自民党と公明党はさかんに「衆参ねじれ」を
政治の停滞の元凶のように言い立てています。
そもそも二院制は「ねじれ」の発生も前提です。
だから片方の院に優越を与えているわけです。
衆参がねじれてなかった55年体制の頃は、
参議院は「カーボンコピー」と揶揄されて、
参議院不要論さえあったくらいです。
ねじれがそんな嫌なら、一院制にすべきです。
世界の過半数の国は、一院制をとっています。
自民党や公明党は、一院制論ではありません。
衆議院の事務次長を務めている向大野新治氏が、
出版した「政治の考え方」にはその点を指摘し、
興味深いので引用します(同書 275ページ)。
--------------------------------------------
もう一つの誤解は、「ねじれ」を常にネガティブにみる姿勢である。
そもそも論になるが、本来、衆議院と参議院とは別組織であり、異なった時期に、幾分違うシステムで選挙するのだから、その構成党派が異なって当然だろう。つまり、衆参の意思が異なることはある意味自然なのである。それに、これは国民の選択によるものでもある。筆者からすれば、1960年代から80年代末頃までの安定的な自民党政権時代には、衆参で自民党が過半数ないし多数を占めていて、衆参の意思がほとんど変わらなかったため、参議院をカーボンコピー(あるいは、ラバー・スタンプ)などと、マス・メディアや学者が揶揄していたのに、その舌の根も乾かないうちに、今度は両者が異なって大変だとうろたえるのもおかしいのではないかという気がする。もし、そうした場合に「政治の劣化」といった言葉を使うなら、まるでカーボン・コピー時代のほうがよく、「ねじれ」で物事が決まらなくなったことは、その劣化のような印象を与えてしまおう。こうしたことは、「政治の劣化」といった情緒的な言葉で片付けるべき問題ではなく、二院制に必然的に起因する構造的な問題と認識すべきであり、もし、それを嫌うなら、二院制を廃するしかあるまい。
--------------------------------------------
自民党の安倍総裁に「ねじれを悪と見なすなら
一院制が合理的である」という常識的な発想が
欠けているのが、とても不思議です。
ちょっと考えればすぐにわかることなのですが、
ちっとも考えていないようにお見受けします。
衆議院事務次長の著書を読んで頂きたいものです。
*ご参考:向大野新治「政治の考え方」きんざい、2012年
引用元 http://yamauchi-koichi.cocolog-nifty.com/blog/