メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

『火の鳥 1 黎明編』(角川書店)

2016-05-18 12:50:36 | マンガ&アニメ
『火の鳥 1 黎明編』(角川書店)
手塚治虫/著 初版1986年(1992年 31刷) 1100円

※2001.8~のノートよりメモを抜粋しました。
「マンガ感想メモリスト」カテゴリーに追加しました。

執筆された作品の順序(ウィキ参照
●黎明編初出:初出『漫画少年』(1954年7月号 - 1955年5月号)未完
●エジプト編:初出『漫画少年』(1954年7月号 - 1955年5月号)未完
●ギリシャ編:初出『少女クラブ』(1956年11月号 - 1957年7月号)
●ローマ編:初出『少女クラブ』(1957年8月号 - 12月号)
●黎明編:初出『COM』(1967年1月号 - 11月号)
●未来編:初出『COM』(1967年12月号 - 1968年9月号)
●ヤマト編:初出『COM』(1968年9月号 - 1969年2月号)
●宇宙編:初出『COM』(1969年3月号 - 7月号)
●鳳凰編:初出『COM』(1969年8月号 - 1970年9月号)
●復活編:初出『COM』(1970年10月号 - 1971年9月号)
●羽衣編:初出『COM』(1971年10月号)
●望郷編(COM版):初出『COM』(1971年12月号)・『COMコミックス』(1972年1月号)
●乱世編(COM版):初出『COM』(1971年12月号)・『COMコミックス』(1972年1月号)
●望郷編:初出『マンガ少年』(1976年9月号 - 1978年3月号)
●乱世編:初出『マンガ少年』(1978年4月号 - 1980年7月号)
●生命編:初出『マンガ少年』(1980年8月号 - 12月号)
●異形編:初出『マンガ少年』(1981年1月号 - 4月号)
●太陽編:初出『野性時代』(1986年1月号 - 1988年2月号)
●休憩 INTERMISSION:初出『COM』(1971年11月号)



あらすじ(ネタバレ注意

クマソの女ヒナクの病を治すため、天は火の鳥を捕らえて焼死。

邪馬台国の医師グズリは青カビで彼女を治し、再婚するが、
彼はスパイで、後に軍で攻め入り、クマソは皆殺し。

軍の長・猿田彦は、ヒナクの弟ナギを奴隷に連れて帰り、
ヒミコの命により、火の鳥を射る訓練をさせ、息子のように育てる。

ヒミコの呪術による統治は古いと言って、弟スサノオは暴れて牢に入れられる。

日食が起こり、ヒミコを討とうとして失敗したナギと猿田彦(天狗のモデル? 九州の原住民か?)と九州に戻る。

ヒミコらの軍も火の鳥を求めてヨマ国の弓彦とともに上陸。

ナギは姉と再会。
グズリとの子をたくさん産み、村を再生させると聞く。

火山の噴火でヒナクとグズリは山奥に閉じ込められ、太陽は見れたが、
わずかに生える草と虫を食料にして生き延びる。

ナギらは大陸からきた高天原族(モンゴル系?)ニニギと会い、
ウズメと結婚することで救われる。
彼女はヨマ国の美人だが、醜いフリをして生き延びた。

日本の原住民を征服してヤマト政府をつくる。

余命少ないヒミコは、スサノオを頼るが、再び両目を焼いて追放する。
弓彦は火の鳥の首を切って捕らえ、ヒミコに渡すが、ヒミコは絶命。

馬に乗ったニニギ軍と猿田彦を長とした邪馬台国との争いは、ニニギに軍配が上がり、邪馬台国民は皆殺しにされるが、
ウズメは「女は子を産み、その子はやがてあなたを滅ぼす」と言って去る。

ヒナクの息子タケルは、崖を登って、ついに外の地を踏み、自分の子を産む女を探して戻ると誓う。



神話を学術的見地から描いた。

「神武天皇はじめ、10代ほどの天皇たちは祟神天皇の頃に作り出された架空の人物らしい。
 だから皆100歳まで生きたなどとデタラメなことを書いている」

などの件も興味深い。

「虫たちは、自然が決めた一生の間、ちゃんと育ち、食べ、恋をし、卵を産んで、満足して死んでいくのよ。
 人間は、虫や動物より長生きだわ。
 その一生の間に生きている喜びを見つけられればそれが幸福じゃないの?」

人の歴史は、どの時代も殺人と掠奪の繰り返し。
今あるものに決して満足せずに奪い合う。
それが文明を発達させたかもしれないが、幸せはまだ見つからないままだ。


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『火の鳥2 未来編』(角川書店)

2016-05-18 12:50:35 | マンガ&アニメ
『火の鳥2 未来編』(角川書店)
手塚治虫/著 初版1986年(1991年 27刷) 1300円

※2001.5~のノートよりメモを抜粋しました。
「マンガ感想メモリスト」カテゴリーに追加しました。


あらすじ(ネタバレ注意

3404年。地球は滅び、人々は地下都市に住んでいる。

ユーオーク、ピンキング、レングード、ルマルエーズ、ヤマトの5都市が分裂国家として
それぞれのコンピュータ頭脳に支配されている。

山之辺は、一級宙士ロックにムーピーの恋人タマミを抹殺しろと命令され、
人、動物を復活させようと研究する猿田博士のもとに逃亡する。

「ムーピー」
他星から連れてきた強い生命体の不定形生物で、人のイメージにより何にでも変形する。←映画『惑星ソラリス』みたい/驚

火の鳥は、山之辺こそ人類を救う鍵だと教える。

ムーピーを研究するため命を捧げるよう説得するうちに、博士は情が移る。

ついに5都市は核戦争で一気に滅び、逃れたロックも絶望して自殺。

山之辺は、鳥に連れられて宇宙生命(コスモゾーン)の仕組みを教えられ、
ヒトの誕生までの気の遠くなる時間、肉体が滅びてもなお永遠に生き続ける、
ロボットでも、合成物質でも、高等化したナメクジ(!)でもなく、
再び進化の過程からヒトが誕生し、山之辺は神と呼ばれていたが、鳥の中に合体する。
タマミとも一緒になり、本当の永遠の生命の1つになる。


ロシアの「ファイアーバード」、中国の不老不死の「鳳凰」、ヨーロッパの「不死鳥(フィーニックス)」など
世界中で伝えられ、繰り返されるヒトの歴史に嘆きつつ、
“いつか生命を正しく使ってくれるようになるだろう”と願い、見守る。

作品中の火の鳥は、自らを「地球の一部、動ける細胞みたいなもの」と言っている。
細菌が寄生している動物の姿などイメージできないように、
地球も、ヒトの知る限りの宇宙もまた、より広大な生命体のほんの一部でしかない、という壮大な考えがスゴイ!

それにしても、今シリーズは、どういう順番になっているのか、1話完結だから、
気にすることはないかもしれないけど、「No.X」て巻数とあとがきの順序が全然違うため、
手塚が全体の構成イメージをどうしたかったのか分からなくなった。

とにかくヒトの歴史は繰り返していて、火の鳥は、時空を超えて見守っているのだろう。
無常の中に希望が見えた1作。


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『火の鳥3 ヤマト異形編』(角川書店)

2016-05-18 12:50:34 | マンガ&アニメ
『火の鳥3 ヤマト異形編』(角川書店)
手塚治虫/著 初版1986年(1999年 39刷) 1400円

※2001.5~のノートよりメモを抜粋しました。
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あらすじ(ネタバレ注意

ヤマト編
奈良県明日香村の石舞台古墳という石塚をもとにヤマトタケルの神話を描いた。

クマソ退治に行ったオグナは正しい。
日本史を残し、平和を望むクマソと、美しい妹カジカに魅かれ、
火の鳥に毎晩、笛を吹いて聴かせて手なずけ、迷う心に鳥が答え、
クマソを殺して、父の墓建設を公園(?)にしちゃう。

鳥の血を舐めて生き埋めになったタケル、カジカと仙人は、半年ほど生き長らえたが、永久の愛を誓って果てた。

後に、生き埋めは廃止され、埴輪(!)の風習にかわる。



異形編
血も涙もない成り上がり武士の父に男として育てられた左近介は、
父の鼻のがんを治す、800年も生きているという蓬莱寺の尼御前を切る時、
尼は「時間は止まって、私にかわる者が生き続ける」と言い残す。

30年前の応仁の乱の兵が流れ着いたり、外に出ようにも閉じ込められ、
尼に扮して傷つき、病める人々を鳥の羽根で救ううちに、
人の姿でない妖怪も来るようになり、分け隔てなく助ける。

ある日、自分が生まれた日まで知り、自分に斬られる恐怖におののく。
火の鳥は、殺人の罪の償いに、外世界の者を無限に救えば、
30年ごとに繰り返すうち現在に戻り、1度外に出られるという。

昔の繰り返しで、父のもとを訪れ、若き自分に出会い、長年仕えた可平と別れ、
同じように自分に斬られる。

可平は後に土佐光慶として「百鬼夜行絵巻」を遺す。

とくに後編は、フシギで心に残る話。
男として育てられた女の悲しみ、心から仕える可平との微妙な情も心を打つ。


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