラズノフ:スペインのセレナードもたっぷりと聞かせてもらえた。
この18世紀に作られたという楽器からすれば、本日のブルッフやウェーバーのような曲が適していると思われるが、現代の音楽でも充分にチェロの重厚な音を響かせながら聞かせる技量に敬服した。同時にピアノの技量にも感心した。
とてもいい演奏会であったと思う。チケットをいただき感謝この上ない。