sports-freak.blog
観客席で思ったこと ~200文字限定のスポーツコラム~
 



オーストラリア 1対1 オマーン
(2007/7/8 NHK-BS1)

アジアカップ初参加のオーストラリアとオマーンの対戦。大柄でがっちりした体躯のオーストラリアは、これまでのアジアのチームからみると、やはり異質だった。

いままでも東西に広いアジアのサッカーは、東と西とでずいぶんと違う雰囲気を醸し出していたが、そこに新しい要素が加わり、さらにアジアのサッカーの幅が広がったことを感じた。

その新しい要素であるオーストラリアの初戦の出来には、正直なところ、かなりがっかりした。昨年のドイツW杯のときの重戦車のような攻撃を期待していたが、このオマーン戦では、大男たちがあまり動かずに、足元だけで細かなパスをまわすばかりで、攻撃的な姿勢がほとんど見られなかった。暑さのせいか。初戦ということで大事にしすぎたか。しかし、キューエルのように明らかにキレのない選手もいた。コンディショニングにも問題がありそうだった。ロスタイムに、強引な攻めで、同点に追いついたのが、この試合の唯一の収穫だった。このあと、盛り返すことができるのか、ちょっと心配である。

ロスタイムに同点に追いつかれたオマーンにとっては、なんとも残念な試合だった。しなやかなカラダ使いで、オーストラリアの大男の間をスイスイと走り抜け、何度も得点のチャンスをつくっていた。同点にされる前に追加点のチャンスが何度かあっただけに本当に悔やまれる。イエローカードをたくさんもらっていたのが不安材料だが、これからの試合が楽しみである。

アジアカップはAグループの2試合を終えた。2試合とも1対1の引分け。そして、雨の中の試合となった。登場した4チーム(タイ、イラク、オーストラリア、オマーン)は、好不調がありながらも、それぞれの特徴を出していたように思う。そして、そのことで、アジアのサッカーは、これまで以上に多彩になっているように感じた。

明日は、いよいよ日本の登場である。アジアの雄として、どこの国ともちがう日本オリジナルを見せてもらいたい。日本サッカーの存在によって、アジアのサッカーがさらに味わい深いものになってほしいと思う。

コメント ( 0 ) | Trackback (  )




タイ 1対1 イラク
(2007/7/8 NHK-BS1)

日本の3連覇がかかったサッカー・AFCアジアカップ2007が始まった。開幕戦は、開催国のひとつタイとイラクの対戦。雨の中の試合だった。

この試合では、地元のタイがどれだけチームをつくってきているか、最近のアジア大会やオリンピックで好成績を残しているイラクのチーム状態はどうか、に注目した。

前半5分にタイがPKを決めて先制した。このことで、イラクが攻撃モードになった。同点にしようとするイラクが完全に試合をコントロールし、何度もチャンスをつくる。個人技、組織力において、イラクのほうが完全に上回っているのは確かだ。

先制して、守備的になったタイは、ほとんど攻撃できず、偶発的なカウンターに期待するのみ。トレーニングを繰り返した組織的な攻撃を感じさせるプレーもあったが、ゴールは遠かった。タイの予選リーグの突破は、かなり難しいのではないか。

一方のイラクの同点にするまでの攻撃は、多彩で見事だった。タイの守備陣が人数は多いものの、棒立ち状態だったこともあり、バイタルエリアやサイドから自由に攻め込んでいた。何度かのチャンスをタイのGKの好守に阻まれたものの、前半32分、セットプレーから高さを活かしたヘディングシュートで同点にした。

その後のイラクに、追加点を奪おうとする気力が感じられなかったのが残念だったが、後半戦に向けて徐々にコンディションを上げていければ、おもしろい存在になるだろう。

負けなかったタイ、そこそこのパフォーマンスを確認できたイラク。開幕戦らしい引き分け試合は、双方にとって納得のいく結果だったかもしれない。しかし、土曜日の深夜にテレビ桟敷で見ていたぼくにとっては、特に後半は退屈きわまりないものだった。


コメント ( 0 ) | Trackback (  )




全英オープンテニス(=ウィンブルドンテニス)大会が終盤を迎えている。ここ何年か、特に理由もなく、熱心には見ていなかったのだが、今年は、杉山愛対シャラポワ戦やシャラポワ対V・ウィリアムス戦など何試合かをテレビで見て、その熱戦に、思わず画面に引き込まれた。

なかでも興味深かったのは、今年から導入された「プレイヤー・チャレンジ・システム」である。審判の判定に対して、選手が納得のいかない場合、ビデオ(コンピュタ・グラフィックス)での精密な判断を求めることができるルールだ。

昨年の全米オープンテニスで初めて導入され、その後、男子のデビスカップや今年の全豪オープンでも採用された。全英では、今年から、センターコートと第1コートの2つのコートでの試合に採用されている。すべての試合でおこなわれないのは、判定するための「ホーク・アイ・システム」が高価なこと、運用するために膨大な数のカメラが必要になること、それと判定映像を映す大型ビジョンが備わっていないことが考えられる。

ビデオで反則や得点の確認をするのは、アメリカンフットボールやラグビーなどで、すでに行なわれている。日本の国技、大相撲でも物言いがついたときには、ビデオを参考にしている。ちなみに、サッカーではビデオでの判定は採用されていないが、ちょうど一年前のワールドカップ決勝でのジダンの頭突きに対する裁定は、ビデオで確認した結果だったとぼくは推測している。

テニスの場合、他の競技と違って、ビデオ判定を「チャレンジ・システム」というかたちで、競技の一部に、エンターテインメントにしているところがおもしろい。

きわどい判定があったときに、選手がチャレンジするのかしないのか。チャレンジした場合には、場内のスクリーンやテレビに映る判定映像を、選手、審判、観客が一緒になって確認する。そして、結果を見ての「オオォーッ!」という声。判定が間違っていると、選手は笑顔を見せ、審判は苦笑いをする。純粋なテニス競技の流れからは、それてしまうという意見もあるようだが、回数も限られているため、ぼくはあまり気にならなかった。もともとテニスは休憩も多いし、ウィンブルドンでは雨で中断になることも多い。「チャレンジ・システム」にかかる時間など問題ではない。

なによりも、審判だけが陰に集まって、ビデオを確認し、判断するということではなくて、みんなで映像を確認するというのが凄い。なにしろ、審判は、観客の面前で「いまのあなたの判定は間違っていました」と宣告されるわけである。もちろん、審判が正しい場合もあるが。そして、それでも審判を続けなくてはならない。審判のプレッシャーは、これまで以上のものにちがいない。

ただ、ぼくがテレビで見た限りでは、ビデオで判定を覆されても、やや引きつった笑いをみせるものの、審判も「チャレンジ・システム」を楽しんでいるように見えた。そのあたりが、130年前に始まった伝統の大会を支える審判たちの強さであり、余裕なのだろう。

テニスにおける「プレイヤー・チャレンジ・システム」は、リアルとヴァーチャルの融合であり、アナログとデジタルの融合でもある。ウィンブルドンテニスにおいては、その融合は成功しているように思う。そして、それを支えているのは、選手と審判の信頼と友好の関係である。

コメント ( 1 ) | Trackback (  )




U-20日本代表 3-1 U-20スコットランド代表
(2007/7/3 フジTV)

これまでのワールドユース選手権が、「U-20ワールドカップ」という名前になった。昨年のクラブ選手権から、FIFAは主催する大会のすべてを「ワールドカップ」と呼ぶことにした。今年は、U-20に続いて、U-17ワールドカップ、女子ワールドカップ、ビーチサッカーワールドカップ、そしてクラブワールドカップが開かれる。

名前が新しくなった大会は、スタジアムの看板にも新顔が見られた。ワールドカップではなじみの薄かった「SONY」や「VISA」の名前があった。これは、今年からFIFAのマーケティング方針に変更があったためである。これまではワールドカップのスポンサーを決め、その企業に他のFIFA主催大会を売っていたり、おまけにつけていた。

しかし、今年からFIFAパートナーとして6社と契約した。コカ・コーラ、アディダス、エミレイツ航空、ヒュンダイ自動車、ソニー、そしてVISAである。ワールドカップという頂点の大会のスポンサーとしてではなく、FIFAと一緒にサッカーを盛り上げていくパートナーという位置づけである。パートナーという呼び方からも、オリンピックのマーケティングを参考にしているようだ。

この新しいパートナー契約のなかで、ひともんちゃくあったのがカード決済のカテゴリーだった。マスターカードとの継続交渉の前に、VISAと契約してしまったのだ。ふつうスポンサー契約の継続には、既存の企業を優先して交渉するというオプションがついている。しかし、VISAがフライング契約してしまったようだ。結局は、FIFAとマスターカードの間で和解が成立し、晴れて、VISAの看板がお目見えしたというわけだ。

ぼくにしてみれば、ワールドカップはマスターカード、オリンピックはVISAという思いが強いので、サイドライン沿いに映る「VISA」のロゴにはちょっと違和感があった。ただし、きっとすぐに慣れてしまうだろう。

そんな新しくなった舞台で、活躍したのが若き日本代表だった。ピッチをかける全員が精力的、積極的、そしてていねいにプレーをしていたように感じた。やや小柄な日本選手が、大柄なスコットランド選手を、個人で、組織で翻弄する光景をみるたびに拍手喝采である。なかでも左サイドの梅崎と安田のテクニック、スピード、そしてコンビネーションが光っていた。

そしてなんと言っても、日本チームのゴール後のパフォーマンスである。ゴールゲッターに駆け寄った仲間たちが、流行のビリーズブートキャンプをしていた。得点後に、輪になって踊る、こんなパフォーマンスをやるのは、アフリカのチームぐらいかと思っていたので、まさか、日本の若者たちが、と驚き、少し恥ずかしくもあった。

深夜のテレビで、予想外に新鮮なサッカーを楽しむことができた。はじまったばかりのU-20ワールドカップで、さらなる驚きに出会うことを期待したい。

コメント ( 0 ) | Trackback (  )



   次ページ »