メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

『手塚治虫のブッダ-赤い砂漠よ!美しく-』(2011)

2014-01-21 11:59:40 | 映画
『手塚治虫のブッダ-赤い砂漠よ!美しく-』(2011)
監督:森下孝三 声出演:吉永小百合、堺雅人、観世清和、吉岡秀隆 ほか

原作のマンガは以前読んだことがある。この劇場版も公開当時、話題になっていたっけ。


▼story
アシタは、ヒマラヤで遭難した時、動物たちが焚き木を集めてくれ、ウサギが自らその火に飛び込んだという

シャカ国は、隣国コーサラが攻め入ってくる脅威に常に脅かされている。
マーヤ王女は、白いゾウが胎内に入る夢を見て、懐妊。すべての動植物に祝福されたことから、
国を守る偉大な王子の誕生を待ち侘びるが、シッタールダ(目的を遂げる者の意)が産まれてすぐに亡くなる。

奴隷の少年チャプラは、主人から頼まれた反物をタッタに盗まれてしまい、
3日で取り戻してこないと母親を売ると脅される。
タッタは同情し、フシギな力を使ってトラにのりうつり、母を救う。

コーサラが攻め入り、タッタの村は全滅。姉らも皆殺しにされ、必ず復讐すると誓い、チャプラも協力する。
コーサラ軍の大将が沼でワニに襲われているのを見たチャプラは、彼を利用して貴族にのしあがると決意する。

シッタールダは城の外で「生老病死」に苦しむ民を見て、どうしてこの世はこんなに苦しいのかと悩む。
身分の低いミゲーラと想い合うも、国王に知られて怒りを買い、
「ヤショダラ姫と結婚するならミゲーラを助ける」と言われて承諾する。
ミゲーラはみせしめに両目を焼かれる。

チャプラは順調にコーサラで名を上げて貴族の仲間入りを果し、大臣の娘と婚約を交わす。
チャプラを筆頭にコーサラ軍は再びシャカ国を攻める。
バンダカ将軍に指揮を命じると、自分を国王にしたらやってやると言う。

毒矢に倒れて生死をさまようチャプラ。
アシタの弟子ナラダッタは、解毒の薬を知るためタッタがアシタのもとに行くのを許す。
タッタが次々と動物を犠牲にした罰として、ナラダッタは永遠に荒野をさまよう獣と化す。

シッタールダは、すべての装飾品を捨て、髪を切り、城を出て、修行の旅に出る。。。



カースト(インドの身分制度)
1.バラモン   宗教儀式などを行う。
2.クシャトリア 王、貴族
3.バイシャ   市民
4.シュードラ  奴隷

ブッダ(目覚めた人の意)

劇場版第2弾『BUDDHA2 手塚治虫のブッダ -終わりなき旅-』が2014年2月8日に公開予定。


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『マダガスカルがこわれる』(ポプラ社)

2014-01-21 10:28:37 | 
『マダガスカルがこわれる』(ポプラ社)
藤原幸一/写真・文

『ワンダフル・プラネット!』(集英社インターナショナル)にも大規模な土壌流出の写真が載っていて
ショッキングだったが、かつての自然の楽園がどうしてこうなってしまったのかが分かる1冊。

ヒトの破壊力の凄まじさ、動植物との共生とはどういうことをいうのか?
これは遠い島の話だけではない。貧富の差、輸出入される動植物、、、
鮮やかな写真1枚1枚を見て、もう一度いのちのつながりについて考えてみる。


【内容抜粋メモ】


マダガスカルには世界の動植物種の5%が生息していると言われる。
近年、マダガスカルでさまざまな新種の生き物が発見されている。
一説では、マダガスカル固有の動植物は15万種にのぼるという。

人口爆発や貧困によって森が切り開かれ、
かつて国土のほとんどを占めていたはずの森が島の10%を切ってしまった。


スパイニーフォレスト
この地域独特の幹や枝に棘をもつ植物からなる原生林。


●バオバブ並木

1998年に襲ったサイクロンで4本のバオバブが倒れた。
バオバブの根は、太く広範囲にわたって巨木を支えているため、
ふつう、サイクロンで倒れることはめったにない。

村の人口が増え、畑や水田を作るために森を焼いても
バオバブは幹に水分を多く蓄えることができるので生き残った。

だが、乾燥した生態系に水が引かれたことで、根腐れを起こし、
支え合ってきた森の木々が消えたことで孤立し、強風で倒れるケースが増えてしまった。

かつては、バオバブの実を食べる大型のキツネザル類が生息していた。
かれらは硬い実を食べて種子散布をおこなっていたにちがいない。
現存するマダガスカルの動物は、バオバブの木の実は食べない。
たとえ種が芽生えても、放し飼いされた家畜によってすぐに食べられてしまう。



こうしてバオバブは、発芽のプロセスもまったくなくしてしまった。


●傷つけられるバオバブの木

実をジュースに、葉を胃薬として重宝されていたバオバブ。
今では樹皮が剥がされて、家の屋根やロープの材料にしたり、
落書きされたりして、無傷の木を探し出すのは奇跡に近い。



 
焼かれた森の跡に、トウモロコシ、キャッサバ、イネが植えられている。

村人はほとんど毎日森で木を切り倒して、燃料用の薪や炭を作っている。
現在の森林面積は、すでに国土の10%以下になり、
残った森も約20%は単一種からなる植林や再生林だという。



「硬くて太く、炭にして高く売れる木は、もうほとんど見つからない」と村人は言う。
炭に向かない木だと半分以上が灰になってしまう。


●村人の主食は米



国民の75%が農業従事者。だが、その収穫率は著しく低い。
ほとんどの水田は、山地から流れ出る谷川の水を棚田に引きいれる方法をとっていて、気象に左右されやすい。
乾水期には干ばつ、多雨期にはイネが水没する被害が絶えない。
作付け面積の拡大より、人口の伸びが大きいため、
ずっと米の輸出国だったマダガスカルは、1970年以降、輸入国になってしまった。



ヒトが住み始めて、伐採と焼畑農法により森林が消え、
今では乾燥したサバンナ化と山肌の侵食が進んでいる。
伐採は禁止されているが、倒れた木を拾うのは許されているため、
村人は事前に切り倒し、枯れた頃回収に来る。



赤土が川に流れ込み、海まで汚染を広げ、海の生態系まで破壊している。

10年間で人口が1.3倍に増える人口爆発が起こり、
国民の約60%が1日1ドル以下の生活費で暮らす、
世界でも最貧国の一つとされている。



森を切り裂いて270kmものパイプラインが建設されていた。
ニッケルやコバルトを運ぶため、
日本の商社などの外資が積極的に開発に乗り出している。

抗がん剤などに使われる植物の医薬品としての価値は157万7800ドルなど、
マダガスカルの森は多くの経済的な効果を生んでいる。


 
どこまでも続く赤茶けた大地は、「サイザル麻」のプランテーション
サイザル麻の農場は、5人のヨーロッパ人の農場主によって経営されている。
総面積は東京ドームの約5350倍の25000ha、
動物たちが生き延びることができる「ベレンティ保護区」はわずか250ha。

サイザル麻は「地球に優しい繊維」としてバッグや敷物に使われている。


●サトウキビ農園

農民が水田に水を引こうとサトウキビ農園の水路を壊し、
あたりが水びたしになってバオバブを枯らしている。



毛が抜け落ちる病気になったワオキツネザル

侵略的な外来種として知られる「ギンネム」を食べるため、
ギンネムに含まれるミモシンが新陳代謝を阻害しているのが原因と言われる。


●カメレオン
全世界で約150種知られていて、そのうち72種がマダガスカルに生息している。


●シファカ

マダガスカルにしかいない原猿類。
地上をぴょんぴょん横歩きする姿は、日本でもCMで流れ話題を呼んだ。
森が消え、隣の森に行くにも慣れない地上を何kmも跳ねて行かなければならないのは、
「泳げないヒトが溺れているよう」と言われるくらい、実は痛々しい光景なのだ。

村で放し飼いにされている犬が、シファカを追いかけ、
逃げ遅れた赤ちゃんが被害に遭うケースも起きている。


動物輸出業者
カメレオン、ヤモリ、カエルが届けられ、
1匹ずつ白い布袋に入れて、航空貨物用に荷造りする。

「決められた数以上に輸出する方法もあるよ。係官にお金を払えば数も数えないからね」

主なバイヤーであるアメリカ人に、年間約500匹を輸出している。
「アメリカから日本にも送っているはずだ」


●解決手段は教育
数百年前には100年に1種の生物が滅んでいたスピードが、
今では年間4万種も絶滅していると見られている。

すべての生き物は地球に生まれた多様な生態系の中で、つながりを持ちながら依存しあって生きている。
森に頼らなくても済む自立した農業を、技術をもっている国が率先して指導することも急がなくてはならない。


藤原幸一さんのHP「NATURE'S PLANET MUSEUM」

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野口聡一『ワンダフル・プラネット!』(集英社インターナショナル)

2014-01-21 09:25:30 | 
『ワンダフル・プラネット!』(集英社インターナショナル)
野口聡一/ツィート&メッセージ

わたしもツイッタでフォローしている野口さん
宇宙から“いまの地球”の姿を写して、アップしてくれる数々の写真にはいつも驚いている。
そんな中からピックアップしたのがこの1冊。

宇宙がSF小説や、映画だけでなく、身近な存在に思えてくると同時に、
昔から言われている自然破壊がほんとうに猛スピードで大規模にわたって進行している様子も、
こうして1枚の写真で突きつけられると、
ほんとうにこの先大丈夫なんだろうか?という焦燥感を感じた。


【内容抜粋メモ】

2009年12月21日~2010年6月1日までの163日間、
国際宇宙ステーション(ISS)における宇宙生活の間に撮り続けた地球の姿。

国際宇宙ステーションは、地上400km上空を飛んでいる。
90分で地球を一周する早さだ。

今回の試みが新しかった点は、ツイッターという仕組みを介して、
地球の写真をリアルタイムで公開したことだ。



満月


毎日見ても、地球は新しい。
知らない景色をどんどん作り出し、僕に見せてくれる。
それは地球が“生きている”ということなんだ。


宇宙服を着て外へ出る。
そこには真っ暗な世界が広がっている。
感じたことのない静けさがある。

宇宙には空気がないし、寒い。
“生きていない世界”に僕はいるんだな、と思う。
五感が研ぎ澄まされて、僕は光を肌で感じ、音で寒さを感じた。



富士山


僕は間違いなく地球の一部だ。
地球から生みだされて、そこへ帰っていく。
あとかたもなく、地球に戻っていく存在だ。


●マダガスカルは燃えていた



この大規模な土壌流出は森林伐採が原因で進んだもので、
マダガスカルの自然や産業を脅かしている。


●アラル海



アラル海はかつて世界で4番目に大きな内陸湖だったが、
開発の結果、湖水が減少し、消滅の危機に直面している。

『砂上の船 水上の家 アラル海とツバルふたつの水物語』(ポプラ社)


 
キャット・アイランド@地中海/ドッグ・アイランド@南アフリカ



ゴールデン・ウィークの東京の夜


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『黒い福音~国際線スチュワーデス殺人事件~』

2014-01-19 23:55:55 | ドラマ
『黒い福音~国際線スチュワーデス殺人事件~』
出演:ビートたけし、瑛太、竹内結子、木村文乃、小池栄子、スティーブ・ワイリー、ニコラス・ペタス ほか

「あんたの神さまはどこにいるんだ?」


テレビ朝日開局55周年記念 松本清張二夜連続ドラマスペシャル 昭和の二大未解決事件。
土曜に放送された『三億円事件』に引き続き、第2夜目。
“1959年3月に起こった「BOACスチュワーデス殺人事件」をもとに、フィクションの形で推理を展開した長編小説。”とのこと(ウィキ

▼story
昭和34年杉並区の河川敷でスチュワーデス、セツコの死体が発見された。死因は腕で首を圧迫したこと。
定年間近な捜査一課の藤沢警部補は、偶然現場に通りかかり、美しく、穏やかな死に顔を見て驚愕し、
自らの最後の事件として必ず犯人を逮捕すると誓う。

藤沢は、野次馬の中にいたヤス子の様子を見逃さなかった。
若いエリート、市村は藤沢と組むよう言われる。
「捜査ってのは1分1秒を争うんだ!」

事件当夜、青いルノーが停まっていたことから、近くの教会につとめる若い牧師トルベックが容疑者として浮かび上がる。
セツコは以前、教会系列の幼稚園に勤めていて、そこには毎日トルベックも来ていた。2人は恋人同士か?
しかし、教会主任司祭ビリエは、トルベックの存在自体を否定する。。。



 
いきなり超プリティな柴さんがてけてけ走ってくるシーンからで飛び上がってしまった
主役ですか?! 事件を解決してくれるの???


"Give me chocolate"
"No chocolate"

 
黒髪に黒スーツを着ると若く見えるたけしさん。相変わらず渋くてカッコいいねえ!
ずぅーーっと咳をしているのが苦しそうだったけど、全力で走って追うシーンは可愛かったw
「ホシをあげないとデカってのは何の意味もねえんだヨ」

「アメリカさんの顔色をうかがってたら何にもできない」
「国というものは強くならなければならないな。でないと、また無念なことになりかねない」

『三億円事件』も戦後まもない日本とアメリカとの軋轢が描かれていたな。
「ララ物資」が関係していたのでは?という推理。
こんな重大な事件がいくつも権力によって揉み消されているとしたら、一体何を信じたらいいのやら・・・


「あんたの神さまは、今消えたよ」


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『禁じられた約束』(徳間書店)

2014-01-19 10:34:10 | 
『禁じられた約束』(徳間書店)
ロバート・ウェストール/作 野沢佳織/訳

「あの夢、最近は毎晩見るの。迷子になって、家から遠く離れたところにいて、
 誰一人探しに来てくれない夢・・・・。あなたは来てくれる?」
「うん、探しに行くよ」
「ありがとう」


大人と子どもの間で揺れ動く15歳のボブとヴァレリーの初々しい恋。
愛する人がこの世から亡くなってしまった後の気持ちのひだが痛々しいほどに書かれていて、
ウェストール作品としては異色という印象を受ける。

第二次大戦のリアルな描写は変わらず、まるで読者が当時のイギリスの小さな町で暮らしているかのような錯覚に陥る。
墓地を爆撃して、埋葬してある骨まで吹き飛ばすなんて狂気の沙汰だ。
まともに爆風を受けて、両耳から出血し、何日も聴こえなかったという少年の体験も生々しい。

そして、日本人としてはなかなか感覚的に分からない、イギリスの階級制度。
富裕層と労働者の区分、立場、組合との力関係。

父と息子の男同士の心の交流には、ちょっとした嫉妬すら抱く。

わずか15歳で死をつきつけられた少女の絶望と怒り。
産まれてからずっと外出もままならず、周囲の慰めのウソで育ち、歪んでしまった心。
鏡を通してしか姿を見れないという件は、冒頭に女性教師が話した詩が伏線として効いている。
恋人を死の世界へと導こうとする中盤から後半、有無を言わさぬ急展開で
一気に終盤へと読者を巻き込んでいく筆力は凄まじいものがある。

読後は、喪失感と同時に、陽射しの温かさ、変わらぬ日常にホッと安堵する余韻がいつまでも後を引く。

巻末の徳間書店の広告に「栄光への墜落」(仮題・05年夏刊行予定)とあるが、出版されなかったのだろうか?


▼あらすじ
第二次大戦の足音が響く中、ボブは同じクラスのヴァレリーと急速に惹かれあっていく。
幼い頃から体が弱い彼女のために、父モンクトン氏は、身分違いのボブを家族のように迎え入れ、
毎日のように2人で楽しい時を過ごすことになる。

戦争が次第に市民の生活を直接脅かす頃になると、ヴァレリーの病状は悪化し、
ボブの日常から記憶が薄れはじめた頃、儚い命が消えた。

恋人を失うという初めての体験に虚ろになっていたボブ。
ヴァレリーの両親は、傷心を癒すために、妻の実家へ帰ってしまう。
以前、ヴァレリーから預かっていた合鍵がベストのポケットからふと出てくる。これは彼女からの合図だ。
ボブは人目を避けて、彼女の家に通いはじめる。。。


【内容抜粋メモ】

ところが、この日を境に、僕はしばしば過去を振り返ることになる。
ヴァレリーと一緒に過ごしたその日の午後だけは、「今」に満足していたのだが・・・。p89


当時、子どもは叩き込まれていたのだ。教師、親、牧師・・・大人はいつだって正しい、と。
ほんとうはどんなに間違っていても。大人は神様。p93


ぼくは恐ろしい罪の意識に襲われた。いつだってそうだ。
大人に責められると、実際に悪いことをしていようがいまいが、やましい気持ちにさせられてしまう。p94


「所詮、立場が違えば友だちになんてなれないのさ。資本家と労働者ってわけだ」p98


ポーランドの地域ごとの産業について学び始めた。
けれど、実際にはもう、ポーランドという国は存在していなかった。p99


ナチスだが、人間にはちがいない。僕は突然悟った。人は簡単に消えてしまうものだと。
あんなにもあっさりと。それを止める法律などない。
そして、それは僕にも起こりうる。父さんと母さんにも。p115


「さよならのしるしに、額にキスするんだ。そうすれば、この子はもう亡くなったんだと、お前にもはっきり分かるから」
父さんは前かがみになると、お手本をしめした。いつも僕の先に立ってくれる・・・父さんはいい人だ。p140


誰かが死ぬと、人はその誰かを探しはじめる。それが自分にとって大切な人ならば。
ばかげて聞こえるかもしれないが、ほんとうのことだ。p145


幽霊は怖いものだなんて、デタラメもいいところだ。大切な誰かを亡くした人なら、幽霊を怖がったりはしない。
特別な人を亡くすと、むしろ幽霊が現れてくれたらと願うものだ。
お願いだから、幽霊でもいいから、もう一度会えますように、とりついてくれても構わないから・・・と。p148


今、彼女はなんの理由もなく奪い去られ、もう触れることはできない。まったく筋の通らない話だ。
そう思うと、この世のすべてがまやかしだと思えてきた。
どんなに必死で勉強しようと、どんな試験に受かろうと、将来どんなに成功して大金を稼ごうと、
どんな車や家を買おうと、意味がない。
そんなものはすべて、あっという間に取り上げられてしまう。理由さえ知らされずに・・・。p150


「あたしは、怒りのせいで死にかけたことがあるよ。おまえのおじいちゃんが亡くなった後にね。
 あの世の入口まで行って、戻ってきた。怒りを抱いても、時間を無駄にするだけだよ」
「でも、どうしたら怒りを忘れられるの?」
「ひとつだけ、飲み込めばいいんだよ。愛は墓よりも強い、ってね」p155


奇妙なことだが、人は生きていても、自分の魂を置き去りにしていくことがあるらしい・・・。p181


恋をしている人間は、今手にしているものだけでは足りず、もっともっと欲しくなるものだ。p185


闇を恐れる彼女の気持ちが感じとれた。
眠っている町の一軒一軒の家から立ちのぼる激しい怒りや悪夢を、恐れる気持ちが。
この世の汚らしいものすべてを嫌悪する気持ちが。
ベッドの足もとにくしゃくしゃに脱ぎ捨てられた衣類や、臭い靴下や、
眠れずにベッドに横たわったまま口ゲンカをしている何組もの夫婦。
人々がみな、養兎場のウサギのように狭いところに押し込められている、めちゃくちゃな世界。


「いいか、相手が必要としているものを与えるんだ。欲しがっているものじゃなく、な。
 欲しがっているものを与え始めると、相手はしまいにはきみの皮を剥いでブーツを作ろうとするぞ。
 そして、皮の質が悪いと文句を言うんだ」p237


背中に日があたり、掘り返した土のにおいが鼻をくすぐった。太陽と土には、不思議な力があった。
すごくしっかりと、そこにあるという感じがするから、頭で考えることなど、薄っぺらであやふやなものに思えてくるのだ。p238


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松本清張二夜連続ドラマスペシャル『三億円事件』

2014-01-18 23:55:55 | ドラマ
テレビ朝日開局55周年記念 松本清張二夜連続ドラマスペシャル『三億円事件』
原作:松本清張「小説3億円事件」(新潮文庫「水の肌」所収)
出演:田村正和、余貴美子、段田安則、北乃きい、板谷由夏、田中哲司、津川雅彦、光石研 ほか
語り:中谷美紀

これだけ騒がれた未解決事件に、松本清張が真正面から勝負し、大胆に推理をふくらませた小説をドラマ化。
田村さんがさすがの存在感。いるだけで画面の空気が変わる。
まだ戦争の影が濃い時代だったんだな。

▼story
昭和43年に起こった「三億円事件」の時効が7年後に成立した。
アメリカの保険会社がそのうちの2億円を支払った。民事訴訟の時効は12年あるため、
査定部長・武田秀哉(田村正和)は、2人の現地調査員・中岡(余貴美子)、高原(段田安則)とともに改めて事件を調査する。

当時、容疑者として報道され、自殺した浜野宅を訪れた武田は、姉の戸田悦子を見た瞬間「やったな」とつぶやく。
捜査線上に浮かび上がる暴走族仲間、元官僚の戸田重光が経営する警備会社、
日本警察の口裏合わせ、そして、浜野の自殺に使われた青酸カリの入手先は・・・?


武田があまりに鮮やかに推理するから、事件はスルスルと解決していく。
25年ぶりの母との再会シーンは泣ける。

 
哲さんは、戸田悦子の夫・雄一役。

 
「お前以外の女と夫婦になろうなんて思わない」ってグットくるセリフだね。





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『自給力でわかる日本の産業6 資源・エネルギーはどこからくるの?』(学研)

2014-01-18 14:19:06 | 
『自給力でわかる日本の産業6 資源・エネルギーはどこからくるの?』(学研)

この1冊の中に国内外の資源・エネルギー事情が簡潔にまとめてあって、全体をサックリ掴むにはちょうどよかった。
写真、グラフなどもポイントを押さえていて、分かりやすい。
毎日使っているプラスチック製品や、電気製品が何で作られ、何で動いているのか、
便利な生活の裏でどんな苦労、工夫があるのか、
そしてクリーンで安全な未来のエネルギーとはなにか?
新しい発見もあるし、いろいろ考えさせられた。



【内容抜粋メモ】

自給率(%)=国内生産量/国内消費量×100

************************************電気 自給率100%

●電気を作るおもな材料
石油、石炭、天然ガス、ウラン


電気の消費量のうち増加量が多いのは「家庭用電力」と「業務用電力」。
戦前は「水力発電」が中心。戦後安い原油が大量に輸入され、1960年以降は石油を使った「火力発電」が中心。


************************************石油 自給率0.3%

●「一次エネルギー」

自然からとりだしたものをそのままエネルギー源として使えるもの。
例:石油、石炭、天然ガス、ウラン、風力、水力、地熱。

一次エネルギーから作ったり、加工したエネルギーを「二次エネルギー」という。
例:電気、ガソリンなど。


石油の値段は世界の経済や力関係によって大きく上下する。

1985年頃から軽油の販売量が増えたのは、宅配便が始まり、日本のトラック台数が増えたため

 
日本は石油のほとんどを中東から輸入している。
今はアラスカにも大きな油田が見つかっている。

メタンハイドレート
日本の海底深いところにあると考えられているエネルギー資源。
燃やした時に出る汚染物質が少ない。


その国の人々の生活水準が高いほど、石油の消費量は多くなる。


原油が日本に届くまで
1.ドリルで穴を掘って石油を汲み上げる。
2.オイルタンカー(全長300m以上)で平均20日間かけて日本に運ぶ。

3.シーバースに横づけし、パイプライン(太いもので直径152cm)で送油する。
4.石油精製工場でガソリンや灯油、軽油、重油などに分離する。
5.小型のタンカーなどで各地に送る。


●オイルロード

マラッカ海峡は、狭く、水深が浅いため海難事故が多く、「魔の海峡」と恐れられているが、
ロンボク海峡は遠回りでコストがかさむため、マラッカ海峡を通る。


鹿児島市の喜入基地

輸入が途絶えた時のため、「国家備蓄」「民間備蓄」があり、現在の使用量の168日分が蓄えられている。


●石油化学製品ができるまで

1.石油精製工場でそれぞれの成分に蒸留する。
2.ナフサ分解工場で成分ごとに取り出される。


************************************石炭 自給率0.6%


日本はかつて石炭の自給率が高かったが、海外から安い石油が大量に入り、ほとんどの鉱山が閉山された。
日本で消費される石炭の半分以上は「火力発電」。その際、大量に石炭灰が出る(コンクリート、園芸用の土に利用
最大産出国は中国で全体のほぼ半分。最近の急激な経済成長から石炭の需要が増え、国内の生産では足りなくなっている。

●炭坑の町、福岡県筑豊地方
炭鉱は昭和25~35年頃もっとも活気があった。昔は人や馬が背負って運んだが、後にトロッコが用いられた。
福岡県田川市では、シンボルとして、石炭記念公園に2本の煙突を残している。→福岡県田川市石炭・歴史博物館


炭坑住宅。炭坑を中心としてひとつの大きな町があった。


************************************ウラン鉱石 自給率0%

ウランには、「ウラン238」と「ウラン235」がある。
「ウラン235」に中性子を当てると、莫大なエネルギーを出す。

 
オーストラリアのレンジャー鉱山。オーストラリアは埋蔵量第1位(約76t

日本は、カナダやオーストラリアからたくさんのウランを輸入している。
岡山県人形峠にかつてウラン鉱床があった。


************************************天然ガス 自給率4%

 
1位 新潟県 南長岡・片貝ガス田、東新潟油ガス田、岩船油ガス田など。
埋蔵量がもっとも多いのは南関東のガス田。
地下水も汲み上げるので地盤沈下が起こり、現在は東京では採取していない。

 
天然ガスはLNG(液化天然ガス)の形で輸入される。体積が約1/600になり一度に大量運べる。
ロシアからヨーロッパまではパイプラインで輸出している。LNGにするより費用が安い。


天然ガスが家に届くまで
1.ガス井でガスを採掘する。
2.分離過程で不純物を取り除き、LNGにする。
3.専用タンカーで運搬。
4.LNG貯蔵タンクに入れ、気化装置を通ってガスとなる。

天然ガスはCO2の排出量が少なく、硫黄酸化物や灰じんが出ないなどの利点がある。


************************************エネルギーの歴史


→家畜・帆船
→水車
→石炭
→蒸気機関(石炭の需要が急増)
→「内燃機関」(ガソリン)・水力発電による電力
→1950年頃、原子力発電
→多様なエネルギーの利用


●石油ができるまで

プランクトンや藻類が死んで海底にたまり岩となる→砂や泥が積もり圧力がかかる→地熱で分解される→ドーム状の地層にたまる。

●石炭ができるまで

木が倒れて水中につもる→砂や泥が積もり圧力がかかる→地熱で炭化する→炭化が進み石炭になる。


************************************水 自給率100%


家庭で利用する生活用水は、トイレ(約28%)、風呂(約24%)、炊事(約23%)、洗濯(約17%)など。


●水源
都市用水の75%は河川の水。25%は地下水。その他、湖沼など。

●ダムの役割
水を利用するための「利水ダム」と、洪水などを防ぐための「治水ダム」がある。
秋田県の玉川ダムは、多目的ダムとして最大規模。


水が家庭に届くまで
1.河川から取水上でとりこむ+ダム
2.浄水場でゴミを除く。
3.給水所から水を送る。

浄水場には、薬品を使って急速にろ過するところと、微生物を使ってゆっくりろ過するところ(約5%)がある。


海外産のミネラルウォーターは硬度が高く、ミネラル分を豊富に含む。


下水道のしくみ
1.トイレ、風呂などから生活排水が下水道に流れる。
2.地下深くを通る下水管からポンプで汲み上げ、水再生センターへ送られる。

3.沈砂池で大きなゴミを除き、反応槽の活性汚泥によりゴミ処理する。
4.消毒施設で塩素を入れて殺菌し川や海に流す

汚泥は焼却・高熱処理して埋め立て処分する。一部はセメント原料、ブロックの建築資材となる。


●世界の水事情


世界の水不足の危険度。濃い色ほど高い。

国際流域
川が複数の国をまたいでいる地域。世界に250以上あるといわれる。

●干上がるアラル海
取水と農業用水への利用で水位が激減し、湖の塩分濃度が上がって、たくさんの魚が死滅した

『砂上の船 水上の家 アラル海とツバルふたつの水物語』(ポプラ社)参照


バーチャルウォーター
農産物や家畜を育てるためには大量の水が必要。
日本は農産物や家畜を大量に輸入しているため、間接的に水を輸入していることになる。
日本のバーチャルウォーターの量は年々増加している。

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工事中

2014-01-18 14:19:05 | テレビ・動画配信
斜め前で毎日ガチャガチャと建てているマンション。
土日も年末年始も関係なく、朝から晩までデカいクレーン車を引き連れて、爆音をたててて凹む
足場を組んだ位置から考えると、ウチの日照権の半分は奪われるし
太陽を返してくださいな/涙

金曜はコンタクトを買いに行くついでに、駅前の美容院でカットしてきた。
いつも面白い女性美容師さんと、おかしな日本語について話してまた爆笑。
そのコの友だちが、第三者のほかに「第四者」と言ってて、「一体誰なんですかね?」とか、
映写機の絵文字をずっとビックリした顔文字として使っていたとかw


ゴーちゃん。GIRL'S TV 1月17日 OA
“開局55周年記念ドラマスペシャルと1月スタートの新ドラマを応援しよう!”
1月9日からスタートの「緊急取調室」に出演している天海祐希さん・田中哲司さんにインタビュー

哲さん(天海さんの呼び方を真似てみた)は、今回、準主役的な位置だから、TVの露出もたびたびあって2倍お得v
ドラマ収録時のエピソードを過去形で話してるってことは、もう全話撮り終えてるのかな?
自他ともに認める“せっかち”さで受け答えもチャキチャキな天海さんと、
静かな口調ながら絶妙にツッコむ哲さんはいいコンビ
ドラマ内では見れなそうな笑顔が弾けてたv
2人とも相手をたてつつ、笑いもちゃんととってて、頭の回転が早いんだな/驚


A:天海さんは、本当に目力が強くて、対峙する場面が多くて涙目になっちゃうんですね。
  最終的にコンタクト外しました。


Q:その他に困ったこと。
A:度を超したゲラ(笑い上戸)なんです。本当にそれで役者を辞めようと何度思ったことか。

 
心理テストでは、お互い欠点を補い合う頼りがいを感じているようv


●ムロさんキレまくり/爆@「ごちそうさん」
ムロさんが出てくるたびに笑えるw 昭和初期って実際、こーゆーやたらテンションの高い人いそうだし


「カレーの女神だ、奥!」


「なんだ猫娘、なにがしたいんだっ」爆



その他のトピックス。

図書館で借りたCDシリーズ。
自宅のカセットテープをデジタル化していく、ひとりリバイバルコーナー。

My Generation- The Very Best of the Who
フーの勢いがそのまま詰め込まれてる。♪Anyway, Anyhow, Anywhere はD.ボウイもカバーしてるし。


Everybody Else Is Doing It, So Why Can't We?/The Cranberries
一番聴きたかった♪Dreams が入ってる。♪Linger とかも好き。


The Very Best of Aretha Franklin, Vol. 1
♪Respect、♪Think ほかヒットナンバーはもちろん、♪Call Me とかも何十回も聴いた名曲。

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『TRICK 新作スペシャル3』

2014-01-18 14:12:33 | ドラマ
『TRICK 新作スペシャル3』
監督・堤幸彦
出演:仲間由紀恵、阿部寛、生瀬勝久、池田鉄洋、野際陽子、飯島直子、藤田朋子、国生さゆり、福士蒼汰、朝倉あき ほか

2014年1月11日公開の『トリック劇場版 ラストステージ』に合わせた完全撮り下ろしのスペシャルドラマ。

▼story
水神家の当主が亡くなり、3人の姉妹は早速遺言の開封を弁護士・佐伯に迫る。
だが、現金は1人当たり7万円しかなく、あとは時価数百億円する財宝のヒントが箱に入っているという。
ただし、その箱を開けようとした先祖は、みな行方不明になっているという呪いの箱。
「迷信など信じない!」と講演会で言い切っていた上田が呼ばれ、その謎を一緒に解いて欲しいと頼まれる。
財宝に目がくらんだ山田ももちろんついてくるw

使用人のチカコが箱を開けると、中には真っ白い紙が1枚あるだけ。箱は一度開けられた形跡があった。
その日から、次々と殺人事件が起こりはじめる。犯人は、次女・月子の見えない息子アツシか???



池から出た白い脚などなど、元ネタは完璧『犬神家の一族』w
自然豊富ないいロケ地で撮ったなあ!

国生さゆり、藤田朋子、飯島直子、3姉妹のぶっ飛び具合に注目
「いらっしゃあ~い」て挨拶や、欽ちゃん走りで去るなど、
相変わらず細かいギャグがたくさん仕掛けられてて、目が離せない。
鼻をつまんで話してて「黒柳徹子です。ザ・ベストテン!」て爆

三女の息子役には、“ずぶん”で人気沸騰中の福士蒼汰くんまで出てる/驚
「古いギャグやめなさい」って言われてた、アキラの振り付けの元ネタが分かりません

今回、上田はなにやら怪しいミサンガみたいなのを巻いて、おかしなことになってる。
山田「なにフンフンゆってるんですか?」w
ずっと上田にだけオレンジ色のライトが射しているのもパワーのおかげなのか?

山田の母・里見は、書道教室を全国にチェーン展開しようともくろむ。
子どもたちの書き初め文字もいつも可笑しいんだよねv

みんなで食べてるコンニャクを棒に刺したやつもデカすぎ!


さよなら! トリック祭り!!
ドラマ+劇場版が14年間も続いたってスゴイなあ! 上田×山田コンビが最後なんて寂しいかぎり。


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notes and movies(2002.1~ part1)

2014-01-17 11:15:31 | notes and movies
過去のノートにある映画感想メモシリーズ。
今回は黒のルーズリーフからご紹介。いきなりスカパラにどっぷりハマった。
きっかけは「HEY! HEY! HEY!」で♪美しく燃える森 を観て冷牟田さんに釘付けになってから

  

photo1:いきなりスカパラ登場! ♪美しく燃える森 の歌詞をメモ。
photo2-3:友だちと大阪行ったメモ。

昔のメモなので、不適切な表現、勘違い等はお詫び申し上げます/謝罪
なお、あらすじはなるべく省略しています。


『大地の子守歌』(1976)
監督:増村保造 出演:原田美枝子、田中絹代 ほか
図書館で美枝子さんのエッセイを読んで、そこに今作のロケ話があったことで観た。16歳!にしては成熟してる。
で、終始強烈なエネルギーを発する奇人?の役だけに、おっとりしたイメージが一変。
ずっと肩に力が入る、妙な後味は'70代のせい? 監督の演出のせい? 美枝子さん独特の雰囲気のせい?
今でも強烈に印象に残ってる出演ドラマは、やはり閉鎖的な島が舞台で、父(丹波鉄郎)の偏執的な愛で育ち、
ラストは男が自分の足の肉を食べてしまう、あのドラマの役にも通じる。

狂気が漂うウェットな役が多い。3ヶ月の撮影、八王子と四国のロケ、数々の賞に輝いたという。
島という特殊な環境と、昭和初期の苦難、同じ設定でもこれが昭和30~40年代に撮られていたら、
もう少しソフトに仕上がっていたかも?

「困ったら土につっぷしてみれば答えが返ってくる。山へ帰ってこい」と聞こえるばばの声。
でも考えたらこんなに人間不信にして、人生をより辛くするよう育てたのは、このおばあさんのせいじゃないか?
まあ元々気性の強さはあったろうけど。

小気味よく動いて、ずっと声は張りっぱ! 次にどう出るか予想のつかない奇行ぶり。
遍路が終わった後はどうするつもりなのか?フシギな映画だ・・・
唯一力の抜けた自然な演技を見せる田中さんはやはり違う。


『青春残酷物語』(1960)
監督:大島渚 出演:川津祐介、久我美子 ほか
なんか今回はみんな後味の悪いようなのばっかり たしかに残酷な青春だ。
民主主義で戦後、自由、豊かになっても迷える若者らのはしりか。
久我は40代?にしては全然変わらない美しさと威厳

若気の至りにしてはあまりにバカな感じ。
そんなにネガティブに考えずとも、フツーに学生するか、働いて恋愛すりゃいいのに、
ムリするから道を踏み外して悪い連中に絞られるのでは?
若いうちに安易な金で遊んじゃいけない。好き勝手やるのが青春じゃないでしょ。
ジミーディーンの反抗と違ってカッコ良くないんだな。暴力的な性描写が当時は斬新だったみたい。


『黄色いからす』(1957)
監督:五所平之助 出演:淡島千景、伊藤雄之助、田中絹代、久我美子 ほか
戦後の教育問題も変わったことを物語る1作。子どもの描く絵から児童心理分析をするあたりなんか、
ガンコ一徹オヤジ世代ではかなり意識改革しなければならなかったろう。
でも家事をしたり、話し合って決めたりと、このだんなは理解ある“進んだ夫”だ。
この伊藤氏は時々見かけるが、いかつい顔でインテリくさく、どこかおとぼけな、いい役者さんだなあ。
鎌倉、江ノ島の様子も今と随分違ってのどか!

作った粘土細工を褒めてもらいたかったのに「もっと算数とかやらなきゃダメだ」とか、
小さい食い違いで子どもの心は少しずつ傷つき、いじけてゆく。
それに気づいたのはいいけど、今となっては子どもの機嫌をうかがう単なる甘やかしになってしまった。
子どもの教育って難しい・・・親も子どもとともに学んで悩んでいくしかないんだ。

明治のチョコレートだの、サンドイッチでピクニックだの、オルゴール、パステルetc...
外国製品と文化が急速に入ってきてる1つ1つが面白い。
隣りのオバサンは戦争孤児を養女にしているらしいことも時代を反映している。


『続・拝啓天皇陛下様』(1964)
監督:野村芳太郎 出演:渥美清、久我美子、岩下志麻、藤山寛美、小沢昭一、佐田啓二 ほか
『男はつらいよ』の原型になったとはいえ、戦中・戦後の体験記としての記録映画的シリアスドラマでもある。
同じ呑気なキャラでも体一杯熱演する渥美さんの役者魂を感じる。

天皇が「人間宣言」したってゆーのにもビックリ。特殊な世界だったんだな。
物のない時代、競輪やパチンコが大流行したり、とにかく何も無い状態から這い上がったこのパワーはスゴイ
今から見ると本当にあったとは思えないくらい、第二次世界大戦後の朝鮮戦争とか、
今作は日本人から見たものだが逆から見たらもっと悲惨なものだったろう。


『新・平家物語』(1955)

監督:溝口健二 出演:市川雷蔵、久我美子、木暮実千代 ほか
動乱の時代、平清盛の若い頃のほんの一幕を描いている。
相変わらず人々は貧困にあえぎ藤原貴族の“朝廷”、白川上皇らの“院”、平家ら“武士”、
果ては坊さんまでが槍を持って勢力争いに余念がない。

グルーチョみたいな眉の市川、ほんの数シーンの久我の喋りやふるまいは現代劇とも変わらぬ個性。
小暮は胸出しルックで女の色香全開 こんな着物があったんだ。

「公家共よ踊りたきゃ踊れ。お前らに未来はないのだから。明日は俺たちのもの」
と言って終わる。これから面白くなりそーなのに・・・
父が最期に息子に託したのは、上皇とともに詠んだ歌の書かれた扇子。
「後は頼んだよ」みたいなことが書かれている。こういう教養が昔の人にはあったのね。


『長尾紳士録』(1947)

監督:小津安二郎 出演:飯田蝶子、青木放屁、河村黎吉、吉川満子、笠智衆 ほか
いーなーやっぱし・・・小津作品の滔々と流れる時間の世界。セリフや動きで笑わせるシーンも所々効いてて、
同じ人情ものでもお涙頂戴ではない。ココロの底にじーんとくる、このどこか切なくてあったかい静かな感動
戦中・戦後ものでもすさんでいない貧しさがある。

「海岸で貝拾っといで」と行った隙に猛スピードで走って逃げるが追いつかれちゃうシーンも可笑しいw

「もう情が移っちゃったんだよ。犬でいったら土佐犬だね。ちょっとブル入ってるけど」w

当時は戦争孤児も多かったのか。配給制とはいえ、子ども1人くらいはなんとかなる時代だったのか?
このかあちゃんの子どもらは成人したのか、“後家”っていうから戦死したのかも知れない。
2人並んでノミに肩を揺らす仕草も可笑しい。飯田の怒った顔は本当に鬼面のようだし


『秘密』(1999)
監督:滝田洋二郎 出演:広末涼子、小林薫 ほか
今頃観たちょっと前の話題作 ベッソンがコレを観て自作起用を決めたらしい。
“なり代わり”の典型パターンなんだが(しかも相変わらず2Hドラマほどの低予算な邦画)やっぱ引きこまれちゃう。
小林薫ファンだから?w 広末もイケてる。ラストがちょっと納得いかないゾ。

40代でも新婚ホヤホヤみたいな夫婦も珍しいが、娘の体を夫に捧げちゃう母の心理はどーなの
だんなに理性が残ってたからまだいーものの。
それにしても、こんな憑依ってあるのかな、世の中には・・・?


『TOUR! PUFFY! TOUR!』(1997)

♪セトリ:
とくするからだ、simple、渚にまつわるエトセトラ、長生きしてね、ウサギチャンネル、
ショッピング、パフィーのHey! Mountain、サーキットの娘、アジアの純真、これが私の生きる道、すばらしい日々

奥田民生のフシギで心地よい脱力感はPUFFYにもしっかり受け継がれてるw
2人がピッタリはまるのは天命か、はたまたプロデュースの腕か!?
Tシャツにジーンズ、ダラけた振り付けw、なにもかも、それまでのアイドルの伝統を打ち破って
♪アジアの純真 でいきなりブレイク、はたまたアジアでも大ブレイクしてしまった快挙。
それが井上陽水の作詞作曲と最近知って2度びっくり。

今作はタラタラとリハする2人のはじけぶりと、DJ風景、移動、各ステージでのパフォーマンス、
そして“地元産のコーナー in 広島”では御大?奥田も登場(あくまでさり気ない
楽屋では正座して反省会w 師弟関係なのか? うらやましくもある

聴けばけっこー昔懐かしい'60代テイスト。ビートルズ、ザ・フーを思いっきりパロった、ラトルズ的な曲が見つかるのもまた楽し。
ギターロック野郎の民生が、先人にならってガールズグループをプロデュースしたのもその辺の追従か?
いやー自曲も書きーの、平行してるんだから、桑田に負けないハイペースな実力。
実はそんなパフィーの2人に投影されてにじみ出る奥田の魅力と、彼女ら本来の個性のぶつかりどころもまた楽し


『八月のクリスマス』(1998)
監督:ホ・ジノ 出演:ハン・ソッキュ、シム・ウナ ほか
新作に並んだ時「きっと重いだろーなあ」とパスしてたけど、同僚のおススメで借りたらやっぱ重かった
でもベタベタした重さじゃなく、淡々としてジーンとして、こんな風に穏やかに自分の死を迎えられたら、とは思う。
けど死を見つめながら生きるって辛いだろう。

「記憶の中の写真みたいに愛も思い出になると思ってたけど、君は違った。
 想いを胸に旅立たせてくれたことに感謝したい」

人はそれぞれ生きる権利と死のスタイルも選択できる(不意でなければ
AはRに告げずに迷惑をかけまいとし、優しい思い出と、進行形のままいくことを選んだ。

余計な音楽を入れず、自然のままのシーンがリアルな効果を生み出す。
ド派手アクション系の香港映画と違った趣のある韓国作品もなかなかのもの。
この冒頭で監督に追悼が捧げられてるが、亡くなっているのだろうか?
「幽霊は怖くないのかも」という兵役時代のユーレイ話の件もイイ。


『宋家の三姉妹』(1997)
監督:メイベル・チャン 出演:マギー・チャン、ミシェール・ヨー、ヴィヴィアン・ウー ほか
歴史ものは背景を知らないとなかなか感情移入が難しい。

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