「植草一秀の『知られざる真実』」
2020/03/19
2020東京五輪が呪われる理由
第2580号
ウェブで読む:https://foomii.com/00050/2020031917583164747
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WHOのテドロス事務局長は3月17日の会見で次のように述べた。
「検査、検査、検査」
「あらゆる疑わしい例をすべて検査すべきだ」
「目隠しされたままでは火事と戦えない」
検査の重要性を強調した。
なぜ検査が必要なのか。
理由は二つある。
第一は、軽症、無症状の感染者を明らかにして、感染拡大を阻止すること。
第二は、高齢者、基礎疾患を持つ人の感染を早期に発見し、重篤化を防ぐこ
と。
検査をしなければ、この二つのことがらは達成されない。
検査を拡大することの弊害として主張されているのは以下の三つ。
第一は、感染者が拡大して病床が塞がり、医療崩壊が生じること。
第二は、検査に際して感染が拡大する恐れがあること。
第三は、検査に誤差があり、感染しているのに陰性と判定される場合などがあ
ること。
望まれる対応は、弊害を除去して検査を拡充することだ。
重要なことが二つある。
第一は、感染者のすべてを入院させる措置を変えること。
第二は、検査に際して感染が生じないような対応策を講じること。
この二つはいずれも直ちに実行可能である。
安倍内閣は新型コロナウイルス感染を指定感染症にした。
このために、感染が確認されると有無を言わさず入院隔離措置が執られること
になる。
感染者の8割は無症状または軽症である。
この患者を入院させる必要はない。
軽症者、無症状者は自宅での隔離を行えばよいのである。
コロナウイルス感染症を指定感染症にするのに時間はかからなかった。
したがって、区分を変えることに困難は生じない。
第二に、検査に際しての感染予防策については、すでに諸外国が実証済みであ
る。
完全な防護措置を執って検査を行えば検査に際しての感染を防ぐことができ
る。
加藤勝信厚労相は感染者と非感染者が診療所の待合室で同室になることを避け
ると主張してきたが、現状で何が生じているのかに目を向けるべきだ。
感染の疑いがある患者が診療所をたらい回しにされている。
そのたびに、待合室で感染者と非感染者が同室になっている可能性が高いの
だ。
感染を疑う個人がドライブスルー方式の検査所で検査を受ければ、感染者と非
感染者が同室になることを避けられる。
各国が採用している方式を採用しない理由がない。
安倍内閣は検査能力を拡充していると主張するが、肝心の検査を拡充しない。
依然として安倍内閣は、日本に11万以上存在する診療機関の0.8%でしか
ない851の「帰国者・接触者外来」にしか検査実施の権限を付与していな
い。
検査数は1日平均で1000件でしかない。
日本の感染者数は少なく表示されているが、これは、大多数の感染者が検査を
受けられず、感染者数としてカウントされていないからである。
肺炎で死亡した人のなかに多数の感染者が含まれていると考えられる。
ただひたすら、公表される感染者数を少なく見せることだけに力が注がれてい
る。
WHOは感染拡大を阻止するためには徹底した検査が必要だと明言している。
加藤勝信厚労相は自分の利益しか考えない閣僚失格の人物だ。
安倍首相から、発表する感染者数の抑制を求められているのだろう。
歪んだ指示に服従して、国民の利益を完全に無視している。
安倍首相に取り入る心が優先し、検査妨害による確認感染者数抑制に励んでい
る。
残念極まりない閣僚である。
こんな人物が厚労相では国民は不幸だ。
安倍首相もまったく同じ。
自分の利益がすべてで、国民を犠牲にするような輩にこの国の運営を任せるわ
けにはいかない。
加藤厚労相は、
「診療所の待合室で感染者と非感染者が同室にならないために感染の疑いのあ
る人は帰国者・接触者外来で診察を受けろ」
と主張して、PCR検査を妨害してきた。
しかし、この問題を解決する方法がドライブスルー方式での検査拡充だ。
韓国が実施し、米国も実施する。
これを阻止する理由がない。
安倍内閣がPCR検査を阻止するのは、ただひたすら、感染者数を少なく見せ
るためだけなのだ。
専門家会議は検査利権に直接かかわる人々の集合体だ。
PCR検査を妨害することが自分たちの利益につながる人々の集まりなのだ。
NHKはニュース報道で検査数が少ないことを伝え、日本のやり方が間違って
いないとする専門家のコメントしか紹介しない。
これは完全な放送法違反だ。
放送法に次の規定がある。
第四条 放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」とい
う。)の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなけれ
ばならない。
四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明
らかにすること。
安倍内閣がPCR検査を拡大させないことについて賛成の御用学者が存在する
が、検査を拡充するべきだと主張するまっとうな専門家も多数存在する。
両者の見解を紹介するのが中立、公平な番組編集である。
現状のNHKは安倍内閣の広報機関に過ぎない。
WHOは徹底的な検査拡充を求めている。
技術的に検査を拡充することを妨げる要因は存在しない。
感染が確認された者は必ず入院させなければならないことにした指定感染症へ
の指定も、検査を拡大させないための方策のひとつであった疑いが濃厚だ。
専門家会議は2月24日に、「これからの1、2週間が、感染が拡大するか、
収束するかの瀬戸際だ」と述べたが、あっという間に2週間が過ぎた。
「瀬戸際の1、2週間」が単なる思いつきの言葉であったことは明白である。
米国ではCDCが8週間にわたる措置を求めた。
感染拡大に有効な影響を与えようとするなら、少なくとも8週間程度の対応が
必要であると考えられる。
しかも、検査を行わなければ実態を把握することすらできない。
日本では、多数の感染者が野放しにされて感染が急激に拡大していると考えら
れる。
肺炎で死亡した者の多くが実は感染者であることも疑われる。
検査を行わないから、何もかもが不確定になってしまう。
安倍首相は感染抑制策を講じて急激な感染拡大を阻止して、感染のピークを先
に延ばすとしているが、この方策と7月五輪開催強行とは矛盾する。
関係者の多くが混乱している。
早期に基本方針を定めるべきだ。
現実を無視して予定通り7月に五輪を開催することだけを繰り返すのは、「一
億総玉砕」を唱えるのと類似する。
麻生太郎氏が「呪われたオリンピック」と発言したが、そもそもフクシマ原発
事故を放置して五輪招致に突進したことが誤りなのだ。
2011年3月11日に日本政府は
「原子力緊急事態」
を宣言している。
そして、この
「原子力緊急事態宣言」
はいまなお解除されていない。
2013年9月7日、アルゼンチンのブレノスアイレスで開かれたIOC総会
で、安倍首相はこう述べた。
「フクシマについて、お案じの向きには、私から保証をいたします。状況は、
統御されています」
しかし、安倍首相は日本が原子力緊急事態宣言下に置かれており、原子力緊急
事態宣言が解除されていないという最重要の事実を述べなかった。
日本の法律では、一般公衆の被曝限度を年間1mSvとしている。
しかし、原子力緊急事態が宣言されている下で、例外的な措置として一般公衆
に対する年間20mSvの高線量被曝が放置されている。
五輪に向けて強引に避難指示が解除されたが、その基準は20mSvである。
20mSvの被曝は5年で累積被曝線量が100mSvに達する高線量である。
この被曝で100万人の人口の5000人が「がん」で殺される。
日本国民を大量虐殺に追い込みながら「復興五輪」などあり得ない。
この汚リンピックが呪われるのは極めて順当なのだ。
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