存在する音楽

ジャンルに関係なく良いと感じた曲は聴く
誰かの心に存在する音楽は
実際に音が鳴っていない時にも聴こえてくることがある

2013,9,3 元春レイディオショー

2013-09-03 21:18:35 | 佐野元春
火曜の夜11時は元春レイディオショー

みなさん寛いでますか?
元春レイディオショー
この番組は東京渋谷NHKのスタジオから届けています。
今夜の元春レイディオショー、音楽評論家の萩原健太さんをお迎えします。
今週のテーマはブルースロック
2週にわたって届けたいと思います。
今夜はその第1回目。60年代、70年代のブルース・ロックご機嫌な演奏をみなさんと楽しんでいきたいと思います。
DJ佐野元春。これからの1時間、みなさんと一緒にゆっくり楽しんで行きたいと思います。

1 All Your Love : John Mayall & The Bluesbreakers

M 音楽評論家の萩原健太さんをお迎えしております。テーマはブルース・ロック。
健太さんよろしくお願いします。2週にわたっての特集よろしくお願いします。
萩原H よろしくお願いします。お邪魔します。
M ブルースロック、名盤幾つもあります。イギリスのアーティスト、アメリカのアーティスト。僕たち60年代、70年代からブルースロックに触れている訳ですけれども。ちょっと番組でブルースロックというくくりで年代を追って体系的にちょっと聴いて見たいな。そういうとこで
萩原H もともとロックンロールというのはブルースをベースにして出来上がっている音楽というところもありますからね。もともとロックの中にブルースというのは入っているんですけどね。60年代に入ってまた、せっかくいろんな要素が入ってロックンロールというものに集約されてできたのに、ここから細分化が始まって、いずれ混乱した時代になったときに、そしたらもう一度ルーツを見直そうというね気運の中で生まれてきたのがこのブルースロック。という考え方で良いんじゃないかと思いますけれども。
M 今聴いたのが1966年のイギリスJohn Mayall。これはブルースロックの中ではとても重要なアーティストですよね。
H (ジョン・メイオール&)ザ・ブルースブレイカーズ・ウィズ・エリック・クラプトンというアルバムなんですけれども、クリームを結成する前のエリック・クラプトンのプレーということですね。イギリスは例えばローリングストーンズとかエリック・バーロンのアニマルズとかグルーヴが大好きな人たちがやっているね、イギリスの60年代の半ばよりちょっと前から出てきていたんですけれども、イギリスの方の人たちというのはやっぱり、アメリカの黒人音楽に憧れて音楽やっている人たちが多いんで、かなり憧れで突っ走っているところがあるんですよね。
M ああ
H だから今の「All Your Love」という曲はオーティス・ラッシュ(Otis Rush)というシカゴのブルースマンが58年にリリースした曲なんですけれども、ブルースの世界で結構アフロ・キューバンビートを取り入れるのがちょっと流行った時期が
M そうでした。
H マンボとかルンバとかああいうのを取り入れるのが流行った時期があって、そのころにできた曲なんだけれども、それをイギリス人のジョン・メイオール、エリック・クラプトンがカバーすると、どこか哀愁が加わってくるんですよね。その辺が新しいところだったのかなという感じだね。
M そのアフロ・キューバンビートという話で、この「All Your Love」ま、聴いてみると、ちょっとサンタナのヒット曲である「ブラック・マジック・ウーマン」。実を言うとこの「ブラック・マジック・ウーマン」これサンタナのオリジナルではないんですよね。
H はい。Fleetwood Mac。後のアダルト・コンテンポラリーって感じのグループになっちゃいますけれどもね。この前ですよね。グループロックをやっていた頃のPeter Greenというのが、まあパクッタというかね。
M まあ、歴史的に見ると、このPeter Greenの「ブラック・マジック・ウーマン」というのはこのジョン・メイオールの曲が一つのインスパイアの元になっている。こういう考えで良いのかな?
H 良いと思います。あと、近年ね、ボブ・ディランもこの曲に触発されている曲をやってますけどね。
M あ、そうですか
H はい。探してみて頂きたいと思います(笑)
M ここで60年代、米国のブルースロック。まあ英国でジョン・メイオールのいる。米国ではどんな人がいるかということで健太さんが選んでくれたのは先ずThe Paul Butterfield Blues Band
H はい。Paul Butterfieldは白人なんですけれど、もともとシカゴの黒人コミュニティの中で暮らしていたということもあって、だからイギリスのブルースロックというのは割と憧れの中で黒人音楽に近づきたいという形でやっている訳ですけれども、アメリカっていうのはその人種的に共存している世界ですから
M コミュニケの中に黒人がいる訳ですからね。
H  そう、まだまだ60年代は公民権運動が激しい頃で差別も激しかった。そんな中で白人が黒人の音楽をやるっていうことのリスクというのは、とても大きい状態ですよね。そんな中で敢えて白人なのに黒人のコミュニティに飛び込んで、そこでブルースという手段を選びとっているというのは、イギリスとちょっと違った現場感覚あるんですよね。
M そうかもしれませんよね。このThe Paul Butterfield Blues Bandの特徴的なのはバンドに二人ギターリストが居ますよね。
H 初期はそうでしたよね。エルヴィン・ビショップとマイク・ブルームフィールドとね。
M はい。
H マイク・ブルームフィールドというのも非常に重要な人で、シカゴで育ちで黒人のコミュニティの中で育った人なんだけれども、もう一人の仲間である、ニック・グレイヴナイツって人が居るんですよ。これも白人なんですけれども、彼ら作った曲でね「ボーン・イン・シカゴ」って曲があって。これがシカゴで白人だけれども、俺らもブルースをやるんだっていう、ある意味心意気みたいなものを歌い上げた曲になっていて、これがやっぱりアメリカの最初のブルースロックの傑作じゃないかなって僕は思っているんですけどね。
M そうです。はい。このバンドのサウンドの聴きどころ。まあギターのサウンドもそうですけれど、何と言ってもこのPaul Butterfieldのハーモニカ。ブルース・ハーモニカですよね。バンドの中にギターだけではなく、ブルースハープ(ハーモニカ)をサウンドの特徴としたバンドは他にもいくつかありますよね。Paul Butterfieldもう一つ、米国の60年代の音楽で選んで頂いたのはThe Electric Flag
H そうです。今名前の出たマイケル・ブルームフィールドという人が作ったグループなんですけど。これはね、Paul Butterfield の1965年の「Born In Chicago」を聴いてもらおうと思うんですけれど、The Electric Flagの1968年のナンバーで「キリング・フロア(Killing Floor)」という、もともとハウリン・ウルフというブルースを歌っている人のカバーなんですが、冒頭にね、ジョンソン大統領の有名な1965年の公民権を巡る投票法についての演説が入る。よく理想的な国造りのために投票権を人種によって遮られちゃいけないってことを述べている演説なんですけれども、そのね途中でぶった切るように音楽が突然始まるんですよ。それで、コミック・シーケンスなんかでもおなじみの、ラフトラックっていうんですか、笑い声みたいなものが入っていて、理想的な演説に、これは65年ですけれど、68年の録音ですから、この3年間、何が生まれたの?っていう気持ちがもしかしたら、このブルーム・フィールドにあったのかもしれないけれども
M なるほど。はい。
H まあある意味アメリカという国で同時進行的にその動きを体験して白人ならではのブルースなんではないかなって気がして
M 白人ならではのブルースには凄く着目したいところなんだけれども、やはり当時60年代白人ブルースバンド。その歌詞を見てみると、なかなかこう政治的な混とんとした心情。そうすると当時の聴き手、そしてブルース音楽の聴き手というのは都市部のリベラル層にアピールしていたのかなって僕は思うんですけれどもどうなんでしょうね?
H もちろんPaul Butterfieldとかマイケル・ブルームフィールドとか白人の聴衆にとってもアピールするというか、彼らも認めたアーティストだったんですけれど、やっぱりそういう社会性の中にいるんで、色々と考えていかなくちゃいけない音楽だってことは確かにあるですよね。だからどうしてもリベラルな層というのがサポートしていたってのはあるでしょうね。
M それでは60年代の米国のブルースロックから2曲を聴いてもらいたいと思います。
2 Born In Chicago : The Paul Butterfield Blues Band

3 Killing Floor : The Electric Flag  

さて元春レイディオショーでは毎月番組推薦盤3枚のCDをピックアップしています。
今月ピックアップしたアルバムは
Tedeschi Trucks Band: Made Up Mind

Booker T. Jones: Sound the Alarm

Van Dyke Parks: Songs Cycled
この3組のアルバムをピックアップしました。
どのレコードも心に響く良いソングライティングと素晴らしいサウンドがあります。
今夜の3PICKSは
テデスキ・トラックス・バンドのスタジオ最新盤「Made Up Mind」を取り上げたいと思います。
米国フロリダ州からのブルースロックバンドです。ギターリスト デレク・トラックスと歌手のスーザン・デテスキ、この夫婦が中心となったバンドです。結成は2010年。現在まで2枚のスタジオ盤を出しています。2011年に出したバンドにとっての最初のレコード「Revelator」は当時番組で3PICKS!でも取り上げました。このレコードが高く評価されてグラミー賞において最優秀ブルースアルバム賞を獲得しています。そのテデスキ・トラックス・バンドが新しいレコードを出しました。タイトルは「Made Up Mind」。レコーディングは自分たちの自宅に作ったスタジオで録音しています。このアルバムについてデレク・トラックスはこんな風に言っています。
この1年間バンドと一緒に世界ツアーに出ていた。メンバー全員お互いに理解をしながら自由に演奏できるようになった、とても自然に録音ができたということ。
それでは早速このアルバムから1曲聴いて見たいと思います。

4 Part of Me : Tedeschi Trucks Band

うん良いですね♪

H こりゃ堪らないですね。デレク・トラックス。この人は重要なオールマン・ブラザーズ・バンドという、あそのこオリジナルメンバーのブッチ・トラックスという人の甥っ子なんですよね。やっぱりこういう感覚というのを演奏するのは世襲制になってるのかな、もはや(笑)
M 僕が思うに本当に小さいころからね、こうしたブルースが身の回りにあって、物心ついたらもうギターを普通に弾いていたという感じではないかなって思いますね。
H でも幅広いじゃないですか、この人のギターのセンスというのは。勿論ベテランのブルース・ミュージシャンやロック・ミュージシャンとの共演も多いですけれど。マッコイ・タイナーとかね。ああゆう人と一緒にジャズやってたりとか、何かね、こう凄く新しい可能性を感じますよね。
M 世代的には30代ですか?
H そうですよね。(デレク・トラックス:1979年6月8日生まれ)。テデスキさん、スーザンの方が姉さん女房なんでね、それも良いんじゃないかなって思いますね。
M 今夜の元春レイディオショー、音楽評論家の萩原健太さんをお迎えしてブルースロックを続けます。

さて、番組前半では60年代の米国のブルースロックを聴いてみましたけれども、今度は同じ時代のUKですね、イギリスではどんなバンドがいたかっていうことなんですけれども。

H そうですね、何度も名前が出てきているFleetwood Macという
M 僕は好きですね。ガッツがありますね。
H このFleetwood Macのピーター・グリーン(Peter Green、1946年10月29日 - )という人がやっていた頃のブルース・ロックバンド時代だった頃のFleetwood Macというのは憧れですよ。ブルースに対する。
M あぁ!
H ブルース音楽全体に対する
M 米国のブルース音楽全体に対する憧れということですね
H そうです。だからこれは大瀧詠一さんなんかもよく仰ることなんだけれども。差異という言葉があって、差と異なる 或いは違うという。差なのか、違う異なるものなのか?
この言葉の違いがね、やっぱりアメリカのブルースロックとイギリスのブルースロックにもあるような気がするんですよ。
M なるほど
H だから、差だったら、追いかけて行けばこう詰まっていくじゃないですか
M ええ
H でしかも、もしかした追い越せるかもしれない
M ええ
H というのがあるんだけれども、違うっという風に認識しちゃうと、これはもう別のものとして自分のブルースというものを打ち立てるしかない。
M そうですね
H イギリスのね、この60年代の特にイギリスのブルースロックというのは、何か追いつけ追い越せみたいなね。とても若い突進力みたいなものがるような気がするんですよね。
M また、そのブルースロックということであれば、メインになってくるのはギターですよね。ギタープレイ、テクニックのみならず、イギリスのブルースマン達というのは、音そのものの響きに凄くこだわっていてね。ギターとかハープとかね。いかにそれをスモーキーにさせるか。とか、フレーズだけではなく、その雰囲気を表現するという点においてはUKのブルースマンの方が熱心だったのかもと
H マニアックだったのかも
M マニアックですね、はい。
H 今日聞いてもらうのは、「Shake Your Moneymaker」。まあちょっとお下劣な曲なんですけれども、あのーElmore Jamesというミシシッピー出身のスライドギターがとても得意なブルースマンの、彼の曲なんですが。実はこの曲を元にThe Paul Butterfield Blues Bandもこれをカバーしているんですよ。
M はあ
H それを聴いてドアーズが「ブレーク・オン・スルー」を作ったとか。非常に重要な曲なんですよ。このFleetwood Macが1968年のデビューアルバムでカバーしたんですけれども、この曲を聴いたダウンタウンブギウギバンドが「スモーキング・ブギ」という曲を
M 色々と世界的に繋がっているんですね
H そうなんです。
M そして英国ブルースロック60年代というと、このギターリストも重要ですよね。ジェフ・ベック。
H 第1期ジェフ・ベック・グループ。これも1968年の音なんですけれども、「TRUES」というアルバムに入っていました。「You Shook Me」というね。これはあのーマディ・ウォーターズ(Muddy Waters, 1915年4月4日 - 1983年4月30日)のヴァージョンかな。この曲をジェフ・ベックはさっきのFleetwood Macのピーター・グリーンとはちょっと違うんですけれど。オリジナルに敬意を表しながらも、物凄く換骨奪胎したギターを聴かせるんですよ。フィードバック、ファズ、ワウワウ、その辺を駆使して。物凄くアヴァンギャルドなところまで持って行ってしまうようなギターを聴かせる。これも良い意味イギリス人ならでわのある種の狼藉を働いているわけなんですけれども、敬意をもって狼藉を働くというね。その代表として、この時はヴォーカルはロッド・スチュワート。
M ベースはロン・ウッド。キーボードにニッキー・ホプキンス、
H ドラムはミック・ウォーラーかな?でオルガンがこれ入っているんですけれど、オルガンを弾いているのは、後のレッド・ツェッペリンを結成するジョン・ポール・ジョーンズ。
M ああー。ジェフ・ベック第1期ですよね。そしてまたギターリストはジェフ・ベックと並べて称される同時代のギターリストと言えばジミー・ペイジですよね。ジミー・ペイジはこの後ヤードバーズを結成していきますよね。これは結成した後ですか?
H これは後ですね。ですから、エリック・クラプトンが最初ヤードバースにいて、その後にジェフ・ベックがいて、それからジミー・ペイジが入ってきて、二人で一緒にいた時期があってジェフ・ベックが辞めてくという
Mなるほど。
H それで残されたジミー・ベイジが、そのバンドをもとにしてレッド・ツェッペリンを作るという、こういう流れになりますね。
M 60年代 米国ブルースロックから2曲続けます。

5 Shake Your Moneymaker : Fleetwood Mac
6 You Shook Me : Jeff Beck & Rod Stewart

Mジェフ・ベックのギターはアバンギャルドですね。
H アバンギャルドだね。ただ壊すだけじゃないっていうか、本当に自分の好きなギターリストなら完璧にコピーしてそっから始めるみたいなところがあるんですよね。だから、最近、レス・ポール(Les Paul)さんというギターリストが亡くなってしまいましたけれども、あの方のレパートリーを全部フルコピーしてライヴでやっていたりとか。あるいはジーン・ヴィンセント (Gene Vincent、1935年2月11日-1971年10月12日)のBLUE CAPSというバンドにいたクリフ・ギャラップ (Cliff Gallup)っていうギターリストの完コピーのアルバムを一枚出したりとか、そういうこともちゃんと出来る。上でのこれなんですよね。
M そうなんですよね。どんな技術にしても、そのアバンギャルドな表現をして優れた人というのは、基礎的なスケッチをして、そして凄くしっかりしたものを踏まえた上での新しい表現ということなんでしょうね。
H ただ壊すだけだったら、誰にでも出来はするんだけれども、それを続けるとなると、そういうところが重要になるっていうね。そうかもしんないですけどね。
M そうですね。今、ジェフ・ベックという素晴らしいギターリストの話をしましたけれども、同時代にジェフ・ベックと並んで、このギターリストも大きな影響力を持ちましたね。ジミー・ペイジ
H 我々の世代、佐野さんとか僕の世代だとエリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ジミー・ペイジ三大ギターリストって
M 言ってました。
H まあ、日本は三大何とかって好きですからね、
M ヘェッ
H 御三家みたいなものとか大好きだね。なんかね、ありましたよ趣味、皆で話しましょうよ、誰が好きだとかっていうの
M そうね、僕はやっぱりクラプトンですね。まあ聴いていて安心、気持ち好いってところですね。
H 僕はねジェフ・ベックが好きだったんですけれど、だからジミー・ペイジって言う人はプレーで言うとクラプトンのソロのスムーズなものに比べると、ジミー・ペイジはソロとかの面では少し落ちるという言われ方をしていることがあるんですけれど、その代りこの人のリフ作りの上手さっていうのはもう絶妙でしょ。
M あぁー。そうですね。
H 曲を言う時に、例えばレッド・ツェッペリンっていうグループの曲を表現する時に、歌から歌いださないでしょ皆、ギターのリフから歌いだすでしょ。「 」って歌のダ ダーン ダ ダーン ダー ダーダーそのフレーズをねデデンデデンってそのギターリフで曲を表すんですよね。
M そうですね。思わず、ギターを弾いている少年であれば思わずコピーをしてしまいたくなるようなリフに溢れていましたよね。ツェッペリンの曲はね。
H ブルース・マナーが大好きです。この人はスタジオミュージシャンとしてやってきた人なんでね幅広いんですけれども、ブルース・マナーの曲っていうのもレッド・ツェッペリンにも結構ありますよね。今の「You Shock Me」なんかもやってますし、その中でも最高峰と言われる「Since I've Been Loving You」。
M あぁ。まあ長い曲ですけれども、このギターソロというのは本当に引き込まれますよね。
H またそれを歌っているロバート・プラントっていう人が、このアメリカのルーツ・ミュージック大好きなんですよね。
M えぇ
H 近年はもうカントリーと言っても良いような。
M そうですね。もうアメリカに渡って演奏してますからね。
H  T・ボーン・バーネットとかね、アリソン・クラウス(Alison Krauss、1971年7月23日 - )のデュエットアルバムを作ったりとか、ロックンロールも大好きだし、ブルースも大好きだし。
M カントリーも好きだしね。
H とにかく合体していってたんだよね。良かったですよね、今思うと。
M 時代的に言うとレッド・ツェッペリンが出てきた60年代後半から70年代にかけて、これはレッド・ツェッペリンによってブルース・ロックのイメージは一新されましたね。
H そうですね、ある種の集大成みたいなところがありましたね、ブリティッシュ・ブルース・ロックのハード・ロックとしての魅力の頂点にツェッペリンが輝いていたという感じがしますよね。これは1970年の「レッド・ツェッペリンⅢ」というねアルバムに入っていた。
M そうですね。曲は「Since I've Been Loving You」。これは全体の構成とか歌詞がモビー・グレープの「Never」と類似しているという説が
H 根強いですよね。
M 根強いですよね。
H ただ、色んな音楽性を取り入れながら、ブルース・ロックを新しい地平にというかね、持って行った名演じゃないかって思うんですよね。
M 早速聴いてみたいと思います。これレコーディングマネージャー テリー・マニングが自分でレコーディングしていて、この曲の間奏はね、ロック史上最高のギターソロじゃないかって、こういう風に言っていますよね。聴いてみます。

7 Since I've Been Loving You : Led Zeppelin

M こうして、じっくりと聴くと、溜めですとか、その作り出す空気とか独特のものがありますね。
H いあや本当にね、二度とできない演奏なんだろうなって思うんですよね。確かにソロの途中でジミー・ペイジおかしくなるところあるじゃないですか。音程的にミストーンに近いような。
M はい
H でも、直すとかそういうこと無いだろうっていうね。これってすごいですよ。たぶん、本人たちも二度と出来ない。
M このレコードも時代的にいうと彼らの3枚目ですよね。ただ、ブルーノートを主体にしたブルース・ロックが最近は多いんですけれど、この後レッド・ツェッペリンは所謂トラッド・フォークの様相を。独特の、まさにレッド・ツェッペリンならではのね、トラッド・エレクトリック・ブルースのような世界を作り出して行きますよね。
H この曲とかをライヴでやるって、客はこればっかりを待っているっていうことになっちゃったみたいですよね。
M ああーそうですかー
H どこに行ってもこの曲の頭を聴くだけでもう うわぁー!ってなっちゃうのが、まあ逆に言えばそれは凄い当たり前のことなんだけれども、彼らはそこに耐えられなくなっちゃったみたいなところが彼らにあったみたいで、そこら逃れようっていう気持ちがまた新しいレッド・ツェッペリンを作っていったところはあると思うんですけれど、でも、こういう曲を、まあ確かにこれを何度もやるのが正しいことなのか、どうなのかっていうね。そういう緊張感っていうのが再現不可能なんだとしたら難しいですよね。
M そうですね、はい。70年代最初の一つのブルース・ロックに新しい解釈を加えたこのレッド・ツェッペリンなんですけれども。同時代で他に思い当たるバンドはあります?たとえば、マウンテンとか、70年代ぐらいになると、ブルース・ロックも色々と派生形が出てくるというか
H フリーというバンドがあってね。彼らもかなり重要なブルース・ロック・バンドの一つ
M ヒット曲もありましたよね。
H そうですね。「All Right Now」とかね。ローリング・ストーンズも含めてですけど、ハードロックというものが出来上がっていく過程でブルース・ロックの在り方というのが70年代、この時期に固まってきたという気がしますよね。
M なるほど
H だから、それまでは、どちらかと言うとR&B的なニュアンスでのロックというのが多かったのが、だんだんハード・ロックの方に寄っていちゃったというのが70年代に入ると
M そうですね。はい。僕が感じたのは音の大きさなんだけれども、例えばFleetwood Macだったら、例えばパブみたいな所でそこそこの音量でやっていたと思うんだけれども、70年代に入ってきて、このレッド・ツェッペリンぐらいになると、もう凄いラウドになっちゃって、どこからこう音が大きくなっていっちゃったのかなって
H そうですね。会場が大きくなってきたんで、音が大きいかもしれないですね。そうなると、Fleetwood Mac的なブルースロックだと無理みたいなところが。この人数無理みたいなところが実際あったかもしれないですね。
M そうですね。タイトなテンポだとスモール・プレイスでいいかもしれないけれど、凄く広い所だとレッド・ツェッペリンみたいな、雄大な向こうにホライズンが見えるような、こういうブルース・ロックのほうが・・・・ だからね、空間と演奏表現というのは、やっぱり密接に関係しているんじゃないかなと思うんですよね
H でね、今の話で思い出したんだけれども、J. ガイルズ・バンドっていうのがアメリカにいるでしょ?彼らは1970年にデビューしているんですけれど、69年にアトランティックと契約していて、だからウッドストックに出ないかという話があったんですって。でも、俺たちは嫌だと、そんなねでかい所で泥にまみれてやるような音楽じゃないと。俺たちはもっとコンパクトで
M ハウスでね
H そうハウスパーティーだって、それでブルースをやるんだって、ウッドストックの出演を断ったんですって。
M 残念ですねー(笑)
H (笑)でも、今の話に通じますよね。そういうのってね、考えてみると。自分たちの音楽はどういう場所で鳴らしたいのかっていうことでね。会場に左右されるじゃないかっていうコミュニケーションというのは、この範囲なんだっていうのは、J.ガイルズ・バンドは持っていたのかもしれないですね。
M そうですね。はい。僕はJ.ガイルズ・バンドっていうのはリアルタイムで聴いていましたね。ピーター・ウルフはなかなか知的な人で、ラジオのDJやってたんですよね?
H はい。結構早口のDJの様相をステージの上でもよく見せていましたけれども、この人たちは1981年の「センターフォールド」という曲がヒットしておなじみになるんですけど、その直前くらいに日本に来ているんですよね。厚生年金会館とか中野サンプラザとかそれぐらいのホールで何回かコンサートをやったんですけれども、どの回もね、1時間くらいなの、本編。1時間くらいで「じゃー」って引っ込むんですよ。その後、アンコールを7回か8回(笑)
M (笑)
H 正味2時間ちょいみたいな。それで、引っ込んだ時に今日はもう出てこないだろうって思って、アンコール・アンコールってやっていると出てきて、オールナイトでやるぞって感じで、そういうのも含めてクラブギグの美学というのをずっと貫こうとしてたのかなー
M そうでしょう。
H だから、ああいうビックヒットが出た後は、たぶん会場は広くなったんだと思うんですけれど、そこで、ピーター・ウルフはもういいって辞めちゃいましたからね。そういうバンドだったのかなーって思うんですけれどね。
M なるほど。
The J. Geils Band
1970年代の米国のブルース・ロック・バンド。
H そうですね。ファーストアルバムの半分くらいはカバーでやってましたけどね。ここにも素晴らしいブルース・ハープを吹くマジック・ディックという男が居て、
M はい。いましたね。
H それがもう格好良くて、そのブルース・ハープと、J. ガイルズのちょっと朴訥としたブルース・ギターとピーター・ウルフの何だろう?この凄く切迫した感じのヴォーカルの良い味を出している
M骨っぽい演奏でしたね。はい。では聴いてみたいと思います。

8 Cruisin' for a Love (Live) : The J. Geils Band

今夜の元春レイディオショー楽しんで貰えましたか?番組では専用のWEBサイトを用意しています。是非ご覧になって下さい、皆さんからの曲のリクエスト、番組へのメッセージを送ってください。待ってます。
来週の元春レイディオショー
音楽評論家の萩原健太さんをお迎えして第2回ブルース・ロック特集をお送りしたいと思います。


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