2-2でドロー。
昇格戦線に生き残るためには、首位が相手であろうが関係なく勝利あるのみであった今節。
敗れて4連敗など論外であったなか、開始わずか5分で失点。熊本に勝利の要件を満たされた上に、素早い出足、鋭いパス回しに大苦戦を強いられ、反撃もおぼつかない有様。
あからさまに劣勢であったなか、さらに前半終了間際という痛すぎるタイミングで追加点を決められてしまい。
万事休す・・・敗戦を、今季終了を覚悟した者も少なくなかったと思います。
しかし。
あきらめなかったカターレ。
選手交代が功を奏し、だんだんと試合の流れを取り戻していった後半。
そんななかで、まずはPKで1点を返し、2試合続いた無得点から脱却。反撃の狼煙を上げると。
相手の隙を見逃さず、したたかに同点ゴールを奪うことに成功。試合を振り出しに戻し。絶対不利にも屈しない執念を見せました。
残念ながら逆転勝利にまでは至らず、ドロー決着。熊本戦連続勝ちなしを止めることは叶わず、17戦に伸びる結果に。
どうしても勝たねばならなかった試合を落としてしまったカターレ。
けれども。
もともと首の皮一枚程度のごくごく薄い可能性であったなか、さらにそれがプチプチと千切れる結果にはなりましたが。
それでも、まだ繋がっている。
完全に切れて終了の可能性も濃厚であったなか、挫けることのない、あきらめない執念で、それを繋ぎとめたのでした。
シーズン初の3連勝から一転しての3連敗。負けたら終わりというなかでの首位・熊本戦。
やるしかない。やり切るしかない中で迎えた今節。前節のスタメンから変更を加えて臨むこととなりました。
前節の初出場に続いて鹿山が右SBに、そして椎名がスタメン復帰。
途中出場が多い高橋をスタメン起用、吉平と2トップを組ませることに。
いちばんのトピックは、加入からこのかたずっとスタメン出場を続けていたマテウスが、ベンチスタートとなったことでしょうか。
コンディション不良などではなく、戦略としての判断であろうことは、はっきりしていました。
おそらく、お互いに我慢比べのような展開となることを予想しての判断であったかと。
カターレは2試合、熊本は3試合に渡って無得点が続いています。そんななかで、さらにその時間が続いたならば。
個の力で状況を打破する能力を持ち合わせているマテウスが、膠着状態を打ち破る活躍をする機会、それを途中出場というかたちで実現しようとしているのでは?と。
そう、お互いに勝つためには無得点の呪縛を打ち破らねばならない試合。そして、相手を封じてそれを継続させねばならない試合。
しかし。
無得点が続けば、さしもの熊本にも焦りが出て隙も生まれるーーーそんな目論見は、試合開始早々に打ち砕かれてしまうことに。
熊本が縦の攻撃からゴールライン付近まで攻め上がり、中央へマイナスのボール、それに対応した林堂がFW岡本 知剛と接触、もつれて転んでしまうことに。
ペナルティーエリア内の接触プレーではあったけれど、PKではない。当然だ、林堂が一方的に転ばされるファウルだったのだから。
ファウル・・・だろ?
なのに、笛は吹かれない。
なぜ?と・・・その、一瞬の間に。
MF上村 周平が思い切りよく蹴り込んだシュートがゴールサイドネットに突き刺さり、先制されてしまうことに。
おい、またかよ!!
思い出されるのが、ホーム無敗がストップしてしまった鳥取戦の敗戦。開始わずか2分でいきなり失点、そこから勢いが増した鳥取を逆転することが出来ずに敗れた試合。
他の試合でも痛すぎる展開であろうに、あろうことか絶対に負けてはならない試合で、いきなりのビハインド。
無得点の呪縛から幸先よく解き放たれた熊本。4試合ぶりの勝利への機運が、一気に高まることに。
元よりしっかりとパスを繋ぎながら主導権を握るチームスタイルである熊本ですが、そのパスのキレ、プレッシャーをかける圧力の冴え、あらゆるところで圧倒されてしまったのでした。
反撃のチャンスどころか、満足に攻め上がることすらままならない状況が続き。
半面、面白いようにサクサクと繋がる熊本の攻撃。
必死にボールを奪っても、すかさず取り返されてしまって反撃に転じられない。
どうしてもゴールを挙げて同点、逆転を目指さねばならなかったのに、ゴールどころかシュートさえ満足にうてない時間が続き。
42分にスルーパスを必死に追った安藤が中央へとマイナスのクロス、それを走り込んできた末木がシュートしたものの、GK正面。結局、前半唯一のチャンスもものにできず。
ならば、せめて1点差で折り返してーーーその、前半アディショナルタイム2分でした。
ミドルから放たれたシュートがディフェンスに当たってコースが変わると、それがクロスバーを直撃、真上に上がると、落ちてきたところを狙ってきていたのは、先制点を挙げた上村。
結果として、対応しようとした戸根に当たってオウンゴールという形で失点。
こんなのアリか?という・・・無情な追加点を喫してしまったのでした。
そもそもミドルからシュートされること自体が問題とはいえ、コースが変わること、真上に跳ね上がること、それがゴールインしてしまうこと・・・どれをとっても、アンラッキーでは片づけられないほど、不条理にすら感じる、痛恨の極みという失点の仕方。
栄光へと走るチームにあっては、説明のつかない力がはたらいたとしか思えないゴール、勝ち方というものがあったりします。
かつて、カターレ発足初年度の2008年、J昇格に向けてひた走っていた時期のこと。
ホーム・横河武蔵野FC戦。先制を許しながらも前半のうちに追いつくと。
後半、カターレの初代エースストライカー・長谷川 満がハットトリックという大爆発。それもすべてヘッドで決めてのものという、「長谷川 満ダイビング祭」。
頼もしいどころではない背番号9の躍動に、驚きを通り越して思わず笑ってしまったーーーそんなことがあったりしました。
閑話休題。
つまり・・・「持っている」というチームは、ときにわけのわからないかたちであってもゴールに、勝利につながる力を発揮したりする。
それは、熊本がその有資格チームだということか?
では、カターレは・・・「じゃないほう」のチームで、このままあえなく3試合連続無得点で4連敗を喫し、シーズンも終了してしまうというのか・・・。
ハーフタイムを挟み、後半。
そのタイミングで、マテウスと松岡が同時に交代出場となりました。
ほんとは、もっと違う、しかるべきタイミングでの出場を予定していたろうにな・・・そんな感傷がぬぐえないなかにあっても。
もちろん、切り札を切るからには、やってもらわなくては。なんとしても。
すると。
あまりに一方的であった前半とは異なり。前線で頑張るマテウスの存在がカターレにリズムをもたらし、徐々に自分たちのペースに。
スピード、ポジショニングの素晴らしさもありながら、競り合いになっても簡単に負けたりしないテクニック。前回対戦時には居なかった彼の存在に、もちろん対策は練っていたでしょうが、それでも手こずっていた感のある熊本。
ただ、インパクトを与えたのはマテウスひとりではなく。
むしろ、予想外という意味では、松岡の存在のほうが大きくさえありました。
ルーキーイヤーである彼にとって、6月の今治戦以来となる、今季2度目の出場。
負けてはならないのにビハインドという苦しい展開、そして強力な熊本が相手・・・にもかかわらず。プレッシャーで萎縮するどころか、堂々たるプレーぶり。
臆することなくガシガシとやり合い、それでいて簡単にはボールを失わない。その勝負根性、度胸たるや。
「松岡って、こんなに良い選手だったのか!?」と、目を丸くしたカターレファン・サポーターも多かったのではないでしょうか。かく言う自分もそのひとりですが。
前半のような一方的な展開ではないーーーその、手応え。
そして、次なる一手として大野を投入。ここまでチーム最多得点の彼の活躍にかけることに。
すると。投入からものの数分で。
ロングボールに反応した大野が、競り合いのなかでペナルティーエリア内で倒され、PK。
前半のあのときとは違う。もちろん演技などではなく、倒され、最後は蹴られたような恰好であれば、それはPKで疑いなし、と。
大事な大事な得点チャンス。プレッシャーが無いと言えばウソ、という場面だったでしょうが、それでもしっかりと冷静に蹴り込み、見事にゴール。1点を返し、連続無得点の状況を止めてみせたのでした。
くどいようだけれど、負けたら終わりの試合。ならばこそ、一気に同点、逆転へと繋げねば!
もちろん、熊本相手には簡単なことではないことは百も承知。
けれども、カターレにはそれをやらねば、やり遂げねばならない理由しかない。
すると。
それは、思いがけない意外なかたちでした。
79分、相手陣内深くでディフェンスからGKへバックパス、それを読んでいた大野が掻っ攫うと、しっかりGKの動きを把握しつつ慌てることなくシュート、それがゴールに吸い込まれ、同点!試合を振り出しに戻すことに成功しました。
試合後の大野のコメントによると。
「前半は足もとでつなごうとして流れが悪かったが、その中でも吉平選手や高橋選手が前線から相手を追い掛けてくれたぶん後半は熊本にも疲れがきたのではないか。そこで僕やマテウス選手、松岡選手が入って大きなサッカーをしたから効果的だったと思う」
とのこと。
事実だけ見れば、熊本側の不用意なミスが招いた失点、ということなのかもしれないけれど。
これは、偶然ではないし、単なるラッキーではない。布石があって、それが実を結んでのこと。
重い先制点からのビハインド状態、ままならない攻撃。
けれど、あきらめなかった。高橋にしろ、吉平にしろ、勝負を投げ出すことなく頑張りつづけた。
そして、千載一遇のチャンスをしっかりとモノにした。それが同点ゴール。
かつての長谷川から始まったカターレのエースの系譜を継ぐ、現在の背番号9・大野。その背中が、いつもよりも大きく見えました。
勝たねばならない試合、振り出しに戻したとはいえ、気を抜けばいつまたどん底に突き落とされるか。
実際、西部の体を張ったファインセーブがなければやられていたピンチも。
一方、こちらも一気に逆転といきたかったものの、なかなか思うようにはいかず。
激しい競り合いのからの接触、ファウルなどで時間が止まっていたぶんが少なくなかったことで、7分もあったアディショナルタイム。
けれど、長いとは思えませんでした。1分1秒が惜しい、勝つためには。
最後の最後まで目が離せない、息詰まる攻防。
しかし・・・無情の、笛。
タイムアップ。
どうしても勝ちたい、勝たねばならなかった試合でしたが・・・勝てませんでした。
連敗は3でストップしたものの、上位直接対決3連戦の初戦はドロー決着。
勝てなかったこと、無念です。
けれども。
可能性は、潰えなかった。消えずに残った。
負けたら終わりというプレッシャーのなか、今季の負けパターンにハマってしまったようなキツ過ぎる展開で。敗色が極めて濃厚であったなかで。
それでも、屈しなかった。
執念で、希望の灯を消さなかった。
もちろん、状況が良化したわけではなく、悪化しているとさえ言えましょう。
けれども、それさえも、わずかであろうが可能性を残しているからこそ言えることであって。
可能性そのものが無くなってしまっていたならば、厳しいと感じることさえできなかったところ。
残り3連勝が必須、たとえそれを成し遂げてさえも至らない可能性もありますが。
それでも。
負け試合を、負けなかった。
絶望に抗い、屈しなかった。
まだやれる。やらねばならない。なんとしても。
戦いは、続きます。